第2話 クソ不味飯
レベルが初めて上がってから、だいぶん長い間巨木に剣を叩きつけていた。そろそろ帰ろうかとしたとき、再び剣から音声が流れ始めた。
【レベルアップ レベルが 12 に上昇しました】
レベルが上がったようだ。
「だいぶん上がったな……。ステータスは……」
ユウキはステータスを確認するために、目の前に水色のディスプレイを作り出した。
攻撃力は18だけだが、ちゃんと上昇していた。
「ちゃんと強くなるじゃん」
本当にこんなことで強くなるのか怪しんでいたユウキは、少しずつでも強くなっていることを確認して、小さくガッツポーズを作った。
「でも……この事は誰にもバレないようにしないといけないんだよな……」
この世界ではレベルが一定以上無いと、武器を買うなどして、手に入れてはいけないという決まりがある。もちろん破れば罰せられる。だからユウキはこの武器のことをなるべくバレないように隠しておく必要がある。ちなみに、もし手に入れることができたとしても、その武器が所有者として認識できず、扱う以前に触れることすらできないのだ。
ユウキはどうやってこの武器の事を隠そうか、腕を組んで考え始めた。
だが、いくら考えてもいい考えは思い浮かばなかった。もう日は落ち始めている。
「やべっ、もうこんな時間!? 晩ご飯早く作らないと!」
身長の半分ほどもある、大きな剣を抱えながら駆け足で家に戻っていった。
今日の晩ご飯には、魔物の肉をふんだんに使った肉じゃがを作った。ドス黒い魔物の肉が入っている肉じゃがはあまり美味しそうには見えなかった。
「魔物の肉焦げちゃったか……また失敗したな……」
肉がもともと黒いのではなく、焦げて黒くなったのだ。魔物の肉はとても焦げやすいので、料理の際には注意が必要だ。なのに、ユウキは女の子からもらった剣を時間を忘れて、うっとりとした目で眺めていたのだ。気付いた時にはもう遅かった。肉から煙が上がっていた。
「うぇ……不味そう……。てか、臭すぎだろ……」
不味そうな肉じゃがを見ながら顔をしかめた。その時、ユウキの後ろの方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
【いい匂いがするな……ご飯か? そのぉ……レベルアップにはご飯も必要なんだ。少し分けてくれないか?】
「ん? あぁ、コレはお前のために作ったご飯だから全部上げるよ」
【本当か?】
「うん。その代わり絶対に残すなよ?」
【分かってるよ。あ………】
また急に黙り込んだ剣の前に、ユウキはご飯を置いてリビングを出て自分の部屋に向かった。
「あの肉じゃがの匂い嗅いだら吐き気がしてきた……。今日はご飯を抜きでいいかな……」
そう呟きながら部屋のドアノブに手を掛けたとき、リビングの方から今にも死にそうな、苦しそうな叫び声が聞こえてきたが、気にせずに部屋に入ってベッドに寝転んだ。
「そういえば剣なのにどうやってご飯食べてるんだろ………?」
また剣の疑問が生まれたが、考えても分かることではないのでそのまま目をつぶり、寝てしまった。