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変なやつまとめ

05 - おもちゃ

作者: 櫻井ゼノン
掲載日:2026/04/08

「どうして言うことが聞けないの!」


母親の怒声が響き渡った。

デパートのおもちゃ売り場で子供が「買って買って」と泣きわめいている。


俺はスーツのボタンを外し、ネクタイを緩めながらその親子に近寄っていく。

そばまで近づくと、そのまま勢いよくごろんと子供の横で仰向けに寝転がった。


「ああー!! ママー!! 買って買って買って!!!」


そう叫びながら、俺は肩を軸に、足を使って床の上でぐるぐると回転した。


子供は俺を見てピタリと泣き止んだ。

母親は一度驚いた後に、ひきつった顔を見せている。


彼女は俺を軽蔑した眼差しで見ながら、子供の手をつかむと店から逃げるように出て行ってしまった。

子供は途中、何度もこちらを振り返りながらも、ほとんど抵抗せず素直に母親に連れられていった。


そしてスーツ姿で床に転がり、

駄々をこねる格好をした俺だけがぽつんと残された。


なんでだよ。俺にもおもちゃ買ってくれよ。


見かねたのか、女性店員さんが近寄ってきてくれた。

ああ良かった。きっと俺におもちゃを買ってくれるんだな。なんて天使な方なんだ。


「あの、すみません。他のお客様のご迷惑になりますので…」


なんということだ。俺もお客様なのに。

泣いちゃうぞ。いいのか。本当に泣いちゃうぞ。


「ママー…」


俺はそう言いながら店員さんにすがるように手を伸ばした。

サッと避けられた。


オーマイゴッド…ドミネ・クオ・ヴァディス…神は死んだ!


まぁ日本には八百万の神がいるって言うし、新しい神を見つけるか。

あと七百九十九万…あぁなんでもいいや。


俺は反動をつけて起き上がると、スーツを脱いでバサッと肩にかけた。

そのまま店を出ると、雲一つない青空が広がっており、

燦々と輝く太陽が俺を待っていた。


はーあ。今日も一つ、いいことしちゃったかな。

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