第7話 剣の謎
「はぁ……」
ユウキは悩んでいた。早めにある程度剣を強くしとかないと、一年以内に魔王を倒せるだなんて思えない。だが、レベルアップを一気にたくさんする方法なんて無いだろう。地道にスライム倒すしかレベルアップする道は無い。
「前みたいに剣が勝手に倒してくれたら楽なんだけど」
もう空はオレンジがかった色に染まっていて、日は落ちかけている。
昼ごはんも食べずに時間を忘れてずっと魔王を楽に倒す方法を考え続けていたユウキは、腹の虫が鳴って我に返った。
「もうこんな時間!?」
いつもごなら飯を食べ始めているはずの時間をとっくに過ぎていたので、急いで料理を作った。焦がすなどの失敗をすることもなく、上手に作ることができたので満足していた。
ユウキは剣にも食べるか聞いたが、無視してそっぽを向いてしまった。
「美味しく出来てるのになぁ……。残念」
【マジで……?】
「おいおい。そんな羨ましそうな目でこっちを見るなよ……」
【目など無いぞ】
「仕方ない。オレは優しいから分けてあげるよ」
そう言って、食べかけの肉料理を半分に分けて新しく持ってきた皿に盛って剣の前に置いた。
剣は先の尖った部分で上手いことバランスを取りながら立ち上がり、匂いを嗅ぎ始めた。
【………本当にコレは旨いんだな?】
「要らないならあげないけど?」
【………食べたい】
ついに、剣がご飯を食べる瞬間を見られる時が来た。ユウキは視線の先を剣と料理の方に固定して、じっとその時を待った。
だが、なかなか剣はご飯を食べ出さない。どうしたのだろう? と思って、ユウキは声をかけた。
「どうしたの? 食べなくていいの?」
そう質問すると、剣から意外な返事が返ってきた。
【寒くてお腹壊した………】
「は?」
ここ最近は近くに産まれた氷竜の影響で、気温がだいぶん下がっているのだ。冷え性なら確実にお腹を壊すレベルだ。
だから仕方ない。
――――ってなるわけがない。
「お腹壊したぁ!? なに言ってるんだ!?」
【………いや、マジで。トイレどこ?】
剣は壊れかけの機械の音のような、ボサボサした声で聞いた。
「………マジのヤツ?」
【マジだから! 早く! 漏れ………漏れる!!】
「えぇ!? えっと、トイレは………こっち!」
ユウキは剣を抱えて急いでトイレに駆け込んだ。どんな風にトイレなんかするのか気になっていたので楽しみにしていたが、剣には覗くなと言われたので、しぶしぶリビングに戻った。
――――マジでどういう構造してるんだろう……