14)アメリカ どーすんだよ
「この国の政治があれほど強く出てくるはずがないよな。どのタイミングで出てくるんだアメリカ」
この日アリス国は日本から情報を取り上げた。通じない、何を使おうとも通じない。神戸の富岳をはじめとし、日本のすべての基地局、アンテナ、ケーブル。震災後の復旧期を思い出させるかのようにあって当たり前のモノがない。
「藍ちゃん、玄関前は片づけてくれたの?次はてっきり自衛隊が突入してくるんだと思っていたのにな」
「…」
「何だよ黙っちゃって、まさかこの国の治安維持をアメリカに丸投げか」
「悪いことは言わん、黙って日本の警察に捕まってくれ」
「…よし決めた。気づいてないでしょ。1日ひとつ、日本から何かを奪っていることに。今日は何を奪うか決めた。わかるかい藍ちゃんは」
「港と空港と線路道路、物流だろ」
「残念外れ。よしっどうだラムダ」
(太平洋と大西洋が大きく繋がりました。カナダとメキシコにも少々被害が出たようですが)
「わかった」
「何かしたのか」
「うん、日本からバックを奪った。今やアメリカ合衆国はアラスカ州とハワイ州だけだ。後は各地にある米軍基地と米国大使館ってとこ」
「そういう冗談はいらん」
「パナマ運河乙っていうんだっけ?」
「じょ、冗談だろ」
「あの国が西でいっぱいいっぱいな戦争してるんだから、ここで北方4島の奪還に動かないのは何ゆえだ。実効支配には実効支配でやり返せばいいだろうに。俺ならついでに樺太全島もとるけどね。何なら俺が宣戦布告してやってもいいんだぞ」
全く情報が入ってこない現状で信用する根拠はないのだが、藍は直感でそれが事実だと確信している。が、政治家どもがそれを知るまでに我が国はどれほどのものを失うのだろうかと、恐怖に満たされていく。ウクライナはどう出る、中国は何を仕掛ける、半島の北は撃つ気があるのか。
「ねぇねぇ藍ちゃん次はアフリカの時代が来ると思わないか?こうなっても、のほほんと前のように暮らせる日が来るって思ってるよね日本人って」
明日は何を奪おうかなっと歌うように口ずさんで制服に着替える。
「日本人のお花畑はいくら荒らされても花が咲くんだよね」
何一つ復興が進まない中で、昨日入学式を終えて、今日からは新学期の始まりだ。行ってきまーすとラムダに告げると消え去っていく凛道に転移を初めて見た藍がラムダに詰め寄る。
「今のは何だ、どこへ行った、何をしたんだ」無言で受付という名の居間で座布団に座ると目を閉じた。その後、藍は自分の足でアメリカ大使館へと向かうのだった。
地球上からおよそ3億5千万の魂がどこかへと向かうのをオニに許可を出した凛道がアメリカがあった場所へと転移すると体をオニに預けた。オニは休む間もなく何かを食べているようだった。まぁまたオニが誕生するよりはましだろ創造主様よ。阿呆寄りだった凛道が物騒な方へと舵を切ったのだった。
魂は見えてもいないが創造主と同じ様に魂までも消滅させたのだから、オニの誕生にはつながらない事をオニも凛道も知らない。死亡理由がブラックホールではなかった者たちの分は、せっせと頂いているオニであった。
最初にアメリカ消滅を確認したのは、当然カナダとメキシコだった、次いでイギリスとEU。そしてロシア、ロシアがそれを知ると一気呵成にウクライナへの攻撃を強めた。そして中国が動いた。台湾への軍事介入。世界中がビッグニュースに右往左往している中で、何も知らないのは日本人だけだった。某中高一貫校では学年やクラスといった事で一喜一憂するお花たちが咲き誇っていた。道路事情で登校できた者たちだけではあるが。
階段を一階分多く登って2年1組へと入ると女子生徒たちがキャーキャー言いだす。
「おい有栖川、お前クラスは2組になっていたぞ」
「ああそうか、ありがとう」
そう言って隣のクラスへと行こうとし、背中を向けると後ろから強い光が漏れてきた。何だと思いながら振り返ると今までいた連中が制服や下着を脱ぎ散らして誰もいなくなっていた。何だこれ、どうなってる?頭の中が?でいっぱいになっているときにその声のようなものは聞こえた。
”むしろ、お前が行け”
はっと思うのと同時に嫌な予感がしてすぐにラムダを情報体として自分の頭に詰め込んだ。
(何の用事でどこへ行けというのだ。)
”ここが時の次元だとわかっていたのか、優秀優秀。我が造っただけのことはあるな。”
”この次元まで創れるのは上級創造主らしいのは知っているがその上もありそうだな”
(俺は今、戦争中で忙しい)
”貴様らの感覚だとあの星が全てなのだろうがな、たった今、別世界からの干渉を受けた。これは我ら創造主にとって宣戦布告に等しい所業なのだよ”
(はぁっ?)
”こちらの世界に干渉して知的生命体を拉致したところだが、おそらく狙われたのは貴様の力だ”
(……はぁっ?)
”どちらかの世界が滅ばねばこの戦いは終わらない”
(…………はぁっ?)
”干渉の時点で最下級クラスの創造主であろうというのは分かる”
”どうした、聞いているのか、まぁ良い続ける、先の世界へと渡り創造主を倒せば世界は消滅する”
”恐れるな、貴様ならば勝てる相手だ”
”どうした”
(なるほどな、そうやってオニのあほうをこの世界から排除するチャンスだという事だな)
(どうした、なぜ無言なんだ。図星か)
”いいから行ってこい”
「よっと」ラムダが再召喚される。
「ここはどこでしょう座標もありませんね」
「別の世界だそうだ」
「別の惑星ではなくてですか」
「ああ、異世界だ。あんにゃろう、これから面白くなるってのに全部パーだ」
「大気中に未知の元素もあるようですね」
「あれじゃねぇの。魔法とか。きっとケツに箒を食い込ませて空飛ぶ変態とかいるかもな」
「…」
「とりあえずラムダは座標構築」
「はい」
その場で寝ころんだ凛道だが、どうも違和感がある事に気付く。ナニカが自分から遠ざかり逃げているような、そのせいである程度固いはずの土の地面が少しへこむ。いい感じの柔らかベッドだ。
「どうかしましたか」
「ん?ラムダは沈まないのか」
「いいえ、歩きづらいので座標を利用しています」早いなと思いながらさてどうするかと思っていると「マスター、この星少し面白いかもしれません。南に行きましょう」
「どうした」
「一つの山の山頂が大気圏を突破しています。ぴたりと山頂が南極の極点です。それと月はありませんね」
「座標を寄越せ、本当だな、天元突破している山がある南半球は大陸3つ。北半球が広大な一つの大陸、赤道にあたる部分が列島状になっているのか。地軸もまっすぐだ公転軌道が太陽からひとしい距離で回っていたら四季は場所によって固定されるかもしれん。願わくば陽は海へと沈んでほしいな。ラムダは二つ目の次元は感知できないのか」
「はい」
「ああ見つけた。なんだこれ。茣蓙よりひどい。ちょっと行って来る」
(おいお前らかこの世界の創造主は)
”貴様は何者だ”
(弱肉強食の強者だ、さらばだ)
一撃でおそらく7柱の自称神たちを消滅させた凛道だったが、世界が激しく抵抗する。ぐらりぐらりと世界が揺れる。そのすべての熱量を凛道に預けるかのように、世界の揺れは止まった。世界が凛道を神として認めた、逆転現象が起こってしまった。凛道はあきらめた、なぜならこの世界はもう一つの世界へも干渉していて、今この世界を消しては元居た世界への攻撃が予測できるくらいには神格を持ち始めていたからだ。
「じゃぁやられ役でも演じてみますか」
「戻った」
「おかえりなさいませ」
「ああ、そうだなそうしよう。ラムダ、これより我はあほうな部分を別人格に押し付ける。オニのバカには別格として我が許可を出したときのみ体の自由を与えよう。トライアングルではない。あくまでも我が主格であって、あほうが副主格、馬鹿が別格である。我以外の格はお互いに交代することはない。どちらを使うかは我の領分とする」
「何だか神々しさを感じますが」
「ああ、世界に神の座を押し付けられた。この世界の理はあまりにもザルすぎる。修正が必要だ」
はぁ、と油断したと同時に「じゃじゃじゃじゃーん、俺顕現。ラムダついてこい。探検だ」
第1部 完
これで第1部ローファンタジー編は終わりです。読んでくださった皆様へ、昔は若者だった私の作品とも言えるかどうか分からない何かにお付き合いしていただき本当にありがとうございました。




