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オモイノ・シリーズ

オモイノタネ 5

作者: 風紙文

発明を集める少女とその手伝いをするナビゲーター。

今回は、その二人の日常を少しだけ

アタシの名前はビーケ、ナビゲーターよ。

でもそんじょそこらの奴と一緒にしないでよね。

アタシは今、巷で有名な「発明の種」から作られた発明品なの。

ところが、アタシの制作者が変わり者でね…。

発明を回収、分解する為にアタシを作ったんだってさ。正直同じ発明として…。

清々するわ。

アタシ達からは決して逃げられないけど、制作者が持って逃げたりするの。

それを追いかけて…正直、疲れるのよ。

だから捕まえた時、とてもスッキリするの。



そんなアタシだけど…。今、ロッカーの中にいます。

何故こうなったか、それは制作者…エリの。この言葉がキッカケだった。



「あ…」

「どうしたのよ?」

「……ビーケ、落ち着いて聞いてね?」

「な…なによ? 改まって」

「……お金が無い」

「…は?」

「そろそろ資金が尽きる」

「へぇ…それは大変…ってえぇ!?」

「……どうしよっか?」

「ちょっと! アンタあんまり焦ってないでしょ!?」

「ううん、結構焦ってる」

「…そうには見えないんだけど?」

「ビーケのせいよ?」

「う……」

アタシを使うにはそうとうな対価が必要で、そのせいでエリは感情が乏しくなっているの。

「…だからといって、アタシでお金を稼ぐなんて絶対ムリよ?」

「うん…分かってる」

「じゃあどうするのよ」

「それは…」

「…全く」

そしてアタシは、ロッカーの中に居る。

細かく言えば、アタシの機能を使ってアルバイト募集の店を探して、雇ってもらっているエリを待っているのよ。

アタシの機能を上手く使ったわね…エリ。

…そういや、エリとも長いわね。

もう一年か……最初の頃のアタシは、反発して嘘をつこうとしていたっけ…。

でも結局、手伝ってるのよね。

何か…心を読むっていうアタシのサブ機能でエリの心を呼んだ時……引かれちゃったのよね……べ、別に弱みを握られているからとか、そんなんじゃないんだからね!

…ともかく。こんな事を考えるぐらい、ロッカーの中は暇なのよ…。


「お待たせ、ビーケ」

「遅いわよ…」

「ごめんね、でも得た物は多いよ」

「なによ?」

「バイト仲間の人にね、まるで操られたようにある客の所に行っちゃうっていう噂があるの」

「ふーん…で?」

「多分、発明だよね?」

「まぁ…反応はかなり近いから、多分ね」

「だからね、もう二、三日雇ってもらって、その人を見つけようと思うの」

「そう…まぁ、頑張りなさいね」

「うん、頑張るよ」

そう言って、エリは笑った。

…これがエリの普通。アタシを使ってないから、普通のエリに戻っている。

コッチの方が良いわよね? アタシは良いと思うわ。


…という訳で二日目。

エリは店でアルバイト、アタシはロッカーの中。

昨日と全く同じ状況。

だから昨日みたいに色々考えて過ごす。

そもそもエリの両親が「発明の種」の作成者よね。そして娘であるエリにこの回収を頼んだと…だったらそいつ等が行けってのよ。

でも何でか、アイツ等また研究を始めたのよ。

確か、発明を分解する発明を分解する発明を、とか同じ言葉を繰り返して。

よく分からないわよ。

何故ならアタシはナビゲーターだから。

…はぁ、一人で言っても虚しいわ…いつもならエリが、

…よく分からないよ。って答えてくれるのに。

そう考えたら、アッチのエリも悪くない、むしろアッチの方が一緒にいる時間長いし…。

…うーん。

どっちもどっちね。


そして三日目

やっぱりロッカーの中、正直ネタ切れ。

こんなにアタシのライブラリーは少なかったのね…。

…そういや、アタシについて考えた事、無かったわね。

…考えてみるか。

そもそもアタシは、発明を分解しようとしている発明の制作者の娘であるエリが作った発明。なら考えるべきは、何で作った物を態々回収、分解する必要があるのか。

確かにアタシ達みたいのが出回ったら大変かもしれないけどさ。

そんなの、作ってる途中で気づきなさいよ。

まぁムリだったから、こんな事になってんだけど。

人が何故物を作るか、そんなの簡単よ。

何故ならアタシはナビゲーターだから、導くとか探すのは得意よ。

実は今回探してる発明の名前も分かっているの。


思いのまま日記帳


日記に書かれた通りに動くことができる

名前を書かれた人は

その通りに動いてしまう

大変な発明よ。書かれる方も、書く方もね。

日記帳のデメリットは、欠かしてはいけないこと

何でもいいから書かないと、例え一日でも欠かすと。

勝手に書かれた日記の通り動かされてしまうの、書かれた通りに動けるということは、書かれた通りに動かされるという事。怖い発明よ。

「……」

「お待たせ、ビーケ」

「……」

「どうしたの?」

「…何でも無いわ」

「そう、あ! やっと目星がついたよ、早速行こ」

「えぇ…行きましょう」


「…貴女。発明を持ってるね?」

「発明? 何の事だか分かりませんわね」

うわぁ…お嬢様タイプかよ…。でも反応はアイツからだし。

「嘘をつくな!」

「な!? 箱が喋りましたわ!?」

「箱って言うな! アタシにはビーケっていう名前があるのよ!」

「は? ビーケ? おかしな名前ですわね」

「何をー!!」

あぁ…やっぱりムカつく。こういうタイプは大嫌いよ。

「ビーケ…少し黙って」

「…ちょっと待ってエリ、コイツに吠え面を…」

「フン、ワタクシに吠え面をかかせようなんて、無駄な事ですわ」

「キィー!」

「ビーケ…落ち着いて」

「も、もう少し…」

「どうなさいましたの? 何か言ってみなさい?」

「黙って」

「ひ…」

エリの静かな声。

怒っていないようで、とっても怒っている時の声。

そして目付き、あれはかなり怖い。あのお嬢様もビビってる。

ざまあ見ろ。

「……貴女はウェイターに会いたいが為に、日記帳に未来を書いた。貴女の所に必ず来るように」

「う…」

「……決められた未来はつまらない、本当に仲良くなりたいなら、日々の積み重ねが必要」

「だ…だからこうして毎日のように通っているではありませんか」

「嘘。貴女も日記帳に書かれたから、無理やり動かされてるだけ」

「う…」

「それにあの人、休まず働いて、とても疲れてる」

「え…」

「それは貴女のせい、貴女はあの人を疲れさせる為に、その日記をつかってる」

「そんな…ワタクシが…」

「人には休息が必要」

「でも…ワタクシの日記帳は一日でも欠かしたら不幸が…」

「大丈夫。私が分解してあげる。もう貴女もあの人も大丈夫になる」

「本当…ですの?」

「本当」

「分かりましたわ、どうぞこちらですわ」

お嬢様はエリに日記帳を渡した。

「……貴女達の未来に、良いことがあるよう願ってる。から頑張って」

ネジを回した。


…全く、怖い発明だったわ。

アタシと同じ物から出来上がったとは思えないわね。

アタシは、エリが作ってくれて…本当に良かった。

「? どうしたのビーケ」

「何でもないわよ」

「そう? いつもよりかなり静かだけど…」

「…かなりってどういう事よ?」

「そのままの意味」

「まるでアタシがいつもはうるさいみたいじゃない」

「まさにその通り」

「さらっと本心を言ってんじゃないわよ!」

「くす…やっぱりビーケはその方があってる」

「たく…アンタって子は」

「私が作ったんだから、私の方が年上な筈」

「あ…」

「…くす」

「たく…いいから次の発明を探すわよ。位置はもう示しておいたから」

「いつもありがとね」

「な!? お、おだてたってオマケなんてしないわよ! その場所に自分で行って確かめなさい! 道順ぐらい教えてあげるから!」

「うん……行こ」

全く、この子……この年上は。

…そういえば、あの時。

決められた未来は、つまらない

…アタシの未来は、もう…決まってるのよね。

だったら…アレを…。

「…ねぇ、エリ?」

「……何? ビーケ」

「…これからもよろしく」

「……急にどうしたの? ビーケが改まってると、明日は槍が降るよ?」

「アタシは何者よ!?」

「くす……うん。これからもよろしく」

「…うん」

…まだ、いいかな。

アタシの決まっている未来。その最後の時にでもね。

アタシの未来。

それはいずれ、

エリの手で分解されるという、決められた。未来へ。


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