39希望と憂鬱
クラスメイトを救出して2カ月、優斗が転生して1年1カ月たった。
優斗の体は11歳ちょっと。
あと5カ月。待ち遠しい。
玲の病室にいる。
玲は5歳の精神状態。
13歳の体。
玲「優斗、あれ見せて」
俺「昨日も見せたよね。またー」
玲「優斗、私の言うことを聞くの。
悪い子。
悪い子はお仕置きよ! 」
使徒のジングルを見せる。
ジングルを見せるとジングルのマネをして踊る。
俺に踊りを見せてニッコリ笑う。
玲は天使だった。
そうだ。思い出した。
俺は玲の家で一緒に遊んだことを思い出す。
遊んでいても、この番組が始まるとテレビの前に直行して、口を聞かない。
遊んでほしくて拗ねる俺のことを無視する。
テレビ番組が終わると俺の前で踊る。
踊って俺に微笑む。
ジングルと同じように。
その時、気づく。ジングルは玲だ。
俺の心の記憶にある玲が踊る姿。
俺はイステナ様が踊っていると思っていた。
違う。俺の心に刻まれた玲が踊る姿だ。
イステナ様は俺の心の重要な記憶である玲をジングルにしてくれたのだ。
涙が自然に流れる。
玲「優斗、泣いてるの。どこか痛い」
俺「ううん」
俺は玲を軽く抱きしめた。玲の甘い香りがした。
* *
女生徒13人の治療が終わった。
タマに会話、読み書き、一般常識の教育をお願いした。
彼女たちは神聖聖女旅団の畑や病院の手伝いをしている。生活は病室を当てているが、将来的には彼女らの寮を確保しようと思っている。
会話ができるようになれば外出も許可する。
3人ほど会話が可能になったので外出を許可した。
3人は魔道具工房の男子生徒達と交流している。
ただ、男子生徒の病院、神聖聖女旅団への立ち寄りは禁止。
ここは羊の園、オオカミは侵入禁止。
俺はまだ子供だからOK。
ポムと魔道具工房の経営について打ち合わせを行う。
俺「任せっぱなしですまない。
現在の商売状況を教えて」
ポム「売り上げは月、金貨7千枚、
必要経費は金貨1200枚、純益は月5800枚。
水の魔道具の売り上げは頭打ちです。
大きくは伸びませんが安定しています」
俺「近くに工房機能を移せないかな。
規模は3倍くらいの生産ができる所が良い。
物件を当たっといて」
ポム「了、私も手狭に感じていました。
ただ、私とポミーでは今の規模で手一杯です。
3倍の規模となると、増強手段が必要です」
俺「男子生徒の中で魔道具と商売に興味のあるやつが5名いる。
向いてるってタマが言ってる。
ポムの元で育ててほしい。
多少だけど増強手段になると思う。
足りない能力が分かったら、
タマがチュートリアルを組むって」
ポム「教育といっても、商売上で命令も必要です。
彼らは私の命令に従うでしょうか」
俺「そこは俺から彼らに説明する。
受け入れない場合は諦めさせる。
仕事は教育込なので、
5人で1人分の仕事ができる位に考えてくれるとありがたい」
ポム「了」
俺「工房機能の移転ができたら、いよいよマジックバッグを販売しようと思う。
人員の増強も含め、問題点を洗い出して」
ポム「了。
マジックバッグですか、高額商品です。
変な奴に目を付けられると大変では」
俺「不自然に高機能とならないよう、機能を絞る。
運べるのは荷馬車1台程度、後、時間経過する。
金貨200枚くらいで売り出す」
ポム「ポミーに市場調査をさせます」
ポム「ありがとう」
* *
工房の庭のベンチに雄太を連れていく。
俺「時間を取ってくれてありがとう。
人に聞かれたくない話する」
雄太「あー、いいぜ」
俺「真剣な話をする。
真剣に答えてほしい。大丈夫?」
雄太「分かった。約束する」
俺「雄太、花田あかりと付き合ってるよね」
雄太「ああ」
俺「どの程度、真剣、将来結婚するつもり」
雄太「まて、あかりとは映画見たり、ショッピングセンター行ったりしてた。
フードコートでご飯を食べた。今はその段階」
俺「内緒の話をする。
誰かに絶対言わないで、誓える」
雄太「そんなの俺に話していいのか。
誓うよ、話さない」
俺「花田あかりはね、この世界の奴に酷いことされた。
本当に酷いこと。
雄太より千倍くらい酷いこと。
精神が壊れた。
それに死ぬ寸前だった。
今は治療中、回復に向かってる。
治療のため彼女の精神年齢を0歳に戻した。
今、花田の精神年齢は2歳半、物心つき始めるころ。
後4カ月で12歳になる。
今から4カ月間、雄太は花田と付き合って欲しい。
雄太が花田の精神支柱になって欲しい。
精神支柱とはね。
花田の頼れるスーパーマン。
どんな難関でも精神支柱があれば乗りこえられる。
そんな存在。
花田が挑む難関はね。
移転してからの酷いことされた記憶。
誰か花田を支えてやらないとまた壊れちゃう。
その花田を支える誰かを雄太に頼みたい。
でもね、花田は雄太に依存する。
雄太は一生、花田を大切にしてね。
花田を裏切ることは花田を殺すことだから。
雄太は花田が好きだとおもったから、お願いした。
他にも方法はあるから、断っても構わない。
重い話だから、返事は今じゃなくて良い。
でも、そんなに待てない。
花田の精神年齢が進んじゃうから。
明日の朝まで考えて、返事は明日で」
雄太は断ってきた。
13歳に一生に関わる覚悟を求めることは理不尽だろう。
雄太に心の負担をかけたくなかった。
気づかれぬよう雄太に睡眠弾を撃ち、素早くマジックポーチに収容する。
病院のミツ技官に頼み、雄太の昨日から今日までの記憶を薄めた。
努力しないと思い出せない程度に。
雄太には風邪をひいたと思い込ませ、
私室に送り寝かせた。
プランBで行くしかないか。
玲にどう話せば良いか。
今すぐ玲に殴られたい。
ミソギをすませればすっきりするのに。
こんな気分じゃ玲にも、あかりにも会えない。
今日は気分が重かった。