部活(2)
僕は、ツグミちゃんに引っ張られながら、合同部とやらの部室の前に来た。
「こ、ここなのツグミちゃん?」
「そ、そうらしいよ…」
そこにあったのは、いかにも怪しそうな部屋だった。
部屋の扉には一応「合同部」と紙に書いて張ってあるだけの表示がされていた。
「や、やっぱりやめておこうよ、こんなところで部活をするなんてちょっとおかしいと思う」
「ううん、私はここの部活に入ってみたいって思ったの、だったら思ったままに行動したほうがいいに決まってる」
ツグミちゃん、今日はいつも以上に行動力にあふれているな。
そんな姿を見て僕も感化されたのか、
「そ、そうだよね、やってみたいって思ったことは最後までやり通してこそ意味があるよね」
僕たちは扉をノックする。
「すみません×2」
しかし、中からの返事はなかった。
「あれ?いないのかな?すみませ~ん」
ツグミちゃんがさっきよりも大きな声で呼びかけると。
「何?」
「うわぁ、×2」
その人は後ろからいきなり話しかけてきた。
「そこ、私の部室なんだけど…なに、また冷やかしに来たの?」
「い、いえ、私たちはこの部活、合同部へ入部したいと思ってここまで来ました」
「入部…マジで行ってるの?」
「も、もちろんです。私と彼はこの部活にすごく興味があるんです」
「へ~そうなんだ…」
その人は俯きながら、身を震わせている。
「ど、どうかしましたか?」
僕が声をかけると
「しゃ~~~~あ!」
いきなり大きな声を出し、叫ぶ。
その姿を見て僕たちは驚く。
「ど、ど、どうしたんですか?」
「いや~、ほんまによく来たな。歓迎するで、我が部活、科学実験部にな!」
「か、科学実験部?い、いやでも、ここは合同部って…」
「いや、この部活はいずれ科学実験部にする!その為の部員を集めていた所だ、こんなところで2人も入部希望者に出会えるとは」
「い、いやちょっと待ってください」
「さ、さあここに君たちのサインを!」
その人に、ぐいぐい押されていると。
「ちょっと待った~!その子たちはアニメ漫画研究部の部員たちだ!」
「!?×2」
「何だ、真紀か…」
「何だとは何だ、その子たちはきっとアニメ漫画研究部に興味を持ってここまで来てくれたんだ!」
い、いや確かにちょっと興味はあったけど、それだけじゃないんだよな。
「おい、ちょっと待てよ」
「ちょっと待ってください」
「!?×2」
次から次へと一体どういう事なんだ。
「そいつらは、写真部の部員だ」
「その方々は旅行部の部員達です」
「次は、北川と南沢か…おい、その子たちは科学実験部に入るって言ったんだよ、邪魔しないでくれ」
「いいや、絶対にアニメ漫画研究部に入りに来たんだよ」
「だから言ってるだろ、写真部に入りに来たんだって」
「りょ、旅行部に入りに来たんですよね」
僕たちは4人の生徒に囲まれ、問い詰められるような形で話しかけられた。
「わ、私たちが入りたい部活は…」
「私たちが入りたい部活は…×4」
ど、ドドドドどうしよう。一応全部の部活に入りたいんだけど、一つに決めなきゃいけないの?
どうしよう、ツグミちゃんが困っている、こんなところでこそかっこいいところを見せるチャンスだ。
僕は考えてこの言葉を言った。
「全部で」
「へ?×4」
「全部で、っていうのは入りたい部活はこの4つの部活全部っていう意味です」
いったい僕は何を言っているんだ、分け分からないじゃないか。
ほらツグミちゃんも何言っているのか分からないっていうような顔をしている。
「全部か…いいね!」
1人の人がそういうと
「そうだね、1つの部活に決めなきゃいけないわけじゃないんだし」
「まあ、それもそうだな」
「入ってくれるなら、それでも…」
よ、よかった、何とか同意してくれたみたいで。
「じゃあ、ようこそ、我が部活、科学実験部へ」
「アニメ漫画研究部へ」
「写真部へ」
「旅行部へ」
い、いや、そこに合同部って書いてありますけど、とは言えなかった。
部室の中に入ると、4つの机があり部屋が2本のテープで仕切られていた。
部屋を縦と横に2本ずつテープが張ってあり、4つの机がそれぞれの角に置かれている。
「あ、あの~これはいったい、どういう状況なんでしょうか」
「ここが、科学実験部」
「ここが、アニメ漫画研究部」
「ここが、写真部」
「ここが、旅行部です」
4人の生徒がそれぞれの机の前でそう言う。
確かに、それぞれの机の上には、実験器具やテレビや漫画、カメラ、旅行雑誌などが置かれている。
「2年A組、出雲珠美って言います。科学実験部の部長をしている」
「2年B組、真紀こたつ。アニメ漫画研究部の部長をしているよ」
「2年C組、北川博人、一応写真部の部長をしている」
「2年D組、南沢春香、旅行部の部長をしています」
な、なんか一斉に自己紹介をされたんだけど、ちゃんと全員の名前を覚えるなんてできないよ。
「出雲先輩、真紀先輩、北川先輩、南沢先輩ですね。これからよろしくお願いします」
ツグミちゃん順応するのが速すぎるよ!