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第5話 優しい赤峰

 次の日の朝。

 登校していると後ろから声をかけられた。


青城あおき!」

「あっ赤峰あかみねと……黄宮こみや


 笑顔で話し掛けてきた赤峰とは対照的に、黄宮は俺の顔を見て不機嫌そうだ。

 本当に仲良くなれるのか不安になってきたな。

 不安そうな顔の俺に、赤峰が話し掛ける。


「そんな不安そうな顔してどうしたの」

「いや、なんでもない」

「あの事なら大丈夫だよ! 昨日誘ったら、いいよって言われたから」


 黄宮に聞こえないように耳元で言われた。

 約束してくれたのは嬉しいけど、朝からこんなに仲良さそうにしてたら、目の前にいる黄宮にもっと嫌われそうだ。

 赤峰は俺と黄宮が早く仲良くなってほしいから一緒に登校したいらしいが、この様子じゃ先に行った方がいいな。


「赤峰、また今度一緒に登校しよ」

「えーわかった」


 赤峰は悲しそうにしてるけど、それ以上に早くあっちに行けと言うオーラを感じる。

 

 足早に学校まで行き、教室に着いた俺は席に座った。

 クラスの生徒は俺を空気のように扱っている。

 そうだった。赤峰とは昨日だけで大分だいぶ仲良くなれたけど、他の生徒からは嫌われてるんだよな。

 たまに目が合う生徒の視線は冷たい。

 教科書でも読みながら気を紛らわそう。


 しばらくして教室の扉が開いて俺に挨拶してくる声が聞こえた。


「おはよう青城! さっきぶりだね」

「えっ赤峰」

「挨拶されただけで驚かないでよ」

「そうじゃなくて……ちょっとこっちにこい」

「ふぇっ」


 座ろうとした赤峰の腕を掴んで廊下まで行き、階段を上って踊り場までつれてきた。


「いきなりどうしたの?」

「昨日の事があって忘れてるかもしれないけど、俺はこの学校でめちゃくちゃ嫌われてるんだぞ」

「うん知ってるよ」

「だったらわかるだろ。話し掛けてきた赤峰が、もしかしたら嫌われるかもしれないって」

「いいよ」

「えっ?」

「別に嫌われてもいい」

「何言ってんだよ、よくないだろ」

「嫌われるのはいやだけど、でも誰かがこうやって青城に話し掛けた方が、噂の事もだんだん忘れていくんじゃないかな」

「それは……そうかもしれないけど」

「だったら私のやってることは間違ってないでしょ」

「まあ……うん、でも」

「でもじゃない、私達は友達なんだからお互い助け合っていかなきゃ!」


 そう言いながら赤峰は俺の手を取り握ってきた。

 あったかい、なんでこんなに優しくしてくれるんだよ。

 迷惑がかかる事ばかり考えてたけど、俺が間違ってたのか。


「ごめん……でも、もしも何か嫌な事があれば言ってほしい」

「うん、わかった」

「強引に連れてきて悪かったな、教室に戻ろう」

「うん」


 二人で教室に戻り、そのあとも赤峰とは先生が来るまで話していた。



 放課後。

 俺は教室に残って二人が来るのを待っていた。

 赤峰は用事があるらしく、それを済ませてから来るそうだ。

 

 数分待っているとスマホが鳴った。


「「ごめん青城! 私行けないかも」」


「じゃあ今日はやめとくか?」


「「ううん大丈夫! りんちゃんには教室に行くように言っといたから」」


「えっ赤峰は来ないで、二人きりで話すってこと!?」


「「ほんとにごめん! 青城なら私がいなくても仲良くなれるよ。じゃあちょっと用事あるから」」


 用事があると言ってから返信はこなくなった。

 本当に俺一人でも仲良くなれるのかな。


 心配を余所に、教室の扉が開いた。


「こ、黄宮待ってたぞ」

「なんでお前がいるんだ?」

「お前って、俺にはちゃんとした名前が……」

「知ってるよ、浮気者で学校一の嫌われ者の青城あおき奏汰かなたでしょ」


 ちゃんと名前は知ってくれてたんだな。

 それにしてもあらためて「浮気者で学校一の嫌われ者」って聞くと、やばい奴だな。


 俺がどうやって誘おうか考えていると黄宮が口を開いた。


「じゃあ用がないなら私は帰る」

「待って」

「なに?」

「ちょっと話そうよ」

「私は話すことはない」

「お願い! 少しでもいいから」

「じゃあ……苺パフェを食べに行きたい」

「えっ」

「嫌ならいい」

「いや、嫌じゃないよ! 嫌じゃないから行こう」

「……うん」


 なんだかわからないけど、苺パフェのおかげで話してくれるみたいだ。

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