孤児になったみたい
「にゃんで?」
「え?」
「にゃんで?」
幼児独特の顔の中に占める割合の大きな目で、しかもキラキラした御目目でハタとお兄ちゃんを見つめた。
「お前、口利けるの?」
「うん」
「何で?」
「え?」
「いや、だから何でその年で話す事が出来るのって聞いてるの」
「わかりゃない」
「む~ん」
私を腕に抱えたまま固まっているこのイケメンのお兄ちゃんは隣の家のお兄ちゃんだ。
切れ長の目、通った鼻筋、薄い唇、高い身長、長い足、漆黒の髪がふわっと眉毛にかかるパッと見でも、じっと見でも良い男だ。
16歳のお年頃にしてはちょっと大人びた見た目なのだ。
そして私、バターブロンドのやわらかな髪、髪量は少なくても綺麗な色には変わりはないよ。
禿じゃないからねっ!
そして瞳は灰色に近い緑。くりくりの御目目と愛嬌のある表情。
これぞ幼児!って感じだ。エッヘン。
「にゃんで?」
まだ答えを貰えてないので、もう一度聞いてみた。
「お前さっきから何を疑問に思ってるの?」
「う~ん。どうしてパパとママがいにゃいの?」
「お前、自分の親がいないって分かってるのか・・・・」
「うん」
「お前の両親は事故で亡くなったんだ。だからお前は家の子になった」
ガーン!
ちびま〇子ちゃんの様に、額に縦線がいくつも走っているのは自覚している。
知らない間に両親が亡くなっていたよ。
だから隣の家のお兄ちゃんが、この前私を彼の家に連れて来て、それからずっとご飯を食べさせ、寝かせようとしているのね。
頭の中には、寝かせようの横に『←今ここ』って文字が浮かんでいる。
「サルーシャ、お前は天涯孤独になったんだ。まぁ、そんな難しい言葉は知らないだろうけどな」
「このよでたったひとり・・・・」
「お、おまっ、意味が分かるのか?」
「うん」
隣の家のお兄ちゃん、ダラスお兄ちゃん。
ウチの家とお隣の家はとっても仲良しだった。
で、天涯孤独となった仲良しな家の遺児、本当だったら孤児院行きだったらしい。
でも、女の子が欲しかったけど出来た子供は全員男の子だったお隣の夫婦は、私を引き取ってくれたらしい。
ダラスお兄ちゃんがそう話してくれた。
1歳になったばかりの私、サルーシャは前世の記憶があるのと、なんでか知らんが言語理解能力みたいなスキルがあるのか、相手が話す意味が分かっちゃうし、自分もしゃべれるしでついついダラスお兄ちゃんに質問したり返事してしまったり、ちょっぴりポカしちゃったかも?
普通の赤ちゃんのフリをしないといけなかったんだよね?
でも、ここ何日かパパもママも迎えに来てくれなかったし、誰も私の前で事故の話をしなかったので、訳が分からなくてすごく心配してたんだよ。
その心配が当たってしまったって事なのね。クスン。
この世界は、異世界物の定番と同じく中世ヨーロッパの様な世界で、不衛生で、力重視で、そして貴族のいるそういう世界。
私の両親とダラスお兄ちゃんの家はお隣同士だけど、所謂裕福な人たちが住む地域ではなく、どちらかというと金銭的にあまり余裕がない人たちが暮らしている地域だった。
あっ、でもスラム街とかじゃないよ。
貧しい地域の中でも、ダラスお兄ちゃんの家は息子が3人も居て働いて家にお金を入れているので、この地域の住民にしたら金銭的余裕がちょっぴりある方だ。
パパとママも子供は私しかいなかったし、二人ともが働いていたから貯金は無かったけど、日々の生活には困って無かったと思う。
ダラスお兄ちゃんの家は、ホーメルおじさんとマリアおばさん、ダラスお兄ちゃんのお兄ちゃんであるパリスお兄ちゃん。18歳で、金細工の工房で修行しているらしい。そして、弟のローレン君。15歳になって成人したから今年より調理人の修行を始めたらしい。この5人家族だ。
そこへ先日、私が末っ子として登場したらしい。
どうぞよろしくお願いします。
一晩で書き上げてしまい、これからゆっくり毎日分の推敲をするつもりです。
拙作の『料理魔法なんて魔法あったんだぁ』では主人公が様々なプロジェクトを進めなくてはいけないので、幼女幼女した作品に出来なかったこともあり、今回は念願の幼女幼女した作品にしたいと思い書き始めました。
各話の文字数もあまり合わせる事をしていないので、短い時も、めちゃくちゃ長い時もあるかと思いますが、どうぞよろしくお願い致します。
いいね、☆、ブックマークなどで応援して頂けたら嬉しいです。m(_ _)m