第6話 冷たい黄宮は苺パフェには甘い
いま俺は美味しい苺パフェがある喫茶店に黄宮と来ている。
俺は紅茶とガトーショコラで、黄宮はコーヒーと苺パフェを注文した。
注文してから数分経つが、お互いに何も話していない。
何の話をしよう。
黄宮は赤峰と幼馴染なんだよな。
まずは赤峰のことを聞いてみるか。
「黄宮は赤峰と仲が良いんだよな」
「うん」
「幼馴染だって聞いたよ」
「うん」
「赤峰はどんなやつなんだ」
「あなたには教えない」
会話が全然続かない。
赤峰の話も駄目じゃ、どんな話なら答えてくれるかな。
困っていると注文したものが運ばれてきた。
「こちらガトーショコラと紅茶です!」
「ありがとうございます!」
「えっと、こちらは苺パフェとコーヒーです!」
「わー美味しそうですね! ありがとうございます!!」
「とっても美味しいですよ! それではごゆっくりお召し上がりください」
普段はあんな感じで愛想がいいんだな。
黄宮は俺を気にすることなく、目の前の苺パフェを頬張る。
時々俺と目が合うと、むすっとした表情に変わってしまう。
このままじゃ駄目だ、こうなったらやっぱりあの事を言うか。
「苺パフェ美味しい?」
「うん美味しい……あっいや、うん」
「今日は赤峰を使って騙しすようなことしてごめん」
「別に」
「誤解を解きたかったんだ」
「誤解?」
「学校で流れてる噂は全部嘘なんだ。浮気されたのは俺で、冬休み明けに学校に行ったら俺が浮気したっていう噂が流れててさ。信じてくれなくてもいい。でも赤峰と幼馴染の黄宮にはこの事を話して誤解を解きたかった……」
初めて言えた。
これで信じてもらえるとは思わないけど、なんだか肩が軽くなったような気がする。
黄宮は俺の話を聞いて、一息ついてから話しだした。
「その話が全部本当だとはまだ思えない。だけど、灯里はあなたの事を信用してるみたいだから少しだけ信じてあげる」
「えっ本当か!?」
「うん。ただでさえ私に嫌われてるあなたが嘘をついたら、もっと嫌われるに決まってるから、嘘をつくようにも思えないしね」
「じゃあ俺と友達に……」
「友達には、まだならない」
冷たく答えると残っていたパフェを一口食べて、コーヒーを静かに飲み、口を拭いてから言った。
「でも灯里とあなたが仲が良い間は……」
「うん」
「何かあったら協力してあげる」
「協力って?」
「言わないでもわかるでしょ。それじゃあ私は帰るから、これ私のお代置いとくね」
「えっ奢るよ」
「奢られるのは嫌なの。それじゃあね青城くん」
「うん……って俺の名前」
黄宮はそう言い残して帰った。
俺の名前も呼んでくれたし、少しは信じてくれたってことだよな。
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