EIGHT GAME
三人が試合へと進んでくと、選択画面が映る。武器が並んでおり、他には速度アップ、攻撃アップ、防御アップの三つがあった
「えっと、何すればいい?」
「ここはつまり……いや、真央に任せる」
「え、私に?」
「礼途だよ!……あ」
この一瞬にして、真央と礼途の本名が、こうも簡単にバレてしまう
「あ、そういうこと!ごめん、やばい、聞かれてたよね?えっと、これは違うくて……」
「よし、紛らわしい名前にするから悪い。礼途、お前が戦犯だ」
「俺か?俺の本名くらい真央に比べれば大した事ないが、真央の本名はまずい……こうなれば、みかんを消すしかない」
「だ、大丈夫だよ!人には言わないし。それに、アメンボっちとも三年の付き合いだし、信頼してほしい!なんて」
「いや、完全に俺が悪い。まさか、この俺がミスをするなんてな」
「いや、私が悪いよ。言ったのは私だし」
「俺の名を言ったのは明里だ」
「よし、この話はここまでだ!それより、選択画面が終わる!」
残り十秒と表示されていた。明里は真央の横から慌てて操作をし、選択を終えた。武器は遠距離にまで届くライフル二種と、近距離までしか届かないショットガン二種があった。明里が選んだのは『ショットガンB』と『ライフルA』の二つ。加えて能力は攻撃アップを選んでいた
「えっと、礼途はなんて呼べばいい?」
「チュロスと呼んでくれ。真桜」
なんか可愛い
「チュロス……呼びにく。お前、明らかにチュロスって男じゃないよな?」
「黙れアメンボ。というか、お前アメンボみたいに静かじゃないだろ。そういうことだ」
「私は大人しいだろ?なあ、真桜?」
「えっと、それはない」
試合が始まろうとしていた。広いフィールドであり、三人チーム、合計三十人が円形のフィールドで戦う
「ちなみに、ふつうに敵は強いから気をつけろよ?」
その言葉で明里も気がついた
「そうだ、そう。ゲームってのは基本、同じレベル同士で試合が組まれるわけで、初心者と上級者が組んだ場合は、上級者のレベルに合わせられる。礼途の普段戦ってる敵の強さになるから、相手はかなり強いはずだ」
「みかん、真桜、俺の指示で動いてくれ」
「おけおけ!チュロスくんに任せるよ!」
「わかったけど、私ほんとに何も分かんないよ?というか、これが初めてだよ?」
「何も問題はない。このゲームはステージが円形であり、プレイヤーは全員端に配置される。そこから中央へ向かっていき、敵を多く倒すか、最後まで生き残るかの二つが勝利条件。回復アイテムは、マップに散らばる赤い箱を開くと出てくる」
「なんとなく、分かったけど、二チーム勝者がいるの?」
「そうなる」
礼途は前へと進んでいく
「試合ごとにステージが変わるんだが、今回の森のステージは木が多い。つまり隠れられる場所が多いから、他よりも警戒する必要がある」
「真桜ちゃん、大丈夫だからね!私が全員倒すから!」
「倒すってことは、倒した数で勝利するってことですか?」
「それは……礼途くんに訊いて」
「今回は正面からやり合って勝てるメンバーじゃない。なるべく避けつつ行く。生き残りで勝利を目指すなら、最後まで敵に見つからないようにし、回復を多く温存しておくのが大切だ。回復が多ければ、最後の勝負に勝ちやすい」
「最後の勝負?」
「つまり、俺らは相手が最後の一チームになるまで生き残るわけだ。その残ったチームに勝たないと、生き残れないだろ?」
「分かった。でも、ずっと隠れてて面白いの?その、ゲームとして」
「見てれば分かる。隠れるにもすることは多いからな」
みかんのアバターは長い橙の髪をしており、名の通りだった。少し進むと、礼途は立ち止まった
「どうしたの?」
「敵を見つけた。せーので赤髪を撃つ」
「合わせるよ!」
合わせる?
分かんないけど、とりあえず赤髪を撃てばいいの?
「せーの」
三人は一斉にライフルを放つ。みかんはアサルトA、礼途はアサルトBを持っており、BはAよりも連射が遅いが、ダメージは大きい遠距離向けの銃となってる。真央も撃つが、一撃も当たっていない。敵は箱を置いた
「当てれなかった」
「大丈夫、240与えたから、相手はそのまま引いていく。こうやって攻められない為に先に攻めるってのも、一つの戦術だ」
「攻撃は最大の防御ってことだ」
「なんか、すごいね」
少し面白いかも
「よし、早く中央に行くぞ」
HPは体力アップをつけていなければ、300。つけていれば1.1倍の330になる
「さっきのやつが撃ってくる可能性もあるから、なるべく木や地形で身体を隠しながら進むのがベストだ」
続けて礼途は話す
「マップは端のほうから崩壊していく。だから余裕をもって中央に向かうのが強いとされてるが、そこまで急ぐ必要もない」
「崩壊って、そんな物騒な」
マップ端は次々に壊れていく。三人がしばらく歩くと、真央が赤い箱を見つけた
「あれって回復のやつ?」
「ようやく見つけたか」
「ようやく?」
みかんが説明する
「実は、もう何個かあったんだよね。でも、最初は気が付かなくて当たり前だよ。だって、操作とか敵とかでやること多いもん」
「そうなんですね。精進します」
「てかタメでいいよ。アメンボっちと三つしか年変わらないし、たぶん同い年でしょ?」
「はい」
「というか、ゲームに敬語なんて不要だ。そんなですます言ってる暇があったら、状況報告をすべきだ」
「礼途の話すことも間違ってはないが、大会とかの話だな。カジュアルな場では使ってるやつのほうが多い」