第5話 ゴブリンと遭遇
「お、スライム見っけ」
ユウキはスライムを見つけると、後ろから気付かれないようにそっと近づいた。そして、思いっきりスライムに剣を叩きつけた。
すると、スライムの体が潰れ、中から水色の液体が漏れ出てきた。
「一撃で倒せた……?」
【レベルアップ レベルが 87 に上昇しました 魔物撃破ボーナス 有り】
剣から流れてきた音声を聞いて、ユウキは喜んだ。
さっきレベルアップしたことで、スライム程度のくそ雑魚の魔物なら一撃で倒せるようになったのだ。
「よぉし! この調子でどんどんレベルアップさせていくぞ!」
そう言って気合いを入れたとき、ユウキの後ろから何かの足音が聞こえてきた。
「何かいるのか?」
剣を構えて後ろを振り返った。
するとそこには、肌の色が緑色のボロボロになった剣を持ったゴブリンが立っていた。
ゴブリンは縄張りに入られたユウキを追い出そうと、攻撃体制に入った。
ユウキもそれに対抗して戦おうと、剣を構えた。だが、ゴブリンは圧倒的にスライムより強い魔物だ。なので、今のユウキが勝てる可能性は0に等しい。
「どうやってここから逃げようか……」
ゴブリンは足も早い。下手に逃げようとすると、普通に捕まってやられてしまうだろう。
「やべぇ……怖えぇぇ。まだオレ死にたくないぞ……?」
ユウキが少しずつ後ずさりしながら、呟いた。
その時――――
【グゥ……スゥー……】
「は?」
剣がイビキをかきながら寝始めた。
「おい! ちょ、こんな時に寝るなぁぁ! マジで頼むから! オレも寝たいんだよぉ!」
ユウキがペチペチと剣を起こすために叩いているのを見て、ゴブリンは呆然としていた。
「クッソ! マジで使えねぇ剣じゃん!」
【むにゃむにゃ……。え……? 今日の昼ごはんユウキの手料理だって!? あぁ……終わった……】
「おい。今なんて言った? 潰すぞ? てか、とりあえず起きてくれよ! 寝てたら剣の力が使えないんだろ!?」
そう。この剣、寝ているときは1レベルの状態に戻ってしまうのだ。
「起きろぉ!」
ユウキが必死に剣を起こそうとするが、一向に起きる気配が無い。
ゴブリンはもちろん、剣が起きるのを待ってくれるはずもなく。叫びながら剣を前に構えて突進してきた。
「あ……。終わった」
ユウキが死を覚悟したとき、剣の寝言が聞こえてきた。
【ユウキの料理で死ぬなんて……。嫌だぁぁぁ!】
「おい! どんな夢見てんだよ!」
ゴブリンは、もうユウキの目の前まで来ている。
「あぁ、ゴブリンに殺されるなんて……」