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41精神支柱

クラスメイトを救出して6カ月、優斗が転生して1年5カ月たった。


優斗の体は11歳と5カ月。あと1カ月。待ち遠しい。

玲とあかりの記憶再登録の日が迫っていた。

玲は明日から、あかりは2週間後と決まった。


今日は玲の封印されている移転以降の記憶を再登録する日だ。

玲は10時までに、かけられた幻惑や誘導を全て解かれている。

玲には俺を児島優斗に見える幻惑がかけられていた。

今の俺では優斗に見えない。

12時までの2時間は俺を優斗と信じてもらう時間だ。

12時からは水分補給、食事はなし。記憶再登録のショックで吐き戻す危険を避ける。

午後1時から医師と俺で記憶再登録を説明する。

記憶が再登録された後は玲と俺でおぞましい玲の記憶と戦う。


俺「俺『児島優斗』、久しぶり、玲」

玲「あんただれ、優斗は日本人。フザけたこと言わないで」

俺「玲は召喚で移転したけど、俺、体壊れてさー、なくしちゃたんだ。

神様がこの子と一緒にしてくれた。見かけは違うけど『児島優斗』」

玲「うさんくさいヤツね。消えて」

俺「証拠をみせる。3分だけ聞いて」

俺は俺と玲しか知らないだろう話を聞かせた。

玲は少し驚いているようだ。

これで玲を聞く態勢にできた。

とっておきの秘密の話を2つ、聞いてもらった。


玲「ちょっぴりだけど、ほんとぽいわね」

玲「こっちから質問いい」

俺「いいよ」

玲「去年の夏休み、お盆で花火を見に行った日、覚えてる」

俺「よく覚えてる。玲とはぐれたら、俺が悪いといって、殴られた」

玲「行く前よ、家で何か拾わなかった」

俺「……拾った」

玲「言いなさいよ」

俺「ごめん、玲のパンツ」

玲「違う違う、それね、母さんの若い時の。

優斗が隠して、持ち帰ったと話したら、母さん大笑い。

ほんとに優斗なんだ」

俺「ごめん、ユートの体、気に入らなかった?」

玲「ううん、優斗ならどちだっていい」


午後1時になった。

トコ院長が玲に話す。

トコ院長「雨宮玲さん、あなたは異世界からこちらの世界に来たばかりと感じていますね。

でも違うんです。玲さんがこの世界に来たのは1年5カ月前です。

移転から現在までの記憶は治療のため、封印しました。

移転してから玲さんは心と体を凌辱され続けました。

優斗様が玲さんを見つけ、救出しました。

6カ月前のことです。

救出されましたが、玲さんの心と体は壊れていました。

優斗様と我々で、玲さんの壊れた心と体を癒しました。

今はすっかり治りましたよ。

今から記憶の封印をときますが、今からいうことを覚えておきなさい。

記憶は終わったこと、過去のこと。

現実に玲さんが傷つくことはありません。

しかし、混乱で記憶と現実の見境が付かなくなる時があるでしょう。

そんな時は優斗様を頼りなさい。

玲さん、あなたは優斗様に守られています。

今のあなたなら信じられますね」

俺は玲の手を握る。玲の不安が手から伝わる。

俺「玲、俺が守る」

玲は不安な表情で俺を見つめる。

モモ医師「玲さん、目を閉じて」

玲が目を閉じると、モモ医師は記憶球を操作した。


玲の体がビクンと震える。顔がみるみるくもり、震えだす。

俺は玲の体を抱きしめ、「玲、俺だよ、俺が守ったよ。

もう終わったんだ。安心して」

玲が震えるたび、叫ぶたび声をかけ、抱きしめる。

玲は震え、叫ぶ、平静を繰り返す。

震え、叫ぶ毎に玲を抱きしめ、声をかけた。


最初の1週間は食事もトイレも風呂も寝る時も一緒だった。

4日目になると震え、叫ぶことが少なくなった。

5日目には会話できるようになった。


夜は玲と一緒に寝ていた。

玲が目覚めたので声をかける。

俺「さっき、うわごとを言ってた。夢、怖かったの」

玲「たぶん、奴隷にされた時のこと」

俺「安心して、俺が守る」

玲「お願いね」

俺「やった奴に復讐したい?」

玲「この世界の人間は全部嫌い。

復讐したいかはわからない」

俺「落ち着いたら話そうね、

玲が前に進むきっかけになる」

玲「うん」


玲は着実に回復していく。

7日目、玲は1人で眠れるようになった。

2週間が過ぎたころ玲は女生徒の輪の中に戻っていった。


精神支柱はきつい体験だった。

連続して精神支柱は無理がある。

花田あかりの予定を1週間先に延ばし、

俺は1週間の休養を取った。


花田あかりの記憶を戻す前日、俺は玲にあかりのことを話した。

俺「玲、花田さんなんだけど」

玲の表情が輝き、

玲「花田さん?花田さんも来てるの。

クラスの子は知らないっていてたよ」

俺「うん、来てる。それで、聞いて」

玲「分かった」

俺「花田さんもね、玲と一緒だった。

この世界の連中に酷いことされた。

それで治療を受けてた。

明日、記憶を戻す予定。

花田さんは俺が助けた。

記憶を戻すときも助けたい。

玲のときみたいに」

玲「そう」

玲の顔が赤くなった。

表情がゆがみだす。

まずい。これは怒った合図じゃない。

一番まずい。

俺の人生で3度しか見たことがない表情、

そう、泣くときのしるし。

とっさに玲を抱きしめる。

俺「ごめん、玲、ごめん、玲、…」

しばらく抱いていると玲の震えが止まった。

玲「雄太はいないの」

俺「いるよ、でも断られた」

玲「そうなんだ」

玲は目の涙をぬぐい、俺を見つめる。

玲は可愛かった。

俺を突き放し、ほほをビンタした。

嬉しかった。

玲「なんで私に言うの。

秘密にしないの。

優斗のバカ」

俺「ごめん。玲のこと愛してるから」


    *    *


花田あかりは玲よりも時間がかかった。

最初の1週間は絶えず震えていた。

俺は抱きしめ、声をかけを繰り返す。

7日くらいから夜は寝るようになった。

ただ、寝ると必ずうなされ、起きる。

ほんとに回復するか不安になったころ、光明が見えた。

8日目のことだ。うなされた時のうわごとで、

俺の名を呼ぶようになった。


俺は「優斗だよ、ここにいる。あかりを守る」

そう言うと表情を和らげ寝付く。

それ以降は急速に回復に向かった。

10日目には会話ができるようになった。

2週間たつと、1人で寝るようになった。

3週間であかりを女生徒達の輪に戻した。


俺「ありがとうございました。

女生徒は全員回復しました。

医療ゴーレムへの恩、忘れません」

トコ院長「我々こそ、治療の機会をいただき、感謝いたします。

とりあえず、元患者さんの経過観察をします。

時期が来たら我々は帰還します。

学校のため残る2人をよろしくお願いします」


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