幼馴染
第一回目の委員会が終わり、ツグミちゃんと久々に一緒に下校した。
「まさかツグミちゃんがこの学校にいるとは思わなかったよ」
「私も思わなかった」
「でも、こんな姿を見せちゃったのは少し後悔してるかな」
自分の出っ張ったお腹をさすり、むなしくなる。
「私も同じ、こんな姿を見られたくなかった」
「つ、ツグミちゃんはまだそこまで太ってないよ!」
「男子とは違うの女子の場合はこの状態でも十分いじめられる対象になっちゃうんだよ」
「もしかして、ツグミちゃんもいじめられてたの?」
「私もッてことは池田君もいじめられてたの」
「恥ずかしながら、ま、まあこんな体系じゃいじめられるのも仕方がないか」
笑ってごまかす、幼馴染のツグミちゃんの前で弱いところを見せたくなかったのか、初めて見栄を張った。
「池田君は強いね、私は逃げてきたの」
「逃げてきた?」
「さっきの2人、私と同じ中学校だったて言ったでしょ。あの二人が私の体系のことでいじり始めたのがきっかけで、中学3年間いじられキャラになっちゃった。少しでも同じ中学の同級生がいないような高校にして、1から頑張ろうと思ってたんだ」
「そうだったんだ」
「池田君、気になってると思うけど、私、名字が変わったの」
「き、聞いてもいいのか分からなかったから聞かなかったけど、聞かせてくれるの?」
「私のお父さん、1年前に死んじゃったの」
「そ、そうなんだ」
こういう時は何を言ったらいいんだ、分からない。
「気にしないで、私が話したいから話してるのお父さんが死んだのだってもう1年も前だし」
「気にしないっていうほうが難しいよ」
「そうかもね」と言いながらツグミちゃんは笑う。
久々にツグミちゃんの笑顔を見ることが出来た。
「あ~、久々にいっぱい話した、池田君ありがとう」
「僕も、久々に女の子と話せたよ」
「えへへ、池田君は私のことを女の子だって言ってくれるんだね」
「も、もちろんだよ女の子じゃないっていうほうがありえないでしょ」
「やっぱり、良い人だね池田君は」
「良い人なんかじゃないよ」
「いや、池田君は良い人だよ」
「それじゃ、私の家はこっちだから」
「そうなんだ、それじゃ、また明日学校で」
「うん、バイバイ」
「バイバイ」
ツグミちゃんの姿が見えなくなるまで、手を振り続けた。
やった~、ツグミちゃんと話せたぞ。
数年たってるけどツグミちゃんはツグミちゃんだった、僕のことをデブだとか言わずに、ちゃんと名前で呼んでくれた。
ただ名前を言われただけなのに、何を舞い上がっているんだ僕は、でもツグミちゃんもつらい思いをしてきたんだな。
「僕は何があってもツグミちゃんの味方でいよう」と胸に誓った。
後ろから黒色の車が近づいてくる。
「暖お坊ちゃま、ご自宅までお送りいたします。」
「ありがとう、ここまで歩くの少し疲れちゃったよ」
「さっきのお嬢様はツグミ様でいらっしゃいますか?」
「そうなんだ、数年ぶりに高校で再開したんだよ、ツグミちゃん僕のこと覚えていてくれたんだ」
「さようでございましたか、お坊ちゃまのお顔が大好物のハンバーグを食べる時よりもうれしそうだったものですから」
「そ、そんな顔してたかい」
「はい、それはもう、うれしそうな顔をしておりましたよ」
「ツグミちゃんにもばれちゃったかな、僕がツグミちゃんに会えて滅茶苦茶うれしかったってこと」
「気づいていらっしゃると思いますよ。女性は相手の心を読む天才ですから。お坊ちゃまのようにお顔に出やすいとなおさら筒抜けだと思いますよ」
執事の言うことを聞いて、恥ずかしさで気が狂いそうになった。
「池田君、何にも変わってなかったな、昔のまま優しい男の子になってた。あの感情が顔に出やすい性格も変わってなかったな。ふふ」思わず笑みがこぼれ出る。