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第9話 バイト先には新人が二人

 キーンコーンカーンコーン


「起立、礼! ありがとうございました」


 今日の授業は終わり、クラスの生徒は帰りの準備をしている。

 俺も教科書をしまって帰ろうとするが、朝の疲れがとれてなくて足が少し痛い。

 足を気にしてる俺を見て、隣に座ってる赤峰は心配そうにしていた。


「大丈夫、まだ疲れてるの?」

「そりゃ疲れるだろ」

「運動不足すぎだよ!」

「学校での体育はちゃんとやってるぞ」

「それはみんなやってるでしょ」

「そうだけどさ」


 疲れた足に力を入れて立ち上がった俺は、赤峰に挨拶をして教室を出ていこうとする。


「じゃあまた明日な」

「えっ途中まで一緒に帰らないの?」

「荷物を家に置いてからバイト行きたいから早めに帰りたいんだ、また明日一緒に帰ろう」

「う、うんわかった……」


 赤峰はなぜか寂しそうにしている。

 黄宮こみやがいるのになんで寂しそうにしてるんだ。

 もしかして俺がいないと寂しいのか。

 まあそんなことはないだろう。


 急いで家に帰り、バイトの支度をして外に出た。

 俺のバイト先は居酒屋で、浮気されてからしばらくの間休ませてもらっていた。

 店長に事情を話したら、また来れるようになったらいつでも来ていいと言われたから、最近連絡して復帰することにしたんだ。

 久しぶりだからちゃんとできるか不安だけど、居酒屋のバイトは楽しいからワクワクしてる。


 バイト先に着いた俺は、扉を開いた。


「店長久しぶりです!」


「おー奏汰かなた! 久しぶりだな、元気にしてたか」

「色々ありましたけど、今は元気です!」

「それはよかった! 早速着替えてきてほしいけど、その前に二人の新人が入ってるんだよ」

「えっ俺が休んでる間に二人も!?」

「そうそう、しかも奏汰と同い年の女の子だぞ!」

「そうなんですか」

「なんだ興味無さそうだな。でも見たら興味がわくぞ」

「そんなに可愛いんですか」

「まあ待ってろ」


 店長は新人の二人を呼び出しに行った。

 俺は着替えつつ待ってると、店長が来た。


「この二人だ」


「えっ」


 見た瞬間、目を疑う。

 いつもと雰囲気は違うけど、その二人は赤峰と黄宮だったのだ。

 俺よりも先に驚いた赤峰が口を開く。


「えっ青城!」

「な、なんで二人がいるの?」


 俺の言葉に黄宮も口を開いた。


「それはこっちのセリフだ」

「いや、俺の方が先にここで働いてたんだけど」

「えっそうなのか?」

「まあ最近は休んでたけどさ」


 三人の様子を見た店長は笑いながら言う。


「もしかして三人とも知り合いなのか?」

「知り合いというか友達です。最近仲良くなって」

「そうなのか、よかったじゃないか奏汰」

「そ、そうですね」


 戸惑いつつも俺は苦笑いしていた。

 仲良くなった二人とバイト先が同じなのは嬉しいけど、なんか気まずい。

 いつもとは違う自分を見られてる気分だ。

 そんな事を思いながら、俺は二人とバイトすることになった。


 お客さんが次々と入ってくる。

 赤峰は元気で明るくお客さんに気に入られてるみたいだ。

 黄宮は男の人と話すのは苦手そうだけど、お皿を下げたり洗い物をする手際が良く仕事が早い。

 久しぶりの俺は、最初は仕事の動きを忘れていたが、途中から体が勝手に思い出して動けるようになった。


 お客さんは途切れることなく来て、気付いたらバイトも終わりの時間になっていた。


「三人とも上がっていいぞ」


「「「はーい、お疲れ様です」」」


 返事をして着替えた俺達は外に出る。

 汗を拭く俺に赤峰が言う。


「お疲れさま!」

「おつかれ!」

「青城と同じバイト先なんてビックリしたけど、初めてにしては良い連携だったんじゃない」

「そうだな」


 黄宮は疲れている俺に追い打ちをかけるように話し掛けてきた。


「明日も朝から走り込みだから遅れないように来てね」

「わかってるよ」


 返事をしてその場で俺達は別れた。

 黄宮と一緒にいる赤峰が遠くから手を振っている。


「また明日ねー!」

「おうまた明日!」


 友達とバイトするなんて気まずいと思ってけど、やってみたらいつもより楽しかったな。

 またバイトに来るのが楽しみだ。

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