神々の記憶置き場#4
とある神の観測記録
■■■■■■.GBM
【災厄に立ち向かいし記録】
【記憶を再生します】
・東大陸
「クソ! 逃げろ逃げろ! 船がやられた!」
「ああ、港が……どうするんだよ……これじゃあ、どうやって生きていけば良いんだよ……」
「あの化け物共が、全部壊しちまった……工房も、もうおしまいだ……」
「海が汚染されたんだ! 魚も捕れない……」
「化け物共のせいで、何もかもめちゃくちゃだ……」
「もう逃げちまおうぜ!」
「どこに逃げるって言うんだよ。俺達は海に出ることすら出来ねえのに……」
「神様、どうなってるんだよ……もう、おしまいだ……」
「――うおおおお!?」
「おいおい、気をつけろよクロウ!」
「はは! 悪い悪い! シラサギも大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だよ。全く……この年になってから、こんな化け物共が出てくるなんてなぁ」
「全くだ。リ■∇%ス様も困ってるらしい。なら、こりゃ恩返しのチャンスって事だ」
「そうだな! 海からやってくる化け物共を追い返してやれ!」
「おうよ!」
『久々だな。お前たち』
「おっ、コオウじゃん!」
「久しぶり!」
「そっちはどうだ?」
『……若い獣共が何匹も屠られた。昔からの知っていた同類も死んだ。全く、長生きをすると失うものばかりだな』
「全くだ!」
「俺も友達が何人も死んださ!」
「だからって諦める理由にはならねえけどな!」
『お前たちは絶望していないのだな』
「あったり前だろ!」
「リ■∇%ス様だって見守ってくれてんだ!」
「それに、この程度で終わりだなんてちゃんちゃらおかしいぜ!」
「そうそう! クズノの時なんてもっと酷かったぜ!」
「あの時だって同じように、絶望するような奴らばっかりだったよ」
「気付いたらデッケエ港が出来て、今まで以上に発展したんだよな」
「そうそう。それを考えたら、この程度楽勝だろ」
『……フハハ、そういえばそうだったな』
「お、なんかクズノっぽい笑い方」
「やっぱり似てるんだな、お前たち」
「まあ、色々と話もしてたからなぁ」
『止めろ』
「おっと、悪い! んじゃ、もうちょっと頑張るか!」
「こうして頑張ってりゃ、街でビビってる奴らも元気が出るだろうからな!」
『全く、お前たちのような者を英雄というのだろうな』
「そうかぁ?」
「まあ、そう言われるならそうなんだろうな」
「そうだな!」
『では、我も手を貸そうではないか。友よ』
「ああ、ちょっくら希望って奴を与えてやろうじゃねえか!」
【未だ希望は絶えず】
・西大陸
「嘘だろ!? あの化け物の親玉を倒したのに、復活してるじゃねえか!」
「そんな、もう終わったと思ってたのに……」
「戦士たちが死んだ……これ以上は、倒す事は出来ない」
「魔獣討伐ギルドだって、立て直しをしてる最中だっていうのに……」
「魔獣と化け物共が襲ってきたぞ!」
「ギルドまで襲撃されるぞ! 守れ!」
「もうダメだ、おしまいだ……」
「ぼやいてるんじゃねえ! 守らねえと、本当に終わっちまうぞ!」
「くそ! またやられた!」
「ああ、どうすれば……」
「神様……どうすればいいんですか……もう、我々は……」
「――全く予想外ですねぇ。まさか復活するなんて」
「よう、アドバイザー。ここからどうすりゃいいんだ」
「ギルド長さんですか……まあ、私も最悪のパターンは考えてはいましたが……正直、なんとかするには時間も人手も足りませんね」
「そうかい……おう、ウサ公。調子はどうだ」
『無理だよ! もう限界だよ! この前はどんだけ死ぬ思いしたと思ってんだよ!』
「……お前の被害を考えるとむしろ足りないくらいなんだが?」
『それとこれとは別でしょ!』
「いや、別じゃねえよ」
「……それで、どうしますか? 私としては放棄して他の大陸にでも逃げるのがオススメですよ?」
『あー、それも手だねぇ』
「悪いがそれは出来ねえ」
『ちょっと、なんで!?』
「……長いこと、この土地は守ってきた。この場所を捨てて生きていける程、器用じゃねからな。それに、他の土地だってここみたいに化け物共の被害が酷いだろう? なら、どこに行ったって同じだ」
「あら、現状認識はちゃんとしてるんですね」
「どうせ、アドバイザーの姉ちゃんが護衛代わりに使おうって腹なんだろ?」
「ふふ、どうでしょうね?」
『えっ!? そうなの!?』
「……このウサ公引き取ってくれたら、護衛代わりにして逃げていいぞ」
「役に立たなさそうなので要らないです」
『えっ!?』
「まあいいさ。この程度の危険なんて、今まで味わってきたさ。大昔に四体の大魔獣が襲ってきた時……あんときに比べりゃ、何倍もマシだ」
「このギルド設立の話でしたっけ?」
「ああ、住む場所を奪い合って、後は死ぬだけ……そんな俺達を英雄殿が導いてくれた。だから、今回だってなんとかしてやるさ。俺達はあんたのおかげで、ここまでできるようになったって見せるためにな」
「そうですか。まあ、私は立場を保証してくれるならいいんですがね」
「というわけで、もうひと頑張りして貰うぞ? アドバイザー」
「分かりましたよ……じゃ、指示を出してきましょうか。時間を稼ぐ程度なら出来ますからね」
「……さて、どうなるかね」
『ま、なんとかなるんじゃない?』
「ウサ公、お前は気楽でいいな」
『あはは、気楽でいいんだよ。絶望したところで好転するわけじゃないんだからさ』
「ま、それもそうか」
『じゃ、僕ももう一狩りしてくるよ』
「おう。この程度の苦難は乗り越えてやろうじゃねえか」
【未だに苦難に屈せず】
・南大陸
「ああもう! クソ! また腐っちまった! 俺たちが、ずっとずっと住んできた土地が……もう、ダメになっちまった!」
「おい! 食料をくれ! もう飢えて何人も餓死してんだ! 頼む! うちの息子が、もう、限界なんだ! だから……」
「やめてよぉ! 私のお母さんを、腐らせないでよぉ!」
「逃げろ逃げろ! もうここは駄目だ! この土地は捨てるんだ! いつか……いつか、取り返せる! だから、さっさと逃げろ! 死にたいのか!?」
「もうダメだ……! おしまいだ!」
「ああ、山が怒ってる……俺達の土地が……住処が……」
「神様……どうか、どうか助けて……お願い……神様」
「もう、おしまいだ……」
「――全くもって辛気くさいわね」
「なっ、なんだよ!?」
「……蜘蛛の姐さんじゃねえか。どうしてここに」
「宿が壊されちゃったのよね……はぁ、もう結構長い歴史があったけど、持って来れたのは片手に収まる程度の荷物だけ」
「嘘だろ……あんなに立派で色んな人が泊まりに来た宿まで……?」
「もう、俺達の住める場所が……」
「だから、辛気くさいって言ってんのよ」
「な、なんだよ!? だって、おしまいじゃねえか! あの化け物共は俺達の住処を奪われた……土地だって、めちゃくちゃにされて……姐さんだって、そうじゃねえか! あんな歴史のある宿だって奪われて……」
「あら、その程度?」
「その程度って……」
「あの子がこの土地に来た時には、それこそ今よりももっとめちゃくちゃだったわよ? 色んな種族がどうしようもなく巻き込まれて変わっていった。無理矢理に手を繋がされて、そうして最後にはしょうがないって一緒に笑わせられる事になったんだから」
「それって……」
「あの英雄の……」
「どうせ、きっとあの子がやってくれるはずよ。どうしようもなくなったら、笑いながら。何もかもめちゃくちゃにして、そうしてやり直そうって」
「……」
「……」
「私だって宿を再建するつもりよ? あの子がこの大陸に居たときは何度もめちゃくちゃにされたんだから。だから、この程度の苦難なんて笑い飛ばしてやりましょう」
「本当に……?」
「俺達、助かるのかな?」
「ええ。だから信じて頑張りましょう」
【彼らは未来を見る】
・北大陸
「うおっしゃー!」
「まだまだぁ! 女王様が落ち込んでんだ! 元気を出して貰わねえとな!」
「クソ、怪我したじゃねえか! クソ化け物共がよぉ!」
「ははっ! 懐かしいな、この感覚ってのはよぉ!」
『わあい! 楽しいね! 楽しいね!』
「悪い、先に逝く!」
「はは、地獄で待っててくれや!」
「まだまだぁ! 俺達にやってやれないことはねえ!」
「神様! 見ていてくれてますか! もっとやってやりますぜ!」
「セツナ」
「……ごめんなさい、あなた。私が居たのにルトラに気づかなかった。そして、あの子を連れ去られてしまったから……」
「……自分を責めない方が良いよ」
「分かってるわ……でも、どうしても……もっと、出来ることがないか考えてしまうの」
「君の元気がないと、この国の皆が無茶をしちゃうからね……だから、今できることを考えよう」
「……うん」
「じゃあ、僕も仕事に戻るよ。もしも悩んでたらすぐに相談してね」
「ええ、ありがとうね……」
『――セツナ』
「神様……」
『月並みだが、お前は悪くない……巡り合わせの問題だ』
「……慰めてくれてありがとう」
『そして、ルトラだが……覚悟しろと我は言ったな?』
「うん、覚悟してる。あの子が原因で、もしあの化け物が全部を飲み込むような怪物になるのだったら……」
『ああ。恐らくは最悪の想定ではそうなるだろう』
「……」
『だが――訂正しよう』
「えっ?」
『祈られ、頼られ……願われた。我々神々に、救いを求められた。だから……ルトラを救うために、我々も動く事となった』
「……それって」
『お前たちに何もしてやれなかったが……多少はお前に出来る事がありそうだな』
「ほんとう、に?」
『ああ。本当だ。だから、セツナ。お前には大変だろうがあの子が帰る場所を――』
「――神様、ありがとう……もう、私……失わなくて、いいんだ……!」
『ま、まて。泣くな! 泣かれると困る! どうすればいいのか我には分からぬのだ……! だから、泣き止んでくれ……!』
【なら、我々に出来ることは?】
・中央大陸
「ふん、お前たちをこの街に入れるわけにはいかん!」
「……すいません、俺……もう……」
「喋るな……よく頑張った」
「これが無形流だ! 化け物共、掛かってこいや!」
「英雄殿に助けられた命、ここで使ってやろうじゃねえか!」
「ああ、クソ……まだ、俺は……」
「守れ! 戦闘員以外の犠牲者を出すな! ナナシに悲しまれるぞ!」
「クソ、いつになったら終わるんだよ……!」
「……まだ、この戦いは終わらないんですか?」
「分かるわけがねえだろ! だとしても、神は見てくれてるんだ! なら、誇れる様に頑張ろうじゃねえか!」
「――我々のやることは、可能な限り時間を作る事です」
「吸血族の巫女よ。それは本当に意味があるのか? あの怪物の親玉を倒せるわけでもない。それでも、その少女を守って時間を作る意味があると?」
「あります」
「……言い切るのか。その理由は?」
「ナナシが来ますから」
「……それは本当か?」
「神々に私はナナシを探して……呼んでもらえるように頼みました。その際に神々は、出来る限りをしてくれると約束してくれましたから」
「だが、ナナシは……数年前から見つかっていない。本当に可能なのか?」
「分かりません。それでも、彼ならきっときてくれると思うんです」
「……ふはは」
「どうしました?」
「いや、なに……私も根拠なく、そう思ってしまってな……きっと、彼ならきてくれると。ナナシなら……この絶望的な状況をなんとかしてくれると思ってな」
「……ふふ、お互いに……あの人には困らせられましたね」
「ああ。そうだな……それに、あの人が犠牲にしたと知ったら……我々に幻滅するだろうな」
「ええ……そんなのは嫌ですからね」
「お互いに憧れた人間が彼だと苦労をするものだな」
「全くです」
「……では、志願者を募るとしよう。まあ、彼が来るまでの時間稼ぎだと言ったら……枠が足りないくらいだろうが」
「ですが、可能な限りは生きて帰れるような人を選びましょう。犠牲は少ない方が良いですから」
「分かっているさ。さて、最後の頑張りになるだろう。気合いを入れていくぞ!」
【それは、祈りに応えることだ】
・???
「――行かなきゃ」
『行くのか? 君は――』
「呼んでるからね……だから、行かなきゃダメなんだよ」
『……なら、最後まで付き合おう』
「うん、よろしくね。リドル」
【――これが、神々が君たちに出来る事だ】
【幸運を祈る】
【災厄に立ち向かいし記録】
【記憶を終了します】




