貴重な出会い
雪が散りつく今日…
『緊張…する』
少し集合時間より早く着いてしまった私は手を温めながらみんなを待つ。
『美優さん!お待たせ!』
少し遅れて雫君がやってきた。
『寒いね〜』
まだ少し気まずい私は千尋に早くきてほしくて少しの会話で時間を稼ごうとした。
『美優〜!雫君〜!お待たせ〜!!』
千尋が遅れてきた。会場に入れる時間になっていたのでさっそく向かった。
『広っ。』
私がポロッとそう言うと2人も頷いた。列がすごく長い。私の推しもかなり列を作っていた。
『じゃあ私はあっちだから。』
3人とも推しがバラバラだったため、向かう列も違った。
『やばい、もうすぐなんだけど。』
1人で喋りながら昨日何を話そうか考えてたことを思い出す。
『何話そう。かわいいですね…いやいや。ダンスが上手いですね…?』
どうしよう。緊張して焦る。そんなことをしてる間に順番が来てしまった。
『わ〜!!初めまして〜!』
にこやかに笑う推しを見て、今日は命日かもしれない。私はそう思った。
『初めまして…あの、ずっと好きで。お見立て会も見に行って…すごくかわいくて憧れです…!』
言葉を詰まらせながらも言う私を見て、目を見て頷いてくれた推し。
『ありがとう〜!!また!会いに来てね!』
お時間です。そう言われて、私はすぐに手を離したが、そのあとは手を振りながらその場を後にした。
『美優〜!!』
いつもよりにやにやしている千尋を見て、私もきっと同じ顔だと思いながら千尋の方に走る。
『雫君は?』
私が聞くと千尋は指を指して
『あそこ!下向いて一生懸命話すこと考えてるよ!』
雫君でもあんなに下を向くことがあるんだ。普段はもっと活動的でニコニコしてるのに。
『あ、終わったみたい。』
千尋がそう言った。雫君がこっちに戻ってきた。
『あれ…雫君。涙目かも。』
千尋の耳元でそう言った。