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【オニ】を内包した不思議な老人の魂  作者: 桃井ルルール
12/14

12)椅子。昔はそうしてたんだよ。

 学園へ到着すると門の守衛に声をかけられた。

「おっ、久しぶりだな有名人、今日が卒業式なのと関係あるのか」

「そうではないが、今日は卒業式だったか、まぁ行ってみるか」


「おっ、久しぶりだな有名人、今日が卒業式なのと関係あるのか」

「気のせいだろうか」

「何言ってんだか知らんがお前教室行って椅子持ってこないと。全員昨日そうしたんだぞ」

お、おうと返事を返し誰かは知らぬが親切な奴だったな。ほぼ全知全能といった意味不明の生物になった凛道は、意外と謙虚な面も持っていたのだった。が彼は 隣の席の男子だった。並列であれ直列であれ、自分の能力を使いこなせていないのが凛道クオリティーなのだろう。


「卒業証書授与、3年3組、荒川すみれ」「はい」


 (眠りそうになるけど眠れる事がない体って、暇な時もあるのだな。冬眠の時よりもつらい気がする。  さすがに代表は王だよな。その椅子を俺に譲ってから卒業していけ。)


すでに車いすの情報は手に入れているはずだが、わがままな駄々っ子が顔を出すと無能になっているという恐ろしさ、凛道は相変わらずであった。


 車いすでステージ横まで移動すると後ろに知らないおっさんが押し手に手をかけて登りのスロープを押し上った、壇上で待ち構えている学園長の手前で車いすが止まるとよろつきながらも、王は立ち上がった。そのまま一歩二歩三歩と歩くと学園長に対面する。驚いているのは学園長だけではない。あれほどの静寂の中で進んでいた行事が止まった。「えーおほんっ、卒業証書、荒川すみれ、…」


(やはり川が付くんだな、すみれって花の名前なのか)

 体育館上では静かな奇跡に包まれているかの如く、ざわつきも無くなり静寂が耳に痛い。一人だけ自分の名付けは間違っていなかったと胸を張ってにやけていた者もいるが再び車いすに座りステージ横のスロープを下りると凛道は一人拍手をした。


その拍手は一気に広まっていき体育館中が拍手のうねりに包まれる。その後の流れはもはやただの消化試合のようであった。


 それにつけても教室に戻ったら戻ったで椅子がない事への不満があちらこちらで噴出していた。パイプ椅子くらい準備できるだろうに、とか、誰かが予算、ポケットに入れたんじゃね?とか、そもそも体育館にパイプ椅子をしまって置けるスペースが無いんだろう、とか、実は体育館の床が割れて下から椅子の群れがせり上がってくる。という仕組みにこだわった誰かのせいでもめにもめたのは今の学園長ではない。この何でもない文章をカットせずに残すという事がプロ読者を欺く仕掛けだったりする。今後一切出てこない話だから。


でも驚いたよなぁ、おーおーそれそれ、マンガみたいな展開だった。きっとゴッドハンドが居たんだろ。

観客となった生徒達のさえずりをさえぎって教員が入ってくるなり、「10分後にこのクラスは椅子を取りに行くこと。急げとは言わんが次のクラスも待たされている事を忘れずにな、それと次はクラス替えがあるからな。間違えるなよ、それと教科書などは休み中に準備しておくこと」はいじゃぁ春休みを楽しめばいいさと捨て台詞を残して担任は去って行った。


 6畳の居間を持つ大使館へと帰ると「座標は正常に発信されました」、とヒューマノイドが迎えてくれる。

「確か光速で伸長していくんだったか」

「はい」

「どれほど使った」

「予備の分も合わせて使ったので現在は予備3Lを割り込みました」

「そ、そうだ俺には急用があったんだった」そう言って玄関へと向かうがそこにはヒューマノイドが立ち塞がっていた。


「もう使い始めてるのか?」

「当然です」凛道は6畳間へと引きずられていく。

「朝までに予備分は補充したいですね」

「馬鹿を言うな。2リットル以上だぞ」

「頑張ってもらいますよ、マスター」結局朝までに500mlたまった。


あれから何日たっただろうピンポーンというチャイムの音が行為を遮った。助かったと思った凛道は即座に玄関へと行きドアを開けた。そこにいたのは藍だった。


「有栖川お前の教科書やらを買ってきた。なんで裸なんだ」そう言うと美女が裸で「いらっしゃいませ」と何事もないかの如く用件を尋ねてきた。


「俺はあの日宣言しただろう。ここは我が国の大使館だ。我が国の法が適用される。川さん呼んで我が国唯一の国民の衣服を購入してきてくれ。俺のも制服をはじめとして新調しないとサイズが合わなくなってきた」

「君が全権大使か、何だかピンとこないな」

「俺が王でもあるのだがな」

「はいはい、でもこうなってくると外務省もしゃしゃり出てきそうだな。すでに防衛省はあれほどの人的被害を受けているのだ。それを盾に政府へとプレッシャーをかけてきている」

「横から失礼します。南極大陸はどこの国にも属さないとなっていますよね。我が国が領土としてもよいのではないでしょうか」


 

 おもむろにスマホを取り出し「黒川、大至急メジャーを持って有栖川っじゃなくアリス国大使館へ来い、大至急だ」

「藍です。例のマル秘案件ですが官房長官はご存じなのでしょうか。…はい、。…はい、はい、少しややこしくなりそうです。……善処します」


 フ~と息を吐きだして「南極の件は無しだな、国連まで参加してくるだろうし…」

「藍ちゃん勘違いしちゃだめだ。アリス国は領土を持たない戦闘特化型国家だ。強いぞ俺も空中で10秒くらいは止まれるようになったし、こっちの従者はある意味無敵だ。二人で全世界を敵に回しても勝ってしまうぞ」

「マスターのおっしゃる通りです。国連に何ができますか、米軍はこの国が知らないことまでも知っています。参戦するはずも無く、我関せずでしょう」


「1日だけくれ、1日だけ欲しい」

「この国の政治家が重要案件を1日で決定できるわけがあるまい」

「だ、だが…」

「ならば米軍に与えているお友達料金の10分の1を我が国との同盟料金としようか。発展途上国当たりの大使館が入っているようなビルの1室あたりを正式に我が国の大使館とする。看板は出すなよ、お前らの目が届く場所で大人しくしておいてやろう」

「同盟内容は依頼さえあればこの国の障害を物理的に排除してやる」


 ここまで一方的に宣言したアリス国は二人とも全裸だったせいか藍に危機感を過剰に持たれることはなかった


「あーっとそれと我が国は国連には参加しないし、同盟国は1国だけだと断言しておく、国旗だ国旗を作ろう、それと我が国は貴国に対してクレヨンを所望する」ノートに向かって縦縞三色とか横縞三色とかはいらないなぁ。今にも歌いだしそうな雰囲気である。藍は最初に言われたこの場所はアリス国である。我が国の法が適用される。という意味を私も全裸になるべきなのだろうかと、思考が素敵なお花畑へと誘われて行く滅茶苦茶な状態となっていた。


「マスター、領土のない国には名を付けたのに体という実態を持った私には名付けて下さらないのでしょうか」

「んーーじゃぁ、ギャランドゥーで」

「お断りいたします」

「えー、じゃぁ、ギャラクシャン」

「…」

「ギャラクティカマグナム」

「…」

「ギャラクティカファントム」

「…」

「ギャランシグマ」

「…」

「ギャランラムダ」

「マスター、そのギャランとかいうのは必要なのですか?」

「えーーかっこいいじゃん。無かったらただのラムダになっちゃう」

「拝命しました。只今より私はラムダです」

「えーーっ」

藍のバグは修正不可能な段階になっていた。


「お待たせいたしました」

「黒川、彼女の服を用意してほしい。それとクレヨンだ」

「は?」

「適当な安い服で結構よ、それを着たらオーダーメイドでスーツを仕立てに行きます。


その日はちんちくりんなワンピースを着た金髪碧眼の美女と、スーツを着た黒川という二人組が出て行ったのを見計らい全力ダッシュで故郷ともいえるお山のあった立ち入り禁止地区に逃げ込んだ。アリス国大使館ではなぜか留守番をする羽目になった藍がボケーっと突っ立っていた。

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