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カルメンおばさん

 カルメンさんはどっしりとした体つきで、家のママよりは5~10歳は年上に見えるおばさんだが、子だくさんらしく、彼女のスカートには4人もの女の子が捕まっていて、それとは別に彼女の腕には赤ちゃんが収まっていた。


「カルメン、お乳を貰いに来たよ~」

「ああ、マリアさん。その子が両親を亡くした子だね。可哀そうねぇ。名前は何て言うんだい?」

「サルーシャちゃんだよぉ。しかし、あんたが授乳期で助かったよ。でないとこの子の食事はどうしたら良いか悩むところだったさぁ。あははは」と豪快に笑うマリアおばさんとカルメンさんで赤ちゃんの交代をした。


 今、マリアおばさんの腕の中にいるのがカルメンさんの子供で、今カルメンさんの腕の中はお乳をもらう私がいるのだ。

 お腹が空いていたので、めいいっぱい堪能させて頂きました。

 ごちそうさまでした。

「げぷぅ」


 背中をトントンされ、無事ゲップも出たので、私は小包よろしくまたまた二人のおばさんの間で交換されました。

「ケラケラケラ」と笑っているのはカルメンさんところの赤ちゃん。

 男の子なのか女の子なのか分からないけど、ふくふくしていて可愛い。

「じゃあ、また夕方お願いするわねぇ」とマリアおばさんに連れられて家に戻りました。



 帰宅すると、私のベビーベッドは食堂の奥に移動されており、昼間の営業時間の私のテリトリーはこのベッドの中になるらしいです。


 昼間からお店でお酒を飲む人は少ないので、店の端っこに私が居ても変なちょっかいを掛けて来る客はいない。

「おっ!可愛い赤ちゃんだな」と言って頭を優しく撫でてくれる客がちらほら居るくらいだ。

「おかみさん、その年で赤ん坊こさえたのかい?いつまでも夫婦、仲良いこって」と揶揄われたりしても、マリアおばさんは「そうだろう。うらやましいかい?」とニカっと笑ってスルーする能力が高い。


 赤ちゃんの内はあまり色んな菌に晒されたくないのだが、そこはほれ、ヨーロッパの中世並みに薄汚れた町なので、菌の魔の手から逃れる術は無い。

 早く免疫力を上げた方が勝ちだ。

 私の免疫力、ちゃんと仕事をしろよっ!


 夕方、仕込みの時間にまたマリアおばさんに連れられてカルメンさんの所へ貰い乳しに行って帰って来るとダラスお兄ちゃんが帰宅しており、居間にいた。

「あ、お帰り~。ダラス、サルーシャちゃんの世話をお願いね」とマリアおばさんから有無を言わせずポンとその腕に私を乗せられたダラスお兄ちゃんは密かに嫌そうな顔をした。


 店の事が気になっているマリアおばさんは気づいていないみたいでとっとと店の方へ行っちゃったけど、私はばっちり見たからねぇ~。

 ちょっと癪に障ったので、頬を引っ張ってやりました。

「おまっ!やっぱりお前オカシイだろう?」

「にゃにが?」

「やっぱり喋れるんじゃんか」

「ふん!」とツンとして顔を横に向けたら、ダラスお兄ちゃんはこっちをジーっと見ていた。


「お前なぁ、なんで父さんと母さんの前では喋らないんだ?」と私を膝に乗せたまま、居間の椅子に腰かけたダラスお兄ちゃんは今更ながらそんな事を聞いて来た。

「へんなあかちゃん、すてられりゅ」

「ぶふぉっ」

 何かダラスお兄ちゃんが噴出しているよ。

「おまっ、ちゃんとその辺の事分かってやってるんだな」

「とーじぇん」

「はぁ~」と大きな溜息をついたお兄ちゃんは、仕事終わりにいつもやっているのだろう「居間の掃除を始めるからお前は隣の部屋でちゃんと良い子に出来るか?」と掃除を始めるために私のベビーベッドを居間の隣の部屋、つまりダラスお兄ちゃんの部屋に持って行って私をそこへ入れた。


 掃除している間もちょこちょここっちの様子を見に来てくれるところが憎めないんだよね。

 おばさんが仕事で忙しいから居間とかの共同スペースは毎日、ダラスお兄ちゃんが掃除してるんだって。

 すごいねぇ。

 自分も成人した15歳の時から役所に勤めているから仕事をしているのに、他の仕事と違って15時には終わるから、一番手が空いていると自分から掃除をしてるみたい。

 そういう事情だと、私の世話も自然とダラスお兄ちゃんが中心になっちゃうね。

 よろしく。

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