暗室 000
暗い部屋の中、俺は目を覚ました。
まるで世界が終わってしまっているかの様にそこは暗く、不気味な空気が漂っている。その不気味な空気は恐らく雰囲気的なものだけではないだろう。
気化した薬品や血液の臭いが鼻の奥を刺激する。刺激臭か腐卵臭か、その場で何が行われてきたのかを常人が理解するには少し現実離れしすぎた空気だ。
痛い。
自分の四肢に走る痛みを感じる。急激に自分が意識の海底から浮かび上がってくる錯覚、目覚めたばかりだというのに既に景色は色濃く目に入る。
全身にはしる痛みは手足がそこに在るのにさっきまで千切れていたかのような…いや、思い出した、事実千切れていたのだ。
「おい、目を覚ましたぞ。」
数多くの機材が並ぶ病室かも実験室かもわからない部屋で気付くと俺の回りには4人の男が立っていた。
「たった48時間でもとに戻ったかすごいな。」
「ああ、すぐに次の実験を始めよう。」
そう言う男の手には黒光りする金属製のハンマーがひとつ。
この繰り返される実験の中で俺は泣くことも叫ぶことも忘れた。
あぁ、ノコギリの次はハンマーか…きっとまた痛いんだろうな。
そう思い目を閉じたと同時に私の頭に激痛が走りぐちゃりと生卵が勢い良く割れるような、鈍い音が響いた。