プロローグ
「オレは強いですか!?」
近くを通りかかった知らない人に、自分のステータスを見せながら聞いた。
急にこんなこと聞かれたら驚かれるのは分かっているが、自分の評価を聞きたくて仕方がなくてつい、聞いてしまった。
でも、優しい人だったらしく答えてくれるようだ。
「はっきり言うと悪いのだが……クソ雑魚だな」
はっきり言われて、ユウキは少し悲しくなったが、弱いのは《《今》》だ。強くなる方法はあるはず。と、気持ちを切り替えた。
「……どうにかして強くなれますか」
「無理だな。ステータス見てみろ。レベル上限1だろ?」
「………」
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ステータス
名前 : ユウキ
レベル 1/1
攻撃力 21
防御力 3
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見返して再びユウキは思った。
「やっぱり弱すぎるよな………」
「うん。はっきり言ってあんたには悪いが、1レベでもこんなに弱いのは始めてみたよ……」
ユウキはその一言を聞くと、泣きながら走って家へ帰っていった。
家へ戻るとすぐにベッドの中に潜り込んだ。
「なんで……? なんでオレだけこんなに弱いんだ……?」
この世界は強さがほぼ全て。
なのにまわりよりも圧倒的に弱い。それが理由でいじめられることもよくあったが、ユウキは自分が弱いことを認められずにいたのだ。
しかし、知らない人にはっきり言われたユウキは認めるしかなくなってしまった。
布団の中に潜り込んで泣いていたとき、後ろの方から明るい光が少し見えた気がした。
気のせいだろうと思いながらも、ユウキは泣いて真っ赤になった顔を上げて振り向いた。
「………え?」
振り向いた先にはロングヘアの女神様のような、かわいらしい女の子が立っていた。
「誰?」
『クソ雑魚で哀れで可哀想なユウキくんのためにプレゼントを持ってきてあげたのに、誰? は無いでしょ………』
【ユウキの心に、1000000のダメージ!】
「いくらなんでも言いすぎなんじゃないっすか……?」
ユウキは涙目になりながら、かすれた声でそう言った。
『ご……ごめんって! 次から気を付けるから!』
「………」
『まぁ、そんなことは置いといて』
そう言いながら、女の子は右手に持っていた長くて大きな袋から、何かを取り出そうとし始めた。
……いや、置いとかないで! 可哀想だとは思わないの!?
『はい。コレあげる! 一応チート武器だから。上手いこと使いこなせば、強くなれるんじゃない? ほら、装備着けたらステータス上がるじゃん? 普通レベル低すぎたら武器使えないけど、それは特別なやつだから大丈夫! ………多分』
そう言って女の子は真ん中に水色のクリスタルのはめられた、長い剣をユウキに手渡した。
「え………? 本当に?」
『うん! 感謝してね!』
ユウキは渡された剣をしっかりと握った。すると、自然と手の形にフィットするような感じがした。すぐさまユウキはステータスを確認した。
「は………?」
――――――――――――――――
ステータス
名前 : ユウキ
レベル 1/1
攻撃力 22
防御力 3
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えーっと……強くなるって……?
「期待させやがって! 嘘つきがぁ! 攻撃力1しか上がってないじゃん!」
ユウキは女の子に文句を言ったが、返事がなかった。部屋の中を見渡したが、もう女の子の姿は見えなくなっていた。
「くっそ……。でも、無いよりはマシか……」
ほんの少しだけだったけど、強くなれたことに感動を覚えた。
その時、どこからともなく機械音のようなかすれた音が聞こえ始めた。
【所有者 ユウキで設定しました。ただいまのレベル 1 】