9)だ、大丈夫かな?partⅡ
(最後にビクビクってなったのは初めての経験だ。何と言えばいいかわからぬがうーん……ああ。気持ちがいいのか。そうだな気持ちが良かったんだ。なるほど不思議なものだな。)
素っ裸の凛道を追いかけた女子たちがタオルで全身を拭いて上げて制服を着せると顧問の教員がやってきた。
「おっ有栖川君だったか。水泳部に入部するのかな?」
「いや、俺は泳げないようだ。失礼する」
そっけなくその場を立ち去り鞄を持つと駅へと向かっていった。
この学園の制服は有名ではあるが皆が送り迎えでの登下校のため凛道はかなり目立っていた。駅では間違える事なくスムーズに改札を通り朝に降りたホームへとたどり着き空いている電車に乗った。要は正しく逆方向へと進んだ。終点に辿り着いても凛道は座ったままだった。駅の職員が終点だよ、日本語分かる?などと尋ねて来ても凛道は自分が下りる駅がまだ来ない、の一点張りでようやく駅職員との意思疎通が完成するころには8時を過ぎていた。
逆方向へと向かう電車に乗っていると途中の駅で朝に会ったたんこぶの人と出会う。
「あーー朝のたんこぶ君だぁ、君は日本語出来るよねぇ、お姉さんは酔っぱらっているから日本語うまくできませんよ」と笑い続けながらのたまう。「君と同じ駅から乗ったから付いたら起こしてね」と言い残し寝た。
到着したが起きる気配がない女性を肩に担いで荷物を持って駅へと降りる。改札でひと悶着あったが無事に駅から出た。起きる気配が全くない女性を担いだまま帰宅した凛道は、女性を畳の上に降ろして一人シャワーを浴びる、もちろん水で、だ。
バスタオルで体をふきながら女性を観察する。しばらくすると女性が目を覚まして「ここどこだ」と一言。凛道が説明し終わるころに泣き始めた女性が愚痴をこぼす。久しぶりのデートだったからお姉さんは気合を入れたんだよと、おもむろに服を脱ぎ始めた。下着姿になった女性は服を畳みながら別れ話だったとさらに泣き続ける。見てよこの勝負下着。気合入れたんだけどなぁと。
「何の勝負だったんだ」
興味のかけらも見せない凛道に自分も脱ぐわと返し全裸となった。何の荷物もない6畳の畳部屋で全裸の男女が一組。これで何も始まらないことに焦れた女性がもういい頂きます。と、凛道の凛道君をお口でぱくっとな。
「まぁかわいい、ささ、横になって」
鉛筆凛道君は女性に飲み込まれて、挙句の果てに下のお口に入り込むこととなる。ああ、これは心地いい。この先に気持ちいいが来るのだったな。そう思いながら下から揺れるたんこぶを見ていた。事後、二人はあおむけで並びながらピロートークに移る。
「はぁちょっとすっきりしたわ」
「なぁあんたの股にひげがあるがそれって女性で流行ってるのか?」
「えっと君はまだ生えてないみたいだけどそのうち生えてくるわよ」
実は凛道は生えない。そんな状態など知らぬ、と言いそうな創造主を思い出したような違うような…
「ねぇ、君はどこの国から来たの」「あんたは」「私はこの日本だよあははは」「俺もそうだ」その後打ち解けあった二人はどうでもいいような話をつづけた。
「じゃそろそろ帰るよ、外も明るくなり始めたし」そう言って朝日川 一花は服を着てドアを開けると帰っていった。
やっぱりビクビクは気持ちがいいな。そう思いながら部屋を見渡し標本の一つも無いなんて殺風景だな。とか考えてからシャワーを浴びて学園へと向かう。この日の満員電車で彼女との遭遇はなかったが、新しい6感の特徴を知る。確かに触られているのに何の感触も無く触られ続けている禿げたおっさん達が頭を自分で触っては首をかしげる光景が随所でみられる車両があった。
それに加えて六感での力加減は、力のある人間レベルまで下がっているという事実だ。凛道にとってこれは嬉しい誤算であった。ただこの少年には痴漢行為という発想がなかった。
学園についても受ける授業のことごとくが個人的にはすでに教わった内容ばかりでつまらなかった時だ。教員が「有栖川、退屈だろう?図書館でも医務室でも行っていいぞ、静かにな」と言ってくれた。凛道は医務室を選んだ。この学園の医務室には医師の資格を持つ女医が常駐していた。だから保健室ではなく医務室だ。医務室には到着するも医師はいなかった。医療従事者との意見交換を望んだのだが、いないならベッドで静かに寝たふりをしようと決意した。
しばらくすると誰かが入室してくる。それは女医だった。「あら?君は有栖川凛道君で合ってるわよね」と今この学園で一番ホットな話題の提供者。そういいながらTシャツとパンツで横になっている凛道のパンツに手をかけた。自分は白衣のままにしただけ脱いで凛道君を口に咥える。その後はお決まりのごとく騎乗位からのフィニッシュ。だが女医は今度は正常位でお願いと、極めてデンジャラスな提案をした。凛道は騎乗位しか知らなかった。女医が優しく教えると、一突き目で女医がベッドからミサイルのように射出され頭から壁に衝突した。首のむち打ちと股関節の骨折で済んだのは不幸中の幸いであったともいえる。
そんな事もありながらゴールデンウイークに突入し、終えた。休み明けに隣の席の男子に休み中は何してたんだと聞かれるも自宅にいたとしか答えない凛道に首をかしげる。
そう、凛道は読んで字のごとくじっとしていたのだ。冬の冬眠の真似をして。あのアパートにはいくつもの監視カメラがついていることは知らぬが、監視している警察が寝てしまうといった体たらくを見せるくらいにじっとしていた。
他者から見れば確かに畳の上でずっと仰向けで横になっていたようにしか見えない。ずっとずっとずっと。だが実は休みに入る前には亡国のジェット戦闘機との競争(凛道はそう捉えている)に負けた事を根に持っていてずっといつ再戦しようかとかまずはスピードアップだとか考えていたが、その国は秘匿していたため世界は「空駆ける子熊再び」を知らずにゴールデンウイークに突入していた。ちびのくせに生意気だ。などとちびっこが対抗意識を持っていた。
かと思えば、己の股間についている異物が時々固くなって、女子という生き物たちに利用されている事には違和感を覚えていた。勃起を故障と認識しながらも、気持ちいいに抗えずに成すがまま、されるがままの自分に他社を巻き込んで爆発したら、とか益体も無いことを反省したり、全く何も考えずに無我の境地、解脱に至るのでは?といった所業までこの少年のゴールデンウイークは頭の中は忙しく過ぎ去っていったが、答えの出ないことばかりの平凡な夢見る中学生だったともいえる。この少年の平凡が遥か彼方の虹の向こうであったとしても。
また学園が始まる。電車を奴隷列車と呼ぶくらいには大嫌いな移動手段だった凛道は、まだ暗いうちに学園まで一直線に空を駆け抜けるといった暴挙に打って出た。屋上に着地すると授業が始まるまでその場でじっとしていた。翌日に衣替えといったイベントがある日の夜に久しく見ていなかった藍と会う。明日からはこれを着て登校したまえとだけ言い残し再開イベントは起きない。実は藍や黒川はカメラ越しに時々見ていたため久しぶりという感覚ではなかった。
6月の教室、外は雨。いろんな生徒たちが傘持って来てねぇだの、女子生徒に帰る方向同じ同じだよね、とか言ってる男子たちを置き去りにそっと屋上に向かい一気に雨雲の上まで駆け抜け帰宅しようとしていたが、稲妻は必ずしも下へと向かうモノだけではないという事さえ忘れ去ってるいる凛道は被雷した。これがアンドロイドなどであれば大惨事であったが、凛道はびっくりしたと言い放ちなんで上に伸びてくるんだよと、雨雲に文句をつけるといった、しょーも無い出来事と流してしまう。アパートについた時には土砂降りであった。結局ずぶぬれになった凛道は制服を脱いだ時に気付いた。夏服がボロボロになっている事に。被雷した時に何かに気付いたのだろうか。空をさまようWiFiを利用し藍に連絡を付けた。翌日の朝には藍自らが夏服のお代わりを持ってきた。
「君の持っているそのボロボロの何かは制服か」
「そうだ」
短いやり取りが終わり凛道が着替え終わるのを待って藍が問う。
「ゴールデンウイーク頃から在日米軍の各地からスクランブル発進が頻繁に行われているが、我が国への説明はない。君は何か知っているか?いや、知らないはずだ。そうに違いない。栓無き事を言った。気を付けて学園へ行ってほしい」
ああと答えた凛道はあっという間に藍の目の前から消え去った。
「藍ちゃんは相変わらず変な事ばかり言ってるな」




