7:DOKO
「ここに置いていた私の指輪が無くなってるの……。さっきまでここにあったのに。ねぇ、誰か知らない?」
全員が首を横に振った。
「絶対にここに置いたの。あぁ、どうしよう。大事なものなのに」
「なんでそんな大事な指輪をわざわざ外すんだよ」
礼央君が言った。
「大事だから外したの」
そういえば真衣ちゃんは今日みたいにトランプゲームをする時は必ず指輪を外していた。
「待て。皆ここから動くな」
そう言って翔君がドアを塞いだ。
「皆手を上に。疑いたく無いが、衣類のポケットを検査さしてもらう。誤解を解くためにも」
翔君が真剣な顔で私たちに言った。なんだか探偵小説にでてくるような台詞みたいだ。
そういえば翔君の部屋には探偵小説がたくさん置かれていた。
「いいよ! どうぞ」
優樹菜ちゃんが手を上げた。
「皆の前で衣服のポケットを見せ合おう」
私、沙耶香はTシャツにスエットパンツを着ていた。
翔君、礼央君はTシャツにハーフパンツ。
優樹菜ちゃんはスエットワンピース、真衣ちゃんはTシャツにショートパンツ。
それぞれ衣服についているポケットを見せ合う。
「まさか下着の中に……」
礼央君言う。
「それはありえないことではないが、さすがに……」と翔君。
「つか、本当に指輪置いたの?」
礼央君が困惑した表情で真衣ちゃんに尋ねた。
「そこに確かに置いてたの。どうしよう。あの指輪は彼氏との大事な思い出の指輪なのに……」
涙を流しながら真衣ちゃんが言った。
「おい泣くなよ、もしかしたらひょっこりででくるかもしれないだろ」
礼央君が慰めるように言う。
「そうだよ。まだわからないじゃん」
優樹菜ちゃんが言った。
「しかし、変だな。密室のこの部屋の状態で物が無くなる。そんなことありえない」
翔君がぽつりと言った。
確かに翔君が言うように物が無くなるなんて変だ。
だって誰もこの部屋からでていないのだから。となると、指輪は確実にこの部屋にあるってことだと思うんだけど……。全員で手分けをして部屋を見渡したが、見つからなかった。誰にも怪しまれずに、ごそごそと隠す場所は無さそうだ。
「真衣ちゃん、きっとでてくるよ。どっかに落としたんじゃねーの」
そう言って礼央君はしゃがみ込み、机の下を見渡した。
「……ねーな」
「とりあえず今日はこれでお開きにしようぜ。明日も教習だしな」
礼央君があくびをしながら言った。きょろきょろと翔君も周りを見渡しながらそうだねと言った。
「きっとでてくるよ」
私たちは真衣ちゃんにそう言って慰めながら部屋をでた。