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第4話 ピンチをチャンスに

 黄宮こみやの言葉に沈黙が流れる。

 俺は額に汗をかき、何も喋れない状況だ。

 すると赤峰あかみねが後ろを振り返った。


りんちゃん?」

灯里あかり、この男に何もされてない?」

「だ、大丈夫だよ!」

「それならいいけど……買い物の途中だったらごめんね。手に持ってるものだけ買って、一緒に帰ろ」

「えっ凛ちゃんと?」

「うん。そんな男と一緒にいるのはよくないからさ」

「あっ、えっ、ちょっと」


 黄宮は赤峰を俺から遠ざけるようにして、二人で行ってしまった。


 あの様子だと二人は仲のいい友達みたいだな。

 俺と一緒にいる事で、赤峰に迷惑がかかる事も考えた方がよさそうだ。

 黄宮は学校でも綺麗系な女子として知られていて、モテると聞いたことがある。

 だが告白されても、全て断っているらしい。

 理由はクールな性格で、男があまり好きじゃないみたいだ。

 その中でも俺みたいな変な噂が立ってる男は、見るのも嫌なのかもな。


 一人残された俺は、真っ直ぐ家に帰った。


 家に着いて、すぐにソファに寝転がる。

 最近の俺はついてないな。

 彼女に浮気されて、その浮気相手が親友で、学校では俺が浮気したことになってる。

 嫌われ者になった俺にも運良く友達ができたと思ったら、クラスの女子にあんな顔で見られるし。

 俺が何したってんだよ。

 浮気された被害者だろ……。


 ブーッ、ブーッ


 スマホの通知で目が覚める。

 どうやらスマホを片手に持ったまま、ソファで寝てたみたいだ。

 

「いててっ、体が痛い」


 起き上がり座ってスマホを見てみると、そこには赤峰からメッセージがきていた。


「「クラスのグループから勝手に友達登録してごめんね! 今日のこと謝りたくて……もしも暇だったら電話かけてきてくれると嬉しいです」」


 そのあとに「ぺこっ」と書かれた可愛いスタンプが送られていた。

 友達追加して、電話かけてみるか。

 俺は通話ボタンを押す。


「……あっもしもし」

「もしもし……えっと今日はごめん青城あおき!」

「いや大丈夫だよ。それに赤峰が悪いわけじゃないだろ」

「でも帰る事になっちゃったから……」

「なんとも思ってないから大丈夫だって、それより一つ聞きたいことがあるんだけど」

「う、うん、なんでも言って!」

「黄宮とは仲がいいのか?」

「うん仲いいよ! だって幼稚園からずっと一緒で、幼馴染だもん」

「あっそうだったのか」

「今日のりんちゃんは怖そうだったけど、本当は優しくていつも私を守ってくれるんだよ」


 優しいか。あの雰囲気だと信じられないけど、幼馴染の赤峰が言うなら本当なんだろう。

 待てよ赤峰が幼馴染なら、上手くいけば黄宮と友達になれるんじゃないか。

 黄宮は女子との繋がりも多そうだし、仲良くなれば学校で俺の信用も取り戻せるかもしれない。

 

「赤峰、明日の放課後用事ある?」

「ないけど」

「じゃあもしよかったら黄宮も誘って三人で話さないか」

「うん、でもりんちゃん来てくれるかな」

「黄宮には騙すようで悪いけど、俺がいる事は内緒にしてほしい」

「えっうんいいけど、でも仲良くなれるの?」

「大丈夫、俺に考えがあるから」

「わかった! じゃあまた明日ね」

「うん、また明日」


 元から俺の好感度は下がりきってる。

 逆を言えばこれ以上は下がらない、あとは上がるだけだ。

 明日は黄宮と話して友達になってみせる。

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