最終話 嫌われ男子は本気出す
体育祭当日。
学校中の生徒が校庭に集まり、開会式が始まる。
開会宣言をする生徒が壇上に上がって話し始めた。
「悔いの残らないよう、練習でしてきたことを出し切る様に頑張りましょう!」
全校生徒は拍手する。
その合図とともに体育祭は始まり、一番最初の競技百メートル走の位置についた。
ここで俺が練習してきたことを出そう。
順番は一番最後。
次から次へと走っていく生徒を見ていると、緊張してきた。
しかも隣のレーンには親友だった悟がいる。
負けられない。
あっという間に自分の番がきて、先生がスタートの合図をする。
「位置について、よーい……」
パンッ
俺はフライングギリギリを攻めて走り出す。
練習したとおりに行けば誰にも負けない。
よし、半分まできた。
隣には誰もいない。
だがその時だった、隣に悟の姿が見える。
こいつにだけは負けたくないんだ。
一瞬でいい、この一瞬だけ速くなれ。
願いが叶ったのかゴールテープを切ったのは俺だった。
応援していた赤峰と黄宮が喜んでいるのが見える。
勝ったんだ、俺の勝ちだ。
そのあとはクラス対抗の種目が続いて、朝練のおかげもあってか目立った活躍をした俺は、いつのまにか周りの生徒に囲まれていた。
噂の事なんか忘れて、みんなが普通に話してくれてる。
こうして全競技は無事に終わり、クラスでも学年でも俺達は一位になり、その中で最も活躍した生徒が発表される。
「青城奏汰くんは壇上に上がってきてください」
「は、はい!」
本当に選ばれると思ってなかった俺は戸惑いながらも返事をして、全校生徒の目の前に立つ。
マイクの前に立った俺は、緊張していた。
「えっと、体育祭お疲れ様です。練習した成果が出せてとてもうれしかったです。俺はこの日の為に練習をいっぱいしてきました。それは特別な想いがあったからです。体育祭とは関係ない話になりますが聞いてください。俺の学校での噂、あれは全部嘘なんです。あんな話はなかった、そう思ってください。この話を信じるかはみんな次第です。それじゃあこれで、終わりにします」
そう言い残し壇上から下がろうとした俺に、一人の生徒が言う。
「もうそんな噂気にしてねーよ!」
「そうだそうだ、今日のお前は凄かったぞ」
学校中の生徒は、もう噂の事なんて気にしてなかった。
それよりも今日の頑張りを褒めてくれたんだ。
「ありがとう、みんな」
体育祭終わりの放課後、着替えが終わった俺を待っていたのは元カノの美沙だった。
「美沙……」
「今日の奏汰凄かったね」
「うん」
「私、あの時のこと謝りたくて……」
「もういいよ謝らなくて……許したわけじゃないけど、俺には俺の居場所ができたから」
「えっそれって」
「仲のいい友人が一人と……新しく好きになった人が待ってるんだ。じゃあね」
「待って奏汰」
俺は元カノの声を無視して、あの二人のもとに行くのであった。
最終話まで読んでいただきありがとうございます!
このあとに後日談も短いですが投稿してるので、よかったらそちらも読んでいただけると嬉しいです。




