表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

1 苺摘みに行こう

挿絵(By みてみん)

 

 ――苺摘みに行こう!


 そう(しろ)皇帝(こうてい)が《(くう)(じん)を誘ったのは、誘われたほうにしてみたら大変めずらしい事柄であった。

 ハイエルフ族の少年に初めて会った瞬間、どうしたらいいのか分からないほどの愛しい感情に脳髄まで支配された《空》神は、泣いて嫌がる白の皇帝を無理やりに手籠めにしてしまい、……以降は会うたびに警戒されて、どことなく距離を取られてしまい、ふたりだけで会うことを極力避けられてしまっている。


 ――もう何もしないから、笑った顔を見せてください。


 そう言って、怯えさせないようにそっと手を伸ばしても、白の皇帝はその手を信用してはくれない。それをすると、きまって彼は瞳も表情も怯えた色を浮かべてしまうのだ。


 ――お願いです、怖がらないで……。


 ほかの竜の五神に対しては、そのような態度を見せることはないというのに、どうして自分ばかり。

 いや、それだけのことをあの小さな白き少年にしてしまったのだ。仕方のないことだ、と理解はできる。だが――。


 ――せめて、目が合ってもすぐに顔を背けないでください。

 ――せめて……。


 最初は、どうしたら姿を見せても怯えずにこちらを見てもらえるだろうか、《空》神はそればかりに苦慮し、誰かを介してもなかなか白の皇帝のそばに寄ることが叶わなかった。

 それから白の皇帝にどのような心境の変化が訪れたのかは、分からない。

 けれども、どこか怯えた緊張を孕んだようすに変わりはないが、それでも白の皇帝からゆっくり、ゆっくりと歩み寄ってくれるようになったのだ。


 ――《空》神。


 恐る恐るだけれど、名を呼んでくれるようになった。


 ――せめて、手を取りたい。

 ――せめて、その頬に触れたい。


 そう思って無意識に手を伸ばしてしまうと、びくり、と身体を震わせて、白の皇帝は二歩も三歩も下がって逃げてしまうが、それでもゆっくり、ゆっくりと歩み寄ってくれるようになった。


 ――それから、しばらく。


 白の皇帝自ら《空》神に、「苺摘みに行こう」と誘いをかけてきた。

 声をかけられたとき、《空》神は思わず目を見開いてしまった。

 いったい、どのような心境の変化があって、そのように声をかけてくれたのだろうか……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ