出合い 102
「それほんと~燐?」
学院の生徒の大半が利用する学食で燐は友人と食事を摂っていた。学院には貴族育ちの人達も多いが、学食の賑やかな雰囲気は人気で、多くの生徒が昼休みには集まる。
そこで私は一連の事を友人である楓に打ち明けた。燐も予想していたがもちろん笑われた。
「そもそも何で燐はバディ組まないのよ?燐は実力もあるしモテるからバディ組みたい人なんて大勢いるでしょうが。」
冗談か本気か、けらけらと笑いながら燐に問いかける少女は燐の幼馴染みである。
「別に良いじゃない。私は一人でも強くなれる。だから戦うときだって戦士の力なんて要らないわよ。」
友人は呆れた顔をした。
「燐は頑固だからな~、もうちょっとしおらしくしてれば可愛いのに。そんなんじゃ男できてもすぐに逃げられちゃうぞ。」
「余計なお世話よ」
そうやって燐は友人と笑い合う。
こんなことは結局笑い話なんだ。楓は私の実力を分かってくれている。学院長が何と言っても一人で戦って見せる。
「あ、そうそう、そう言えば知ってる?歴代最弱の落ちこぼれって」
楓がバディを組む話を聞いて思い出したかのように切り出す。
「歴代最弱の落ちこぼれ?何の話?」
「今年入学した1年生で、戦士希望なんだけどめちゃくちゃ弱いらしいの。授業で仮バディ組んで役に立たなすぎてパートナーが大怪我したんだって。それ以来誰もバディ組まないし友達もいないそうよ。」
「大怪我って?」
燐が少し興味を持ったように問い掛けると楓は嬉しそうに話し出す。
「魔獣に右腕を一本持っていかれたんですって。だからその子、入学してすぐに学校やめちゃったらしいよ。」
もっていかれた…その楓の濁した表現を想像した燐はあまりいい気分ではなかった。
へぇ、なんて曖昧な返事をして燐は残りのおかずを口に掻き込む。
可哀想に、大方行きたくもないのに親に無理矢理この学院に入学させられたんだろう。そういった生徒は毎年いる。今、どの国も戦力欲しさで躍起になっているから入学時の適正試験なんてものはあって無いようなものだろう。そういうことをすると次第に組織の質は落ちていくというのに。
最終的には馬鹿な大人が国を握ってちゃこの国も終わりだわ、と結論付けて燐は食べ終わった昼食の皿に箸を置く。
「その子、可愛そうね。」
燐はそれだけ言ってこの話を切り上げる。
「そろそろ講堂に行きましょう。休み時間ももう終わるわ。」
二人の少女は食器を返し、学食を出ていった。