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お弁当

 光陰矢の如し。

 烏兎匆匆。

 月日に関守なし。

 歳月人を待たず。

 サーシャは直ぐ育つ。


 うん、全部同じ意味だな。

 ニヤリ。

 あれからアッと言う間に3年の歳月が流れてしまった。

 

 ダラスお兄ちゃんのモテ期は私のお陰であっと言うまに通り過ぎてしまった。

 お陰じゃなくて私の()()だとも言う。

 まぁ、小さな違いはこの際、どーでも良い。


 最近私はホーメルおじさんのお店で料理魔法を使って色々な料理を増やしているのだ。

 そんでもってお店は大繁盛!

 当然だね。


 マヨネーズ、醤油、味噌、胡椒や砂糖、そして甜麺醤や豆板醤、バターにヨーグルト、ケチャップ、カレー粉、ウスターソースにみりんや料理酒にお酢。

 考え得る限りの前世の調味料をジャンジャンスキルで呼び出して、それを使っておじさんが料理するものだから、値段に比べてとっても美味しいと評判なのだ。


 想像してみて欲しい。 

 塩しか調味料がなかった平民の世界に、一部のお貴族様だけが使う事のできた胡椒がふんだんに使われているだけでなく、他の聞いた事のない調味料がわんさか入ってる料理が、ちょっと高めだけれど、平民でも払える料金で提供されているのだ。

 猫も杓子もそこで食べたくなるのは当たり前で、最初の頃は「俺、こんな店知ってるんだぜ、すごいだろう~」と自慢していた客が、段々と自分が食べれなくなるのを避けるため「誰にも教えたくない店」に変わるのはアッと言う間だった。

 

 店の前に長蛇の列ができるのだが、これが当たり前と思って欲しく無い。

 日本人は列に並ぶ性質を持つが、地球でも外国人にはそんな習性は無いのだ。

 この世界でも長い時間列に並ぶという習慣は無い。


 そこで店の中で食事をしなくても、持ち帰って食べれる様な料理も考えた。

 日替わり弁当だ。

 良くある異世界物のパンに何かを挟むのではなく、大工の見習いに頼んで作ってもらった薄い木を使った木箱に色々なおかずを入れるお弁当箱なのだ。

 

 はっきり言って手間は掛かる。

 でも、高い値段で売れる。

 米はスキルで呼び出せるのだが、一応主食はパンだ。

 おかずの入った木箱とパン2個でワンセット。

 

 手づかみで食べる人も多いので、濡れた葉っぱを一緒に渡している。

 紙は高価だから紙ナプキンは無理だったのだ。

 でも大きくて薄い葉っぱを持つモールという木があって、その葉っぱを濡らしたモノをお手拭きとして一緒に弁当に付けているので、食中毒とかの事例はまだ発生していない。

 いや、これからも発生してもらっては困るので、今まで以上に食べる前はこれで手を拭いてからっていうのを売る時に徹底してお客に注意喚起してもらおう。


 ローレン君は実家の仕事量が増えてしまったため、他店での修行を切り上げて、今はホーメルおじさんの元、せっせと私と一緒にお弁当を作っている。

 今まであんまり接触が無かったローレン君はとっても優しいお兄ちゃんで、私の仕事量が多くならない様に気を使ってくれたりする。

 1時間以上作業をしていたら果物水を持って来てくれて、「ちょっと休もうか」と調整してくれたりする。


 私が働く事についてはダラスお兄ちゃんが可成り反対したんだけど、本人、つまり私だな、本人が働きたいと目をキラキラさせて言ったためしぶしぶ許してくれた。

 魔力切れで気を失う事が1回でもあったらその後二度と働かせないと約束させられ、魔力と体調をきっちり管理しながら働く事になった。

 なのでローレン君が私の作業量や作業時間を管理してくれるのでとっても助けられている。


「ここのお肉の団子がうめぇのなんの。赤いソースが掛かってて甘酸っぱいんだよな」

「ああ、あれは美味しいよな。俺は卵を焼いてくるくる巻いてあるのが好きだ。あれが入ってると今日のは当りだってなる」

「おいおい。ここのはどれを食べても美味しいだろう?ハズレの日とかあるのか?」

「いやいや、ハズレはないけど、卵のが入ってるだけでいつものより、より美味しく感じるってこった」


 お弁当を買う列に並んでる王都の人達の会話は、いつもだいたいこんなもの。

 どのおかずがお気に入りかのおかず談義が多い。


 お弁当は毎日メニューを変えているけど、一種類しか用意をしない事にしている。

 これはホーメルおじさんが考えた方式なんだけど、コイン1枚が定価。

 メニューも一種類なら、列が出来てもお互い渡すモノが決まっているし、一回のやり取りで済んでしまうから、数だけしっかり作っておけば問題ないそうだ。


 もちろん、お店の中でお弁当じゃないランチを楽しみたい人もいるので、そういう人は別の列に並んで入店を待つ事になる。

 でも、お弁当を導入する前に比べたら列の人数は微々たるもんだ。

 

「お前が家に来てくれて、本当に良かった」とはホーメルおじさんの談だ。

 引き取ってもらって、ちゃんとその家の役に立っているのなら、私も嬉しいよ、ホーメルおじさん。

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