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出合い 101

窓から降り注ぐ6月の暖かい朝日を受け、燐は目覚めた。

寝起き特有の気だるさを抱えながら身を起こし大きく伸びをしてベットから降りる。フローリングの床がほんの少しだけ冷たくて気持ちがいい。

冬場はこれが辛いのだが、燐はこの独特の冷たさが好きだった。

手早く着替えを済ませると一度深呼吸、朝食の準備をしてありきたりのトーストとハムエッグを口に入れる。

歯を磨き、顔を洗い、鏡の前で身だしなみを整え登校の支度をする。

さて、今日も一日が始まる。


燐の通う学院は通常の学校ではなく魔術師と戦士を育成するために立ち上げられた特殊な学校だ。

様々な国から己の力を磨くために生徒が集まってくる。燐は魔術師としての腕を磨くためこの学院に入学した。

魔術師とは魔術を駆使して魔の物と戦う者や日常において魔術を使って仕事を行うもの、様々な研究を行う者の事をいう。魔術師の力は一族の重ねた血の長さにより大きくなるが、家系七代目の燐の血は特別濃いわけでは無い。

しかし、祖母と燐自信が天才であるためその魔力は膨大で現在2年生だがその実力は群を抜いている。同学年では敵なし、学院全体でも魔術師の技量では15代の血を重ねる学院最強の生徒会長と並ぶと称されている。加えてその容姿も相まって学院内でのファンは多い。

そんな燐は現在、学院生活の上で重大な問題を抱えていた。

「ですから学院長、私は一人でも十分です。必ず試験は合格して見せます。戦士の力など必要ありません。」

シックな装飾に包まれた部屋の中で、学長室で燐は訴える。

今現在、燐は学院を取りまとめる学院長とあることで口論になっていた。

「いけません。燐さん、貴女の魔術の技量は知っていますが、それは授業での成績が良いというだけの話です。実戦では戦士の力なしでは魔術師はろくに詠唱も出来無いのですよ。分かっているのですか?今のままでは貴女がなんと言っても昇級試験は受けさせません。」

そう、私が抱えている問題というのは昇級試験の事である。

この学校では2年生から年4回行われる実践形式の戦闘試験がある。魔術師と戦士が協力して学院の用意した魔獣を倒すというものだ。魔獣と戦う魔術師は基本的に戦士とバディを組んで戦いに臨む。

戦士とは肉体を鍛え上げ、洗練された武術で戦う者をいう。魔術師の使う魔術は強力だが、発動には魔力を練って詠唱するだけの時間が必要だ。詠唱の長さによって威力は増減するため魔物を倒すほどの魔術を発動させるためには弱い魔物ならものの数秒だが、大型の危険種は分単位の時間が必要となる。だから戦士がその間戦い、時間を稼ぐ必要があるのだ。

「私は今まで一人で戦ってきたのです。これからも一人で戦えます。」

私は絶対に他人力など借りなくても戦える。そう訴える。そもそも最後に敵を倒すのは魔術師の仕事で戦士は所詮時間稼ぎにしかならない存在だ。だったら自分が一人で戦えるように強くなった方が効率的だ。燐は幼い頃からそうやって思って生きてきた。

学院長は呆れたようにため息を漏らした。

腕を組みうつむいた格好をとり学院長の金の長い髪が耳元から垂れる。

すぐに学院長は決断を下したようで髪をかきあげながら言い放った。

「何と言ってもいけません。試験は今月の中旬です。それまでにパートナーを見つけてバディを組みなさい。そうでなければこちらが勝手に戦士を選び、強制的にバディを組ませます。」

学院長は私の力を認めていない、だからそんなことを言えるのだ。燐は自分が戦えるということを何度も訴えたが、結局私の話は聞いてもらえなかった。

戦いにおいて魔術師は戦士とバディを組むのが一番効率が良いのは分かっている。

だが、私は父親が死んだときに一人でも強くなると決めた。絶対に強くなる。他の誰かの力なんて必要ない。

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