共犯者
『パリス ホーメルとマリアの長男 18歳
体力 12
魔力 0
器用さ 8
素早さ 3
スキル:金細工』
パリスお兄ちゃんの前に浮かんだ画面にはこう書いてあった。
魔力ゼロって事は魔法を使えないってことなんだよね?
でもスキルが金細工って、パリスお兄ちゃんが選んだ職業って自分のスキルにマッチした職業だったってこと?
凄い!
あ、いや、金細工師に弟子入りしたから生えたスキルとか?
これは他の家族にもステータスオープンを試してみないと何とも言えない。
「おいおい!これは何だ?」
パリスお兄ちゃんが立ち上がり、ダラスお兄ちゃんに詰め寄っている。
今、私はパリスお兄ちゃんが座らされていた木製の長椅子の上だ。
「僕にも良く分からないんだ。でも、これって僕たちの能力を表しているみたいなんだ。兄さんはそう思わないか?」
「お前の能力を見せてみろっ!」
そりゃぁ、当然そうなるよね。
俺のも見たんならお前のも見せろだよね。
自分ではステータスオープンと言えないダラスお兄ちゃんは私を腕に抱え、「頼むよ」と言って来たので「シュテータシュオープン」と唱えてあげた。
「おい!サーシャが話したぞ」
そうだった。
ダラスお兄ちゃん以外の前で話した事はなかったんだった。
パリスお兄ちゃんはオロオロして、どう対処して良いか分からないみたいだけど、ダラスお兄ちゃんの前に浮かんだステータス画面を見て、「魔法!」って今度はそのことに驚愕している。
「僕もサーシャも魔法スキルだったから、他の人はどうかと思って兄さんのも調べさせてもらったんだ」
「どうすればこの板を呼び出せるんだ?」
「何かシュテータシュオープンって言えば良いらしい」
「ちゃう!シュテータシュオープン!」
私が言い直すけど、ダラスお兄ちゃんには伝わらない。
でも、幼い頃には弟たちの面倒を見て来たであろうパリスお兄ちゃんは違った。
「ステータスオープンって言えば良いんだな」
「しょう!しょれ!」
「え?」
なんかダラスお兄ちゃんが納得のいかない表情を浮かべているけど、この際放っておこう。
パリスお兄ちゃんは「ステータスオープン」と言って自分のステータスを呼び出す事に成功した。
「他の奴のステータスを見たかったらどうしたらいいんだ?」
なんかもう直接私に聞いて来たよ。
「ほかのひと、しゃわる。シュテータシュオープン、いう」
「そうか。ステータスオープン!」
パリスお兄ちゃんは私に触りながら私のステータス画面を呼び出した。
「ふむ。料理魔法なんて魔法があるんだな」
「うん」
「使えるのか?」
「ちゅかえる」
「兄さん、昨日僕が持っていたパンを焼いたのがサーシャの魔法だ」
「パンを焼くだけの魔法なのか?」
「たぶん・・・・ちゃう」
幼児が話す異様さよりも、魔法が存在するという事実の方に驚愕しているため、未だ追求されていないけど、一旦魔法への驚きが収まったら私が会話できる事への追求が始まる気がする。
ここはパリスお兄ちゃんも共犯にしてしまうしかない。
「はなしゅ、あかちゃん、へん」
「あ?ああ、うん、そうだな・・・・」
「へんなあかちゃん、しゅてられりゅ。それは、やっ!」
「あ、あああ」
「わたち、はなしゃない」
「ん?」
私とダラスお兄ちゃんの短いやり取りを黙って見ていたパリスお兄ちゃん、思わず声が漏れたみたい。
「兄さん、サーシャが言いたいのは話が出来る1歳児は変だろう?母さんたちが気持ち悪いと思ったら捨てられるかもって気にしてるんだよ。だから、この子が話す事が出来るのは僕たちだけの秘密にしてほしいって事だ」
「さっきからその事は気になってたけど、お前はそれで良いのか?」
「最初は僕も驚いたけど、まぁ、今はもう情も湧いているし、普通の赤ん坊の世話をするより面白いからまぁ良いかって」
「まぁ、世話をするのはお前だから、お前が良いなら俺は良いぞ」
「「ありがとう」」
私たち二人からの感謝の念を受け取り、パリスお兄ちゃんも共犯者となった。