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神隠し  作者: 星群彩佳
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消えた絆・よみがえった縁

アタシの実家は昔ながらの和菓子屋だった。


店が始まった頃から、お饅頭を中心にアメや金平糖など、素朴なお菓子作りを職業として、代々創立者の血縁者が店を継いでいた。


すでに400年以上の歴史を持つアタシの家は、かなり裕福で、店の数も数十店舗にも及ぶ。


アタシ自身、本家の血筋で、跡取りという立場だった。


…だから、知ることができた。


本家の家の蔵にあった、創立者の日記に目を通すことが。


かつて創立者は別の土地から訪れた。


しかし身内に大きな不幸が起こり、財産を持ってこの土地へとやって来た。


そして身内の魂を慰める為に、亡くなった者達が好きだった和菓子作りを自ら始めたのだと…。


だが1人だけ、もしかしたら創立者の息子が、生き残っているのかしれないと…日記には書かれていた。


息子が好きだったのはお饅頭。その土地の神様もまた、お饅頭が好きだったから、創立者は和菓子を作り始めたのだ。


…彼等にいつか、食べてもらう為に。


アタシは日記を閉じて、深く息を吐いた。


アタシが調べられる範囲だけど、一応調べてみた。


あの町と、あの土地の神様のことを。


2人の少年達が言っていた通り、あの土地には複数の神様が存在していた。


神様達はお地蔵さんの形を取り、人間達と関わってきた。


土地の人間はお地蔵さんにお供えをすることで、守ってもらっていたのだ。


そして人間の代表として、1つの血筋の者達がいた。


彼等は土地の神様達と交流ができ、特に気に入られた者はあちらの世界へ連れて行かれることもあったそうだ。


…こっちの世界ではそのことを、『神隠し』と昔は言っていた。


文字通り、『神が隠した』こと。


でもそれはまた、あの屋敷の惨劇も同じことなのだ。


『神が隠した』事件―。


永久に解けるはずの無い謎は、アタシという存在が知ってしまった。


…そう、あの大地主の血筋の者として。


もしかしたらアタシだけ見逃してくれたのも、少年達は気付いていたからかもしれない…。


アタシは日記を元の場所に戻し、蔵を出た。


そして表のお店へ行き、頼んでいた物を受け取った。


大きな紙袋の中には、お饅頭やアメ、金平糖などウチの店の主力商品の詰め合わせだった。


それを持って、アタシは電車に乗り込んだ。


…結局、6人は行方不明となった。


警察に事情聴取されたけれど、アタシはあの日、別行動を取ったことにした。


町の人達もアタシという存在を否定したことから、容疑をかけられることは無かった。


だから、お礼に行かなければならない。


あの2人に。


先祖の心を表した、この和菓子を持って。


…きっと待っている。


でももしかしたら…和菓子なんて飽きた、と言われるかもしれない。


だから背負っているリュックには、コンビニで買ったたくさんのお菓子が入っている。


もしかしたら、向こうへ引き摺りこまれるかもしれない。


だけど不思議に心は落ち着いていた。


あの2人とずっと一緒にいられるのなら…と思えるアタシは、すでに人でないのかもしれない。


体は現実にここにあるけれど、心はすでに…向こう側にある。




【完】

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