ある日の朝早く
初めまして、フランボワーズと申します。
初めての投稿かつ初めての作品です!!
ぐちゃぐちゃとした文になってしまったり、無駄な描写が多くなったりと問題続きのこの作品を皆様の前に出すことに非常に怯え、また興奮しております。
どうかこの作品を好いてくださる方が一人でも多くなりますよう、精一杯書かせて頂きます!!
感想を下されば非常にありがたいです。
改善点の指摘もびしばしお願いします!!
それでは、フランワールドを、是非最後までお楽しみください♪
ー 古来よりこの世界には、様々な種の生物が共存してきた。
エルフ、妖精、獣人、吸血鬼に魔獣、ドラゴン、ゴーストなど多岐にわたる者たちが存在し、互いに戦い和解し、傷つき慰めあいながら暮らしてきた。
互いの住まう距離が遠くなり、種族ごとに分かれるようになっても、その存在を忘れたことはなかった。
これは、その世界の中で起きた、小さく哀れで、とても愛しい物語。
種族を越えた心の交流を記すものである。
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(ここにも、また秋が訪れた。)
小春日和の日差しの中、市がたって賑わう街を一人の青年が進んでいく。
のんびりとしたその足取りは、若いながらも彼の落ち着いた性格をあらわしているようでもあった。決して美男子ではないが、柔らかな印象を与えるブラウンの髪の毛は少し癖っ毛で、伸びているのを後ろでひとつに束ねていた。同じ色の瞳は興味津々といった様子で辺りを眺めることに夢中で、それが彼を年相応に見せるのであった。おろしたてだと思われる洋服は、秋の陽光に上品な絹のようにきらめいていた。
彼の者の名は、ジャスティア・トラスヴェール。
この街を含む辺り一帯の、領主である。
「領主さまーっ」
「ごきげんよう」
「そのお洋服、素敵ですよ」
「なにか召し上がって行かれませんか?」
「おっ、領主さま、いい魚がありますよ!!」
街娘たちに魚屋のおじさんを筆頭に、道行く人々が口々にジャスティアに呼びかけると、彼は笑顔で応えた。
「皆、いい市日和ですね!!今日の調子も良さそうでよかったです」
「ええ、今日はとてもいい日だわ。こんな日にはなにか素敵な出会いがありそうね」
そう答えたのはマダム・エアリス。この街一番のパン屋の女将さんで、皆の母親のような存在である。彼女の言葉を信じない者はいない。
恰幅のいい体を揺らしながらマダム・エアリスはあたりを見回しながらこう言った。
「そういえば、あんた、領主さまにあげたいものがあるんじゃないのかい?」
そう言われてマダム・エアリスの後ろからおずおずと顔を覗かせたのは、彼女の愛娘のルル・エアリスだった。
7歳程のルルはまだ人見知りの抜けない、可愛らしいはにかみを見せながらジャスティアの目の前におずおずと進みでて、
「これ、あげます」
と言って、一鉢の鈴蘭を差し出した。
ジャスティアは目を丸くして鉢を受け取った。そして、心の底から嬉しそうな笑顔でルルに感謝を告げた。
その途端にルルはぱっとマダム・エアリスの後ろに隠れてしまい、ジャスティアはぽかんとしたまま取り残されてしまった。くすくすという笑い声が次第に人垣から沸き上がり、ついにはジャスティア自身までが笑いだしてしまう始末である。
皆がほのぼのとした空気に包まれたとき、近衛兵のような制服を着た、ジャスティアよりはいくらか幼そうな青年が走ってきた。この地方には珍しい黒い髪の持ち主である。
「領主さまっ!!」
「どうしたんだ、ハルト。そんなに急いで」
「お、女の子が」
息を切らせながらハルトが言う。
「女の子が一人、山からの門のところに倒れています!」
その言葉を聞いた途端、ジャスティアはさっと真顔になった。
「…山からの?」
「見たことのない子供です。迷子でしょうか」
「…かも、しれないな…」
この街は目前に海、背後に山を従えた土地にあり、山には危険も多いことから門を作って少しではあるが警備をしている。
その門前で倒れている子供となると、山をさ迷う物の怪か人さらいの被害者である迷子というのが非常に多いのである。
「とにかく、見に行ってみよう。安全を確認しなくてはならない」
「はいっ!!」
そう言うとジャスティアとハルトは山の門に向かって走り出した。
「…女の子ですって。心配だわ、もしもジャスティアさまになにかあったら嫌…」
黄緑のロングスカートを身にまとった街娘が、二人の走り去った方向を見つめてため息をついた。
「そんなこと言うんじゃないよ、ノエル。こんないい日にそんなことが起こるわけないじゃないの」
マダム・エアリスが街娘――ノエル・アーシュをたしなめる。ノエルは肩をすくめて言った。
「だって、マダム、私が心配してるのは物の怪のことだけじゃなくて…もしその子が人間なら、私の恋敵になりうる可能性だってあるのよ?そんな状態で、大切なお方を心配せずにはいられないじゃない!」
ノエルの気持ちは街中の皆が知っている。ジャスティア自身さえ気づいているくらいだ。だが彼女は気づかれていることを知らずに熱心にアピールし続けている。
可哀想なノエル。彼の者は愛など知らないというのに…。
全てを知るマダム・エアリスはため息をついて「乙女は複雑ね。好きにおし」と言った。
「それにしてもあの人、ちゃんと鉢植えを持ったまま走って行ったわね…」
ノエルの友人、ミカエラが囁くと、
「しかも速い。いやぁ、若いなぁ~」
魚屋の亭主、フレッドが感心したように呟く。
フレッドの綺麗に禿げ上がった頭と、目尻に刻まれた人のいい笑い皺を見て、みんなはまた、笑い合うのであった。