失敗しても大丈V。失敗から学ぶ私
「母さん、この子口が利けるみたいだぞ。何か変だ」
まぁ、こんな可愛い子を指して変だなんて失礼しちゃうわ!!
ダラスお兄ちゃんは私を抱えて、居間でくつろいでいたホーメルおじさんとマリアおばさんの所へ連れ行って、こんな失礼な事を宣った。
プンスカ!
「そりゃぁ、口が付いてるんだから口くらい利けるでしょう」
「いやぁ、母さん、そう言う意味じゃなくって・・・・」
ダラスお兄ちゃんはおじさんたちに色々説明しようとしたけど中々分かってもらえなくって、しびれを切らし「お前なんか喋ってみろ」と私に振って来た。
ふふふふん。
ダラスお兄ちゃんで失敗をした私は、学習しました!
普通の1歳児を演じる事にします。
ニヤリ。
キョトンとした顔でダラスお兄ちゃんを見つめてあげました。
「えっ?」
お兄ちゃんは驚愕している様だけど、ちっちっちっち!
もう両親もいなくなってしまった孤児なのだから、引き取ってくれるっていうお家の人に気味悪がられるのはノンノンノン!
更にお兄ちゃんをジーっと見つめて、首をコテンと傾けました。
すると「まぁ、可愛い。本当に女の子は可愛いわねぇ。でも、そろそろ寝ないといけない時間だから、ダラス、ちゃんとベビーベッドに連れて行ってあげてね。上掛けを忘れないでよ。サルーシャちゃんが風邪でも引いたら大変よ」とマリアおばさん。
おじさんとおばさんは夫婦して食堂を営んでるので、この時間は仕事上がりで疲れているみたい。
ちなみに末っ子のローレン君は、おじさんの店とは別の食堂で修行をしているらしい。
将来はおじさんの店を継ぐんだろうけど、別の店で修行を積む事で料理の幅を広げる目的もあるらしいよ。
この前、ママとマリアおばさんが話しているのを聞いてたんだ。
ママの事を思い出すと悲しくなって来たけど、泣かない様に何とか踏ん張った。
ぐぬぬ。
泣かなかった私、エライ!
足を仕切りに揉んでいるマリアおばさんはダラスお兄ちゃんと同じ黒髪で、食堂の女将なのに痩せている。
おじさんはゴツイ体をしていて、茶髪ではあるけど白髪の交じったごま塩頭だ。
ダラスお兄ちゃんは役所で働いているので仕事の終る時間が早い事もあり、夕方から夜にかけて私の世話を言いつかっている様子。
おばさんたちに私の異常性を説明できず、しぶしぶ私を抱えてベビーベッドの置いてある部屋へ。
「お前、さっきはいろいろ話してただろう?何で急に話さなくなったんだ?」
ここは普通の幼児で押し通して、さっきのはあなたの白昼夢よって事に出来ないかなぁ~。
「天涯孤独っていう単語が分かるだけでも異常だっちゅーの」とブツブツ言ってる。
まぁ、いい。
今は放っておこう。
幼児にこの遅い時間はキツイのだ。
もう眠いのだよ。
ブツブツ言いながらもダラスお兄ちゃんは私をベビーベッドへ横たえた。
そこで私の記憶はプツンと切れた。
恐らく寝ちゃったのね。
朝起きると、布が掛けてあったので、ダラスお兄ちゃんが掛けてくれたんだと思う。
今、何時だろう?
お日様燦燦だけど、時間が分からないや。
しばらくするとマリアおばさんが覗きに来た。
「あら、もう起きたのね。お腹空いてない?」
ダラスお兄ちゃんで失敗したので、言葉ではなく泣いてお腹が空いている事をアピールしてみた。
マリアおばさんはさっと私のお尻を触ってお漏らしをしていない事を確認してから、「そう、お腹が空いたのね。近所のカルメンに貰い乳を頼んでるから連れて行ってあげるわね」と私を抱え、首の周りに布を巻いて、外へ連れて出ても風邪を引かない様にして件のカルメンさんの所へ連れて行ってくれた。