幸甚の至り
『ちーちゃん。あの人のこと好き?』
千尋は首を横に振った。
『でも、連絡先なんて交換して、何するの?』
私は疑いが止まらず勢いで質問してしまった…。それでも千尋は
『だって美優ちゃん、絶対交換したくなかったでしょ?私が雫君に好意を寄せるとかはない』
アイドルしか見てないよ、そう言ってる気がした。私の勘だけど。優しさなのだろうか。なんとも言えず帰宅した。
『雫君ね…。』
彼は私のアイドルが好きな男の偏見をぶち壊してきた。鼻筋も通って、綺麗なフェイスライン。あれがアイドル好きとは信じられなかったが、彼の言っていたことは芯が通っていた。
『アイドルは全てにおいて輝かしい…。みんなもそう思うでしょ?』
『そりゃそうなんよ。照明もあるだろうけど、雰囲気も、まず顔がいいから全部良くなる。』
彼はこう言っていた。私はアイドルは素敵だと改めて思わされた。
翌日…
授業終わりの下校中…
スマホが鳴いた。千尋からだ。
『やばい!美優ちゃん!雫君が握手会のチケット取ったって!!人数分!!』
私の思考回路は停止した。この間会ったばっかなのに。私はすぐに切り替えて美優に返信した。
『雫君に連絡して!前会った喫茶店17時集合!』
千尋は嬉しそうにLINEスタンプで了解っと送ってきた。
時間通りに着いた私は先に着いていた雫君に挨拶をした。
『ほんとごめん!!こんな凄いことまで、してもらって…』
謝っている時に千尋が着いた。
『遅れた〜…ってなんで謝ってるん?』
雫君が説明をして、笑っていた。
『楽しみだね。』
全員があの空間でそう思った。
『美優さん、千尋さん、僕にアイドルの話を聞きにきてくれてありがとう』
雫君の口から出た言葉は全て加工されたかのようにかっこよく聞こえる。
一生懸命私たちは首を横に振って全然!と明るく振る舞った。
『じゃあ、また冬休みの握手会で。』
そう言い、私達は解散した。