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国土防衛砲撃要塞

作者:

短編です。

「装填完了!!」

「耳栓急げ!」

そういう声が聞こえて、もう30分もたったのかと思いながら耳栓をした。

「は…ゃ」

そのぐらいしか聞こえず、そのすぐに、ドォォォン的な音が鳴った。

音が聞こえてから、耳栓を外す。

700ミリ砲を発射してからすぐに再装填が始まる。

あわただしく砲の内部が動き出す。

ブシューという音を合図に全回転始めるファンの音。

そして弾薬庫から700ミリの砲弾が出てきてゆっくりと運ばれていく。

その様子を見ながら俺は食堂に向かった。


俺は食堂でぱさぱさになったパンを食べる。

パンが食べれるだけ戦時中であればいいのだろうが、やはり少し物足りない。

まぁしょうがない。

一体いつからだったか。

この戦争が始まったのは。


この国は石油も多少あり、鉱物だってそれなりにあった。だからそれらを発掘し、国内で加工したり、資源ごと売ったりと。

そんなやり方でこの国は成長していった。

そんなやり方でそれなりの中堅国ほどになったころに、大きな2国が戦争を始めた。

それは世界を巻き込むレベルではなかった。

が、世界を混乱させるには十分だった。

おかげさまで株価やらそこらへんはわからないが、いろいろ経済に影響を与えたらしい。

嫌なことにうちの国は戦争している国の近くだったわけだ。

だからうちの政治家様らはもしもに備えたわけだ。それで俺が今いる国土防衛砲撃要塞は生まれた。

結局この要塞は使わなかった。その2国は今も息づいてはいる。片方の俺らの近い国のほうが負けたが。

そんでその俺らに近い国は資源を奪われ、経済もいろいろ問題が起きたとかなんとか。

そして、とりあえず資源を入手しようと俺らの国を攻めて戦争が始まったのだ。

もちろんほかの国は俺らが負けると思っていたのだろう。

だが、俺らはこの要塞があった。

世界最長といっても過言ではない700ミリ砲に加え、国内ならほぼすべてを射程に収める225ミリ砲と315ミリ砲を備える我らが国土防衛砲撃要塞が。

運のいいことだ。

700ミリ砲は敵国の一部を射程に収めていて、敵の軍事工場や、祖国に近い飛行場や発電施設なんかを遠距離から一方的に破壊し、225と315ミリは敵の進撃を食い止める程度の威力はいくらでもあり、攻め込んできた歩兵部隊だろうが戦車隊だろうが吹っ飛ばし、敵の戦線を崩壊させまくっていた。

だがまぁ、700ミリ砲には自動照準システム搭載だが、225ミリと315ミリは非搭載だ。おかげでいまだに手動で照準をつけている。

そんなこの要塞にも航空機による攻撃には無力だったが、国が目まぐるしい戦果を見て自動迎撃対空システム搭載の速射機関砲をつけてくれた。それもかなりの門数をだ。

おかげで、強力な大砲で敵を地上を制圧し、空の敵を機関砲で落としまくるというすごい要塞ができた。

だからいまだにこの国は生きている。


こんなことを考え、さっさと自分の班の部屋に帰った。

今日は別に休みだからな。




2日目 友人と惨状




今日は休みじゃないか…。

けだるい感じでベットから出る。

現在時刻は11時30分。

12時に交代の時間だ。

班のみんなはまだ寝ている。

俺は部屋から出てさっさと自分の持ち場に向かっていった。

225ミリ砲の管理室に入る。

ここから発射やらをするわけだ。

早めに入ったからかほかの班の人がいた。

早めに来るのは別に珍しいことじゃないのでそのままそこら辺の椅子に座る。

「やぁやぁ早いねぇ。れい君。」

こういう話し方でこういうやつは一人だけだ。

「なんだ陽向ひなた。」

俺が反応を示すとそいつは俺の隣に座り、人当たりのよさそうな笑顔を見せる。

「なんでこんな早いの?俺なんて時間ギリギリに来るのに。」

こいつ、やっぱり美形と言われそうな顔してるな。

事実言われていたらしいが。

「早く目が覚めただけだ。特に理由はない。」

「まったく、君は冷たいんだから。せっかくのいい顔が台無しだよ。」

いい顔なんかじゃない。すげぇ恥ずかしいからあんま言わないでくれ。

「まぁいいじゃないか。ほらそろそろ時間だぞ。」

「あっほんとだ。じゃぁねぇ。」

そんな気の抜けた感じのする声を出し、陽向は部屋から出て行った。

それを合図にするように俺の班員が入ってきた。

「さぁお前ら眠い脳を起こせ!」

隊長殿の怒号が脳に直接届く。

俺はただ発射のボタンを押すだけの仕事である。それと敵の被害報告。

それだけの簡単な仕事だぜ!

だが、たまに望遠鏡の倍率が足りなくてほとんど見えない時があるぜ!

そんなことを考えながら発射の要請が来るまで待つ。

ラジオでも聞きながら。

『今日の戦線放送です。昨日陸軍の歩兵部隊が新兵器、レールガン歩兵型を実践投入し敵戦車2両の撃破を確認したとのことです。レールガン歩兵型はもとは艦載用であったレールガンを小型化し、歩兵が持つ銃にしたものです。これにより戦車をも撃破することができ、これからのさらなる戦果に期待ができます。』

レールガンが歩兵用に…。俺の子供のころのSFの世界が現実になってきているじゃないか。

最近の技術に感動を覚えるよ。

「はい…!了解しました!」

通信兵が何か了解してる。

「観測所からの報告!敵のガンシップが3機に護衛戦闘機が数機接近とのこと!」

まじか。

「ッ!…急げ!拡散砲弾を装填しろ!」

「はい!」

そんな報告が来てすぐさま俺らは動き出す。

今装填していた榴弾をすぐさま取り出し拡散砲弾を装填する。

拡散砲弾はショットガンみたいなもんだ。

発射するとライフル弾のような物体が拡散し、飛んでいく。

これで敵の航空機に打撃を加えるわけだ。

まぁ実際はほぼほぼ当たらず、ただの威嚇射撃になっている。

それでも、威嚇でも、別に少しでも相手に焦りを与えられればいいのだ。

「照準手。ガンシップを目標にしてくれ。」

戦闘機ははっきり言って撃墜は機関砲に任せればいい。

微調整は俺の役目だ。

こいつが大部分の照準をして、俺はただ微調整をすればいい。

「敵機もう少しで砲の射程に入ります!」

「よし、照準開始。」

そういうと照準手は計算を始めたらしい。

そして計算が終わったらしく照準を開始した。

「完了。」

そういわれたのでレーダーの位置や照準器なんかを使って少しずつ照準を動かす。

ここだ。この距離で。

「照準完了。いつでも。」

そう報告し、返答を待つ。

「よし。発射!」

隊長がそう言った瞬間に発射のボタンを押す。

すぐにドォンという感じの音が聞こえる。

他の砲も照準が完了したらしく、撃っていき、ドォンという感じの音が鳴り響く。

装填が終わるまでは俺は敵の被害を見ておかなければならない。

だからそのまま照準器を見る。

「敵の損害、確認できる限りでは墜ちた機体はないようです。しかし、弾痕がいくつか見られるため命中はしているかと。」

何発も撃ったのに数えられるほどなのは、少し高度を上げたのだろう。

その証拠に機体下部に弾痕が集中している。

機関銃なんかのように撃ちながら照準を変えられないから少し高度を上げるだけでいいんだろう。

次弾装填が終わるころに、機関砲の射程に入ったらしい。

ズダダダダダダダダみたいな音が鳴り続けている。

俺も装填が終わったので照準をして撃つ。

そして撃った直後、ついに射程に入ったらしいガンシップが俺らの砲台を集中的に攻撃し始めた。

この砲台を少しでも減らせば、陸軍が進軍しやすいからだろうと予想する。

だが、この砲台は我が国の防衛費の何割かをつぎ込んでいる砲台だ。

そうそう破壊されることはない。

敵が攻撃している間にも我々の機関砲や一応の砲台なんかも火を吐き続ける。

こっちが見ている限りは先頭の機体が多数の弾痕を残していた。

これだけ火力を出しているのにいまだに生きているのは、機関砲が戦闘機中心に迎撃しているからだろう。

装填が終わったら自分も撃ってはいるが、やはりほとんど意味をなさない。

砲の命中精度自体はいいのに砲弾の特性上そこそこ遠い機体に命中させるのは難しいのだ。

そうやって迎撃をしていると先頭の機体が急に高度を落とし始めた。

墜落だ。

ようやく落ちたようだ。戦闘機も、機関砲の集中砲火によって落ちて行っている。

戦闘機が落ちたおかげで機関砲がガンシップに集中できる。

ほぼほぼ全員が勝利を確信しただろう。

だが俺は嫌な予感がした。

そしてその当たってほしくもない予感は俺の場合はたいてい当たる。

今回も例外じゃなかったらしい。

ガンシップの機関砲がこの砲台の管理室に砲口を向けていた。

途端に発射される多数の弾丸。

それは最後の抵抗かもしれない。

そう思っていればもう、弾丸は管理室の鉄筋コンクリートをいとも簡単に貫き、内部まで侵入した。

弾丸が床に落ち、床をえぐる。

そして、隣にいる照準手の顔面をもえぐった。

「うわぁぁぁぁ⁉」

誰がそう叫んだか。

管理室は一瞬でパニックになった。

頭を低くせず頭を上げて弾丸の餌食となった者。

必死にドアを開けて逃げようとするもの。

俺は砲の旋回などを制御する机の下に隠れている。

窓を割る音や、部屋に響く怒号や悲鳴がなり、頭を抱える手の力が強まる。

だが最後の抵抗といういい予感はあっていたらしい。

暫くすると銃声も、床をえぐる音も聞こえなくなっていた。

ついさっきまですさまじい音が鳴っていたからか。

随分と静かに感じた。

ゆっくりと机の下から出る。

さっきまで見慣れていた部屋は、壁全体に弾痕が残り、床には多数の穴。

飛び散るガラス片。そしてついさっきまで隣にいた、

照準手。

顔面に大きな穴が開き、周辺に血が飛び散っていた。

そしてガンシップ接近の報告をした通信兵。

扉を開けて逃げようとしたのだろう。扉は開けてあった。

そして背中から血が出ていた。

隊長殿はもう逃げたらしい。

部屋には生きている人間は俺一人だった。




3日目 悲しき休日からイカれた新人




昨日の惨状を見てか、2日ほど休みになるらしい。

人員の補充も必要だからな。

俺はロクに回るわけでもない頭を回らせる。

敵の戦闘機はまっすぐこちらに向かって飛んで行った。

だから素早く落とすことができたのだ。

そこから思う。

俺らの砲の管理室は、敵に場所はばれていなかった。

なぜそう言えるかと言われれば今まで何度か敵の戦闘機の襲撃はあった。

だが、まず狙うはずの管理室に攻撃を一切していなかった。

一瞬で無力化できる標的のはずなのに。

城壁や砲台の周辺なんかにミサイルを撃っていた。

それも相手の作戦だと言われれば何とも言えないが、そうは思えない。

ミサイルは高いしな。

そして今回、ガンシップは明らかに俺らを狙っていた。

俺の予想だが。

まずあの無人機を飛ばし俺らの管理室の場所を知る。

その情報をガンシップに送る。

そして撃つ。

そんな感じじゃなかろうか。

俺らは戦争が始まって誰も死んでいない。

その隙を見事に疲れた感じだ。

「クソが。」

誰もいない俺らの部屋で悪態をつく。

一応俺は班員を信頼していたし、大事に思っていた。

今はそう思う。

何も失うものがなかったそんな俺だった。

失うってのはこういうことなのか。

一生感じたくない。

「お…」

「お…!」

「おーい!」

ん?

俺はずっとつけていた耳栓を外す。

そして顔を上げると、陽向がいた。

「どうしたんだい。そんな世界の終わりみたいな顔してぇ。」

おっとりとした、言葉の終わりが少し伸びたような話し方。

そこにはなんも変わらない陽向がいた。

「なんだ。」

「そんな刺のあるいい方しないでよぉ。これでも心配してるんだよぉ。」

相変わらず変わらない口調。

刺のあるいい方のつもりじゃなかったが、いつの間にかったらしい。

「大丈夫だよ。玲は一人じゃない。僕がいるよぉ。」

「そうか。ありがとうな。」

「全く、冷たいなぁ。」

少しは元気が出た気がする。こんなので多少は治る俺がちょろいのかもしれない。

まぁどうだっていいだろう。

「じゃぁそろそろ時間だから行くねぇ。」

「行ってら。」

そういって陽向はどこかへ行った。

そういえば俺らの砲の管理室は使えない。

あいつらはどうしてんだろうか。

俺は少し元気を出してベットから体を起こす。

そして食堂に向かった。

今日もぱさぱさしたパンを食べて部屋に戻る。

戻りながら少し昔を思い出す。

人気の少ない廃墟街。

そこに座る一人の少年。

手には一本の刃こぼれしたナイフ。

ふらっと立ち、近づいてきた大人に近づく。

大人がこちらに気づき、顔を向けたとたん、地面を思いきり蹴った。

一気に大人に近づき、ナイフをそいつの腹に…

刺そうとした。

が、見事に止められ、その少年は実は少年というよりは成人のほうがあっていたらしい。

見事に徴兵された。

昔を思い出していると、予想以上に早く部屋についた。

そこに入り、ベットに横になり、目をつぶる。

だが、なかなか寝れない。

それでも何とか、眠りについた。



あまり休みということに精通していないが、休みはやはり早く過ぎるらしい。

二日という月日は一瞬で過ぎた。

ほとんど寝ていたが。

ということで人員補充も終わったので早速仕事の初めだ。

管理室に行くと、あのボロボロ具合が嘘と思えるほどきれいだった。

今日から動き始めるらしく、いつもはいる陽向たちもいない。

俺はいつもの俺の席があった場所に座る。

そして、隊長殿と新しく迎えた班員を待つ。

ちなみにだが、班員の就任式的なものすら見ていない。

なので初対面だ。

あと10分で開始の時間だ。

時計を見ていると隊長殿が入って来た。

「遅くてすまないな。」

時計を見ているところを見たらしい。

や、そういうことで見てるわけじゃなくてですね。

「ところでだ。」

「なんです?」

「今回はいる班員だがな…。少々癖のあるやつでな。」

癖があるとは?

顔でそう聞くと

「まぁ…あってみればわかる。」

そういってはぐらかした。

気になるな。

まぁでもいいだろう。

そして俺は隊長殿と一緒に始まりの時刻まで待つ。

あと3分。

遅い。

いくら何でも遅すぎる。

開始時刻5分前には来てほしい。

どんな感じで照準をするとのかとか、どんな感じのやつなのかとか。

いろいろわからなければ砲撃自体が難しい。

まだかまだかと待っていると、開始時刻になってしまった。

遅刻かよ。ふざけんなよ。

「サーセーン」

「遅れました~」

間延びした、チャラそうな声が聞こえてきた。

見ると、どう見てもチャラいやべぇやつがいた。

そして片方のやつがこちらに来た。

「照準手を務めさせていただきます~。」

敬語が意味をなしてねぇよ。

隊長殿に目を向けると、隊長殿も困ったような顔をした。

「…まぁ頼む。」

「は~い」

これ以上話したくない。もう嫌だ。

そう思い、前を向く。

といっても敵機がいるわけでもない。とりあえず。前を向いているだけだ。

と、俺の横で堂々とスマホを取り出し、遊び始めたやつがいた。

こいつ…何やってやがる。ここはいつ支援が来るかわからない場所だぞ。

俺が何やってんだという目を向けると、

「あ、やりたいっすか?すいません。もう少し待ってもらえますか。今いいところなんで。」

やべぇ、頭痛くなってきた。

終わってやがるこいつ。

楽しそうにゲームをするこいつを横目に、俺は要請を待つ。

ピーピーピー。

そう三回機械音が鳴った。

通信しろという意味だ。

新しく入った通信兵はチッと舌打ちしてめんどくさそうにスマホをやめ、通信を開始する。

「あーはいはいはい。はい。了解でーす。」

イラっと来てしまう。その伝令一つで人が死ぬか生きるかが変わるかもしれないのに。

「伝れーい。今から送られる座標に砲撃とのことでーす。じゃ、ヨロです。」

こいつはそういうと仕事は終わりといわんばかりにスマホを開始する。

もう気にすんな。

「照準手。照準開始。」

「あーちょっと待ってくれますか。今いいところなんす。」

は?なんつったこいつ。

「ちょっとやっといてもらえますか。」

そういってそいつは椅子から退いた。

は?

まじかこいつ。

だが、ここで突っかかっていれば前線の兵士が死んでしまう。

こいつを無視し、すぐさま照準を開始する。

送られてきた座標を確認する。

国境の近く。第一防衛地区A-3と呼ばれているところだ。

急いで照準気なんかを使って必死になれない大幅な照準を開始する。

微調整しかしなかった俺には相当な負担だ。

とにかく急いで照準をつける。

大まかにつければ、あとはいつも通りの微調整だ。

よしここだ。

だが、少し間違えば、味方の命を奪うと考えてしまいなかなか撃てなかった。

しかし、覚悟を決める。

発射のボタンを押す。

途端に俺らの砲が火を噴く。

そしてすぐさまいつもの敵への被害を確認する。

今回は特に俺が照準をミスっていないかの確認もある。

運よく、ミスをしていなかったらしい。

しっかり命中していた。

「ふぅ」

俺は一息はいた。

だがすぐに気を入れなおす。

「おい、お前。」

「?なんすか。」

「なんすかじゃない。お前なぁ。一体全体どういうつもりだ。」

怒鳴るな。怒りを抑えろ。静かに冷淡に起これ。

「お前がやったことがどういうことかわかってんのか。」

「お前がやっていればもっと早く照準が終わり、もっと早く前線の味方に支援ができたかもしれない。」

「もしかしたらその短い間に誰か死んでいたかもしれない。」

「わかるか。お前は、私欲のために助けられた命を見殺しにしたんだぞ。」

いつ振りか。こうやって怒ったのは。

「そんなこと言われもっすよ。いいじゃないですか。支援はもうできたんですし。」

あぁ?こいつ反省しねぇのか。

「それにそいつらが死んだところで俺には関係ないじゃないですかぁ。」

「おいおいおい。てめぇなんつった。」

抑えろ抑えろ。怒るな。

「関係ねぇだぁ?俺らがどんな仕事をするか知ってんのか。」

俺の抑制もむなしく、止まらない。

「俺らの仕事は人殺しだ。それと同時に人助けだ。」

「味方を助け、敵を殺す。」

「もう過ぎたころじゃないっすか。そんなこと引きずっちゃダメっすよ。」

気づけば俺はそいつに殴りかかっていた。

声も出さず。

無言で。

頬に一発。久しぶりに人を殴った。

そいつはよろけて、倒れかける。

そんな奴にもう一発。

完全に倒れ、顔が恐怖で支配されていた。

俺はそんな奴の腹を思いきり踏みつけた。

グフみたいな声が聞こえた気がする気がするが、どうでもいいだろう。

そして思いきり、顎を蹴る。

そいつは失神した。

失神したそいつにもう一発加えようとしたところで、

「やめろ。これ以上はお前が悪者になるぞ。」

「関係ないですよ。」

「軍に来る前から殺人犯です。」

そう吐き捨てる。

とっくに何人か殺した。生きるために。

「違う。これ以上罪を犯すな。」

何が違う。何も違わない。

「お前は今、私欲、ではないか。とにかく、自分のためにそいつを殴った。それではそいつと同じだ。」

そいつと同じになるな。そういった。

ふぅ。

「すいません。ちょっと血が上ったみたいです。」

そういって俺は席に座った。

それ以上隊長殿も誰も何も言わなかった。

時間が終わる少し前に陽向が来たが、すぐさま管理室を出て班の部屋に向かった。

そして今更思い出したように手に痛みが走った。

久しぶりに人を殴ると手が痛くなるらしい。

まぁいいだろう。

気にせずベットに入り、寝た。




4日目 過去




いつからかもわからない。

だが、物心がついて少ししたらここにいた。

薄暗くしっかりとした建物はない。

いわゆるスラムだ。

わかるのは殺らなきゃ殺られるということ。

それだけ。

少し顔を上げる。

周りに目を配る。

足音。左。そこまで距離はない。

俺は寄りかかっていたビルの陰に隠れる。

さぁこい。足音からしてちゃんとした靴を履いている。

ここら辺のやつじゃない。金を持っている奴らだ。

足音が少しずつ近づいてくる。

手にあるナイフを握る力をもっと入れる。

陰に隠れ、通りをずっと見つめる。

音的にもう少し。

足に力を込める。

来た。スーツに身を包み、鞄を持っている。

企業だ。

ここは改修をすればそこそこちゃんとした街になるだろう。

そうすれば金のにおいがするんだろう。

時折こいつらがやってくる。

いいカモだ。

三人ほどで周りを見渡しながら歩いている。

俺の目の前を通過したとき、俺はゆっくりと足音を消しながら近づく。

真ん中の男の後ろにつく。

ナイフを振り上げ、背中を…。


「んはッ」

はぁはぁ。

息が荒い。

首を手で触る。

すると汗と、早い鼓動が感じれた。

俺は一度深呼吸をし、落ち着きを取り戻す。

ふぅ。落ち着け。焦っても意味はない。

なんで、昔のことを思い出さなければならない。

ここにいるということがここまで安心できるとは。

そうだ俺は、人殺しだ。

そして死体をあさり、金品を奪い、生きた許されることなき人間だ。

だからなんだ。必死に生きた証だ。

俺の死ぬ気で生きた人生を他人の主観ではかるな。

あぁ俺は誰にこんなこと言ってんだ。

自分を欺いているようじゃないか。

もうこんなことを考えるのは嫌だ。

俺はまたベッドに横になり、目をつぶり眠れない俺は無理やり寝付かせた。




5日目 終わりと始まり




管理室の扉を開ける。

そこには陽向たちの班がいた。

俺は自前のコーヒーを入れたカップを持って椅子に座る。

こんな戦争中でコーヒーが飲めるなんていい身分になったもんだ。

「やぁやぁ。元気かね。」

いつものような声が聞こえてきた。

「まぁな。」

俺もいつも通り答える。

「何か思い出したみたいな顔だね。」

…こいつはたまに勘がいい。

「まぁな。少し昔を思い出したもんだ。」

「へぇ。君の過去。聞いてみたいなぁ。」

聞いても面白いもんじゃないが。

ただの人殺しの青年の死ぬ気で生きた話だ。

「嫌だな。俺は話したくない。」

「話してほしいなんて言った記憶はないけどなぁ。まぁいいや。」

あぁそうか。俺としたことが。

それきり、特に話しかけてこなかった。

気を使ったのかな。

「まぁいつか、お前に話すよ。俺の過去は。」

「おっ。本当?珍しいね。じゃぁそうだねぇ。いつか聞かせておくれよ。」

そういって陽向は笑った。

なので珍しく俺も笑い返した。


多少陽向と話してから、陽向は部屋を出て行って、俺らの班が来た。

といっても、俺と隊長殿だけだ。

あいつらは来ない。

なぜかは知らないが。

とにかく今日は照準手も、通信兵もいない。

だが、まぁ何とかなるだろう。

俺は支援の要請があるまで待つ。

今日はないといいなぁ。

その思いにこたえたのか、ピーピーピーとなった。

隊長殿が応答した。

「はい。…ッはい。了解しました。」

「おい玲。敵の航空艦隊が接近中だ。」

「は?」

ん?なんて言った?

航空艦隊?あの?

空飛ぶ「戦艦」が?

俺の疑問に答えるように放送が鳴る。

『要塞にいるすべての兵士に告ぐ。敵の主力航空艦隊が接近。各員、持ち場に急行せよ。敵の航空艦隊は、空飛ぶ戦艦である。我々は戦艦を撃墜する。繰り返す。敵の………』

おいおいおい。冗談じゃねぇぞ。

大砲が空飛ぶ艦隊を落とすなんて正気の沙汰じゃねぇ。

「おい玲。もうすぐもう片方の班がこちらに来る。そちらと連携してやるぞ。」

「…はい。」

クソッどうしてこんなことに!

「空軍も来るとのことだ。空軍の攻撃で破壊できなければ俺らの番だ。」

空軍か。頼むぜ。

航空艦隊は空飛ぶ戦艦が艦隊のように飛んでくるのだ。

搭載された主砲や、ミサイルなんかを地上に向かって打ち、あくまで地上支援用に作られた兵器だ。

だが実際は要塞を破壊し、その強固な装甲を駆使し対空ミサイルなんかをものともせず、軍事工場地帯や、敵の首都なんかを空から破壊するとかいうただの化け物だ。

もちろん、維持費も化け物であり、これを使えるのは大国だけだ。

で、俺らの敵はその大国に入っているというわけだ。

「玲、頼むよ。」

気づけば隣に陽向がいた。

照準手らしい。

「照準は頼む。射撃は俺がやる。お前のところの射撃手は。」

「ほかのところの応援だ。手が足りないらしい。」

俺は被害報告用の望遠鏡をのぞく。

まだ見えないらしい。

隊長は空軍との通信をスピーカーにしてくれたらしい。

声が聞こえてきた。

『こちら、遠方支援型巡洋機。敵を補足した。攻撃を開始する。』

『こちら、第3航空隊1,2,3,4分隊。局所破壊を狙う。』

目まぐるしく、空軍が動き出す。

もちろん俺が聞いた無線以外にも無線はあったんだろう。

そして、さっきの遠方支援型巡洋機の攻撃だろうか。

ドンという大砲のような音と、ズダダダダダダという機関砲の速射のような音が聞こえてきた。

『こちら第1分隊。敵との距離約800m。高出力レーザー砲準備完了。』

『こちら第2,3,4分隊。第1分隊に同じく。』

『照準完了。3,2,1,撃て』

そしてすぐさま、ピュンというふうなレーザー砲の音が聞こえる。

『敵のミサイルが発射された。回避用意。』

レーザー砲が当たったのか、少し爆発するような音が鳴った。

『なんだこのミサイル!並のもじゃねぇ!』

『3号機、無線で私語をするな。』

小型の誘導ミサイルだろう。

この戦艦には搭載されているらしい。

『クソ!死にた…』

そんな声が聞こえて爆発音がした。

『2号機!お…』

また爆発音。

『クソがぁぁぁぁぁ!』

そしてまた爆発音。

「空軍戦闘機全滅。ガンシップも同じだ。」

隊長殿が苦い顔でそう言う。

「あの量で…」

陽向の言う通り今回の空軍の戦力は主力有人航空隊だ。

それも第3航空隊は最精鋭の集まりだ。

「急げ。そろそろ俺らの射程に入る。運のいいことに相手よりも射程が長い。この有利を無駄にするな。」

「はい。」

陽向が照準をつけ始める。

そしてようやく俺も敵の戦艦が見えた。

アメフトのボールのような形の船体に艦橋があり、主砲が三連装砲で6基18門。

それが5艦。

火力でいえばあちらのほうが強い。

艦隊の陣形は凸のような形だった。

後ろに3艦、前に2艦。

厳しい戦いだ。

だが、ようやく俺らの主砲が動き出した。

ようやく争点が終わった700ミリ砲様だ。

その砲はゆっくりと旋回をはじめ、やがて止まった。

700ミリ砲の自動照準が終わったらしい。

そして、その直後その大口径から砲弾が発射された。

耳栓をしていてもドォンという音が耳の中で響く。

そしてちょうど、

「よし射程に入った。目標一番右の艦。射撃開始!」

俺はもうすでに照準をつけ終わっている砲の最終調整をし、発射ボタンを押す。

ドォンという音が耳の中をまた響く。

そして望遠鏡を覗く。

700ミリ砲はさすが自動照準システムだ。

寸分狂わず敵艦の中心を貫いていた。

敵艦はきれいに半分に切断され、別れた。

地面に一気に落ちる。

そして俺の撃った砲弾は…命中した。

他の砲はそこそこ外しており、当たっているのは俺らのを合わせて3発だった。

陽向は相当腕がいいらしい。

いつもどこかふわっとした感じからは予想できない。

「敵艦の砲塔を一門破壊。」

それも俺らの砲弾でだ。

「陽向すごいな。」

「ありがとうねぇ。」

いつも通りかえしてもらった。

そして装填が終わった。

そして陽向の照準が始まる。

陽向は正確なだけではなく、速さもある。

優秀だなぁ。

さっきと同じ艦を狙う。

少し調整し、射撃ボタンを押した。

またドォンという音が鳴る。

そしてすぐ望遠鏡を見る。

それと同時に敵の砲口から火が出た。

「伏せろ!」

誰が言ったかもわからないが、俺は急いで伏せた。

すぐさま爆発音が聞こえ、風がガラスをたたいた。

俺は体を起こすと、被害状況を見る。

危ない。

管理室を狙ったらしい。ギリギリ当たっていなかった。

それでも、700ミリ砲に被害が言っているようだった。

この程度で壊れるほどやわな砲じゃないが、それでも無視できない被害だ。

爆発の跡が相当大きい。

だが、こんなことを考えている暇はない。

急いで700ミリ砲を撃つまでの時間を稼がなければならない。

もう装填は終わっており、陽向が照準もつけていた。

俺は調整をせずにすぐに発射した。

望遠鏡を覗き、当たっているか確認する。

陽向の腕はやはりすごい。

見事に命中していた。

「最終調整はしておくれ。艦橋を狙うからね。」

「すまん。焦ってしまった。」

次はちゃんとしよう。

自動装填機構のおかげか、もうすでに終わっていた。

陽向は照準を開始し、すぐさま終わらせた。

そして俺は、艦橋に狙いをつける。

狙いをつけ終わり、すぐさま発射する。

望遠鏡を覗けば、艦橋に砲弾が命中していた。

隊長殿の配慮か、徹甲弾になっていたらしく艦橋の装甲を貫通し、指揮系統にダメージを与えた。

いままでの爆発による少しずつのダメージだろうか、その艦は少しずつ高度を落とした。

「よくやった。次はその左だ。」

陽向はすぐさま照準をつけ始めた。

他の砲はどんどん射撃していて、着実と攻撃を当てていた。

「敵艦が砲弾を撃った!早く伏せろ!」

すぐ伏せる。

うれしいことだが、予想以上に装填が遅い。

軽量化のために自動装填機構をなくしたんだろうか。

あと、空の上だと照準をつけるのが難しいのだろうか。

ドォンという音…だけじゃなかった。

バリンというガラスが割れる音に、前にも聞いた、鉄筋コンクリートが壊れる音。

俺は頭を上げてすぐさま被害を確認する。

嘘だろ…。

隣の管理室が完全に崩壊していた。

室内にガラスの破片やコンクリートがなだれ込み、血が見える。

「早く撃て!」

隊長殿がそう叫ぶ。

急いで陽向は照準を再開する。

終わった瞬間に俺は調整を始める。

今回も徹甲弾だ。

確実に当てる。

外しはしない。

俺は発射した。

望遠鏡を覗き、確認した。

艦橋に命中しその艦は少し傾き、少し遅くなった。

それでもまだ動いていた。

陽向が照準をし始めたとき、艦橋が突如爆発した。

他の砲の榴弾が命中したのだ。

艦橋を吹き飛ばし、少しずつ高度を下げた。

これで3艦落としたことになる。

そして、ようやく俺らの700ミリ砲が装填終了した。

ゆっくりと動き出し、

相手の砲弾をものともせず、その巨砲は変わりなく動いた。

照準が終わり、その大口径の砲弾を空へ撃ちだした。

ドォンという音が鳴り響き、砲弾は弧を描きながら戦艦に向かって飛んで行った。

寸分狂わず砲弾は命中し、最初に落ちた戦艦と同じ道をたどった。

あと1艦である。

だが、あの時と同じ胸騒ぎがした。

その胸騒ぎが消えるように祈り、砲弾を撃ちだす。

だが、やはり当たってしまった。

相手の艦が機関砲を撃ちだした。

それもこの管理室を狙って。

俺は一瞬だけ伏せるの遅くなった。

それだけがわかった。




5.5日目




「れ……………した。」

「玲………昔話は…した。」

「返事してよ。なぁ玲。」

俺はゆっくりと目を開ける。青空が見えた。

背中には冷たいざらざらとした感触がした。

「あぁ起きた。よかった。」

「陽向?どうしたんだ。」

何でいるんだっけ。

俺は周りに目を配る。

そうだ。俺は管理室にいつも通り。

ん?なんでガラスが割れている?

なんで壁に弾痕が?

…………!

「おい!戦艦は…」

思い出したぞ。あいつらを落とさなきゃ…

「全部墜ちたよ。試作段階レベルを実践で使うなんて無茶だったんだよ。」

「そうか。」

なんか急に眠気が。それと肩にとおなかがなんだか焼けるようにいたく感じ………




6日目




「んっ」

俺は体を起こした。

ここは?

見慣れない天井に見慣れない壁。

白い。

漫画とかから推測するにここは病室だ。

横を見ると血液を送るあの棒みたいな装置があった。

名前は知らね。

やはりここは病室だろう。

そして反対を見ると、陽向がいた。

眠りこけてる。

どこをけがしてここにいるんだ。

肩と腹に包帯が巻いてあった。

俺は記憶を思い返す。

航空艦隊と戦って…

ああそうか。

あの時伏せおくれたから。

だけど生きてる。

痛いけど。

「玲、よく起きたねぇ。傷は大丈夫?」

「陽向か。大丈夫だ。」

「いやぁ生きていてよかったよ。昔話が聞けないからねぇ。」

そんなこと覚えていたか。

「まぁあとで昔話はしてやる。」

「その前にあれからどうなった…?」

いろいろ説明してくれた。

どうも、

あれから莫大な予算をかけて作った航空艦隊を落とされたことで割に合わないってことになったらしく、敵は降伏したらしい。

結局、俺らの国は賠償金をもらい、戦勝国になったらしい。

つまり終戦である。

「そうか。じゃぁ話そうか。俺の昔話を。といっても面白いもんじゃないぞ。」

「面白くなくてもいいよ。ただ知りたいだけだからね。」

そういって笑いあい、それから誇張ありの昔話を話し始めた。

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