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自由の翼を君に捧ぐ  作者: フランボワーズ
出逢い編
7/17

第六話 続・「奇跡の間」にて

更新が途絶えて申し訳ありませんでした…。

なるべく多く更新したいのですが、今生活がちょっと忙しくて更新数少なくなると思います。


ごめんなさい……。

「奇跡の間」から下を見おろして、スズランは呟く。

「どうして、わたしを守ろうとするの」

(わからない。あの、茶髪の人――名前、知らないや。確かみんな領主さまって呼んでたような……あの人の真意が汲めない……)

この街の人々のお人好しすぎるところに呆れていた。拾ったばかりのやからを守るためにこんなことをする理由がわからなかった。


「スズランちゃん、危ないからこちらへいらっしゃい」

サーシャの声がする。

「見えてるとこは危ないわよん?」

マーシャも言う。

言うだけで、手をだしてはこない。

今二人はお互いに向き合って膝をついて座り、手を合わせて祈っている。本来なら掴んででも引き寄せたいはずだがそうできないのだろう。

困らせる訳にもいかないから、スズランは大人しく二人の言うとおり窓辺から離れた。


「どうして祈っているの?防御の魔法に祈りはいらないのに」

せっかく誰かが側にいるのだから話がしたくなり、スズランは勇気をだしてマーシャの近くに座りこむと、ぽそぽそと訊ねる。

「ふふふ、見てれば分かるよん?」

意味ありげに言うマーシャ。

(そういえば、お祈りの言葉はいらないのかな。余計なことを喋っていいものなのかしら)

失敗するのも恐いので、スズランは黙りこんだ。


すると。


サーシャとマーシャの耳が、ぼんやりしたかと思うと、急激に形を変えはじめた。

「……ッ?!」

みるみるうちにその耳は伸び、先端部がぴんと尖る。

驚いて後ずさるスズランを横目に、二人は立ち上がり、くすくすと笑った。


「さて、アタシたちはなんでしょう?」

サーシャの悪戯いたずらっぽい笑みと共に飛んでくる質問。スズランはおそるおそる口を開くと

「………〈エルフ〉、なの?」

と訊いた。

「ぴんぽーん!!大正解だよん!!」

「私たちは精霊に祈ることによって結界を張ることができるの」

「マーシャたちにしかできないんだよん。他の〈エルフ〉たちには無理なのん」

自慢気に二人が答える。

「驚くことはないわよ、スズランちゃん。貴女だって可愛らしい猫系ちゃんじゃない」

「だからマーシャたちは自信を持って、自由に暮らせるって言ったのよん?」

「アタシたちも苦しい過去を背負ってここへ来たの。でも、この街なら心配しなくていいのよ」

窓際に駆け寄るマーシャを見ながら、サーシャが言った。

「ちゃんと、できてる?」

「うん、もうこっちに来ても平気だよ~ん」

「ちょうど始まるようね。アタシ、皆が戦うところ見るの初めてだわ」

サーシャはわくわくしている面持ちで窓に近づくが、ふと振り返るとマーシャを肘で軽くつついた。マーシャは頷くと、唖然として立ち上がることを忘れたスズランに向かって二人で手を伸ばす。

「見なくて、いいの?」

「さっきまでずっと見たがってたのにん?」

 

差し出された二つの手のひら。暖かい笑顔。

ちょっと躊躇ためらった後、スズランは二人の手をとった。


***


「そろそろ潮時のようなので始めましょうかね」

ジャスティアはそう言うと、持っていた分厚い本を目の前に掲げて小さく「点火ファイア」と囁いた。

すると、屋敷の回りを囲むようにして設置された松明に、一斉に火がついた。

暗がりに潜み、奇襲をかけるつもりだった魔獣どもは一気に明るくなったことに驚き狼狽うろたえた。

その様子を見てジャスティアが冷たい笑みを浮かべる。

松明の灯りに照らされたその笑みは一見穏やかであるように見えたが、触れば凍りつきそうなほどの冷たさも持っていた。


「皆さん、早めに片付けてしまいましょう!!」


その言葉が届かないうちに、四方で戦闘が始まった。



「……二人は一体何者なの?」

いぶかしげにスズランは訊ねる。

サーシャは困ったような笑みを浮かべ、マーシャは驚いてみせた。

「あら、見たまんまよ?」

「エルフの姉妹で、洋服を作って売ることで生計をたててるわーん」

「でも、普通お洋服屋さんのバックからは短剣は出てこないと思うんだけど…」


ああそのことか、と二人は頷いた。


「……この街にいる者たちは、何かしら悲しい過去を持ってたりするのん」

「事の大きさは個人によるけどね。私たちの場合はこの武器ってところかしら」


昔から紛争が絶えない村の近くに家族で住んでて。

いつ誰が襲ってくるかわからない状況で過ごしていたから、戦えるものを持ってないと不安で眠れないの。


「まぁ、マーシャたちには何も起こらなかったんだけどねーん!!」

「ふふふ、一時期は武器商人まがいのこともしてたから、結構詳しいわよ」

「そう、なんだ…」


安堵するような、心配するような溜め息をつくスズランの横で、姉妹は嬉々として戦いの様子を眺めるのであった。

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