TWO GAME
真央は椅子へと座り、その画面を前にする。全くの素人であり、過去にキーボードマウスを触ったのは学校の授業くらいだった
「よし、まずはKBMを持て!」
「……なにそれ?」
「キーボードマウス」
言わないだろ!そんなこと言わないだろ!
明里がゲーム好きなのは知ってたけど、かなりやり込んでそうな貫禄がある……。
「このゲームって長いの?何面まであるの?」
「終わりなき対人ゲーム」
「はえ?終わりなき?」
真央は耳を疑った。ゲームというのは、ボスを倒して終わる、そんなものだと思っていたからだ
「ちなみにこれは、レアアバターな」
「アバター?なんか知らない言葉ばっかり使うけど、ほんとに明里と同一人物?」
「アバターは自分の使うキャラクターのこと。私はいつもの明里だぜ!」
明里は真央の横から、マウスとキーボードを操作していた。そしてロード画面が映ると、明里はキーボードマウスから手を離した
「とりあえず、練習モードをやろう。簡単なチュートリアルをするだけだから、簡単に熟せるぜ!」
「簡単簡単連呼するな!」
真央が画面を見ると、キャラクターの背中が映る。レアアバターと言う割には装飾も地味であり、黒い帽子を被った、ただの女だった
「これ、レアなの?」
「四年前にリリースしたゲームで、そのときに配布されたやつ。当時は人気のゲームじゃなかったから、これを持ってる人は少ないぜ」
「へえ……それで、これどうするの?」
アバターは全く動かない
「あれ?コントローラーとか使うんじゃないの?ほら、キャラクター動かすやつ」
「キーマウ勢はキャラコンが難いんだよ!ちなみに、Tキーで前行けるから」
「キーってなに?リモコンのTボタンを押せばいいの?」
真央はパソコンを知らないのか?
キーくらい使わない人でも知ってるもんじゃないのか?
「キーボードの!だ」
真央はTボタンを探していた。明里はTキーの上に指を置く
「ここね。これ命より大切なやつ」
「命って、命よりって、命……」
もういちいち反応するのも疲れた
真央が人差し指でTキーを押すと、キャラクターが前へと歩いていく
「おっ、歩いた」
「次はTを押しながらDキー!ちなみに、Tは中指で押すこと。でないと、Dが小指で押しにくい!」
DはTの左下にあり、真央は中指でTを押しながら、薬指でDを押した。すると、キャラクターは前へと走っていく
「え!なに?早い!なに?どうなってるの?どうすればいいの?」
壁にぶつかりなら、ずっと前へ走っていた
「よし、とりあえず移動キーを教える」
「移動キー?」
「前後左右に動くキーのこと。ちなみに、左と後ろを同時押しすれば左後ろに行くし、前と右を同時に押したら右前に行く」
「前と後ろを同時に押したら?」
「動かない」
その後、移動キーの説明をした
「移動キーに慣れることは、とても大切だ。すぐに後ろに行けなかったらデッドだ」
「デッドって死ぬって……って、人死ぬの??」
「別に血は出ないから大丈夫!」
人を殺すゲームって楽しいの?
というか、ふつうに人が可哀想な気もする
真央は慣れなくも、Rキーの左はすぐ押せるよう指を置いていた。走るDキーも少し迷うが、早く押せるようになってた。真央は既に十分ほどキャラクターを動かしており、少し慣れてきたからか、あることに気がついた
「ね、待って。右キーが数字の4って、押しにくすぎる!てか、後ろキーもEで覚えにくいし、このゲーム初心者に優しくない!」
「私がやった設定だけどな」
「え?」
「自分で、好きに設定できるから、人の配置……つまりキーの割り当ては使いにくい!ってなるんだよな。ちなみに、前進キー以外の移動キーは、左右どっちかにまとめて配置したほうがいい」
「後ろと左右の三つ?」
「イエス。人差し指は別のことに使うから、移動キーを押してる暇はない!!とはいえ、私の配置だから、真央も自分ですることがあったら、自分の気に入る配置にした方がいい」
自分の気に入るね
よく分かんないから、明里の配置でいいや
「真央!こっからは敵が出てくるから、頑張れ!よし、PvBだ!」
「え、なにそれ?」
「プレイヤーVSボット。いや、たぶん言ってるの私だけだけどな。よし、今のは忘れろ」
「うん、忘れとく」