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デニー君の家

 学校から帰り路、マルクス君と一緒にデニー君のお家に遊びに行く事になった。

 付き添いはタタお姉さんだ。


 学校から歩き始めて、小さいけど川に架かった橋を渡り対岸へ。

 そこから幼児の足でまたヨチヨチと歩いて行くと、石造りの平屋で無骨な建物がいっぱい並んでいる地区に到着した。


 デニー君はささっと自分の家に一直線に走って行くので、我々もそれにつられてドタドタと子供の足ながら何とかついて行った。

 まぁ、デニー君自体が幼児だから走ったとしてもドタドタヨチヨチなんだけどね。


 表は大きな扉の四角い建物なんだけど、王都の外れに建てられていた。

 扉は閉まっていたんだけど、「トンテンカンテン」という騒音が外まで響いている。

 デニー君が「ただいまぁ」と言って、工房の中に入ると、そこには大きな棚とかカウンターがあって、鉄製品が所狭しと並べてあった。


 王都のこの辺りは火を使う産業が集まっているらしい。

 確か、パリスお兄ちゃんが働いている金細工工房もこの辺だったはず。

 付き添いがタタお姉さんじゃなく、マリアおばさんだったらパリスお兄ちゃんの所にも連れて行ってもらうんだけどね・・・・。


 デニー君のお父さんは今、鉄を打っている最中なのでお話が出来ないらしく、お母さんが出て来てくれた。

 デニー君と違ってぽっちゃりさんではなく、げっそりと痩せたお母さんだ。

「まぁ、可愛い訪問者さんたちね。いらっしゃい」

「「「おじゃまち(し)まーす」」」


「ここは暑いから、あっちのお家の方へ行きましょうか。果物水を出すわね」

 私たちは心の中でやったー!と快哉を上げた。

 だって果物水は普通のお水よりよっぽど美味しいんだもの。

 でも、地球のジュースとは違い、果汁100%とかじゃないんだよ。

 湯冷ましの水に数滴、果物の搾り汁が入ってるなんちゃってジュースだ。

 

 前世、ケチで有名なお笑い芸人がペットボトルの中にドロップを入れて、それが溶けたモノを客に出していたっていう話を耳にした事があるけど、おそらくそのお水は、この世界の果物水ととても似たものだろうと思う。


 でも、普通は甘味に飢えているので、どこの子供も果物水が出ると聞いたらとても喜ぶのだ。

 もちろん、私も。


 ウチの店では私がスキルで砂糖とかハチミツを呼び出せるから、結構贅沢に甘味を摂る事が出来るのだが、問題は歯ブラシと歯磨き粉なのだ。

 はっきり言ってこの世界にはまだ歯ブラシが無い!

 爪楊枝の先をポワポワに割いたものを使っていて、歯磨き粉も無いので塩で磨くのだ。

 実は私は爪楊枝の他に、偶に糸を使って歯間ブラシ代わりにしているのだが、普通の糸って切れやすいんだよね。

 こんな衛生状態なのに、際限なく甘いものを接取するのは怖いのだ。

 だから普段からあんまり甘いものは摂らない様にしていたりする。

 それ故に、果物水を出してもらえるのはとっても嬉しいのだ。


「おじさんはね、奥の部屋で窯に強い火を焚いてね、そこで鉄を温めたり、ハンマーで打ったり、水で冷やしたりを繰り返して鍋を作ったり、剣を作ったりしてるのよ。火の粉っていうパチパチして当たると火傷するのが飛んでるから、みんなはその窯のある部屋は入っちゃだめよ」と言われ、結局工房の見学は成らず。


 でもこういう地区があるって分かったのは勉強になったし、鍛冶屋さんていうのが大体どのくらいの大きさの店が一般的なのかも分かって、私としては大満足の訪問だった。


「「「おじゃまち(し)まち(し)た~」」」とみんなでデニー君の家を辞して、またトボトボと家の地区までタタお姉さんに連れて帰ってもらった。

 小さな子供たちを連れての小さな遠足、タタお姉さんも大変だった事だろう。

 でも、また連れていってね。

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