移り気
千尋はなにかを察したかのように、
『アイドルの価値にでも悩んでんの?』
と聞かれ私は唖然とした。さすがだよ、と思った私はすぐさま質問攻めをした。
『そろそろ、閉店のお時間です…』
そんなに盛り上がっていたのか、気まずそうに店員さんが言いにきた。
『すいません!すぐ出ます!!!』
私と千尋はすぐに店を出た。
『じゃ、なんかあったら私に連絡していいよ。楽しかったから。』
と私に言い、曲がり角で別れを告げた。
家に帰ってすぐ湯に浸かりに行った。
ここは少しの間ゆったりしながら考えられる、私の最高の場所である。今日出てきた話のまとめをしようとシャンプーをしながら考える。千尋は
『アイドルはあの人が輝いているから憧れになるって人もいる、だから憧れの元になってる人、つまり憧れの憧れに辿り着けばその人は光源なのでは?』
と、本気なのかわからない考えだが、なぜだか納得できてしまう。じゃあなんで私達はこんなに幸せなのか。そう問いかけるとそれは知らんと言わんばかりの顔で千尋はこっちを見た。千尋はまだまだ話した。
『アイドル好きの彼に話を聞くのはどう?隣町の高校の……』この話は今はいい。私は我に返ったかのよう、シャンプーといっしょにこの話を流した。
『ブー…ブー…』私のスマホが鳴いている。ブログかも、と思った私が馬鹿みたい。連絡してもいいと言ったのは彼女のほうじゃないか。通知のバナーを見てスマホを手に取る。
『ねね、明日の放課後空いてない?やっぱり彼に話聞きに行こうよ』
とメッセージがきた。ため息をつきながら私は
『あなたにしか話せない内容なの、気持ちは嬉しいんだけど、他人には話せないかな。』
と返信すると
『じゃあ、"アイドル"について気になったままでいいんだ』
まるで私が断るのを知っていたかのように食い気味に送ってきた。
彼がどんな人かにもよるんだけどな…アイドル好きの男の偏見がかなり強かった私は少し抵抗があったが、ここまで必死に考えてくれてるならと思い
『わかった、会いに行こう。』
と返信した。




