38召喚を止めよ
クラスメイトを救出して1カ月、優斗が転生して1年たった。
優斗の体は11歳。あと半年。待ち遠しい。
玲の病室にいる。
玲は3歳の精神状態。
13歳の体。
玲は神聖聖女旅団の看護師にミルクを飲ませてもらっている。
飲み飽きたのか、何やら不思議な動作をしている。
玲には日本語で話す。
俺「玲、おいしいかい」
玲「しらない、優斗、お馬さんやって」
玲はにこりと笑い、天使の様な澄み切った目で俺を見つめる。
玲が生きててよかった。玲を救えてよかった。幸福感が俺を包む。
玲を乗せて馬のまねをする。
玲がキャッキャと声を上げて笑う。
このまま時が止まってもいい。そう思えた。
俺「また明日来るよ。玲、早く成長してね」
玲に会うのが俺の日課になった。
玲と別れた後、ローラの病室に向かう。
今日はローラが退院する日だ。
俺「ローラ、迎えに来たよ。準備はできた?」
ローラ「荷物は服だけよ」
俺「工房への道に服屋がある。
見ていこう」
魔道具工房まで1kmほどなので、歩いていくことにした。
服屋には気に入った服はなかった。
下着を数セット買った。
俺「工房にはルーシーとマリー、姉妹だよ。
生活の仕方を教えてくれるって、着いたら紹介するよ」
工房の仲間にローラを紹介した。
ルーシーとローラ、マリーの3人は生活に必要な小物や服を買いに出かけた。
ローラが早くここの生活に馴染みますように。
男子生徒の後期救出組の救出から1カ月が経っている。
首輪の跡も目立たなくなった。
彼らにも外出許可を出した。
雄太達が冒険者ギルドに案内するそうだ。
嬉しそうにしている。
まあ1度は経験が必要だよね。
失望するにしても、経験することは重要だ。
雄太達前期組は会話と読み書きが上達し、町の人とも普通に会話できる。
教育IDの効果に驚かされる。
タマから魔法や武術、錬金術などの学習を始めるものが出始めたと聞いた。
彼らも将来の展望を持ち始めたのだろう。
頑張って生きていって欲しい。
* *
少し休みすぎた。
日本人的勤勉さを取り戻そう。
魔道具工房で会議を始める。
今日は病院からララ、リリ、ルルも呼んでいる。
俺「アンダシア王国の異世界召喚による奴隷取得を止めたい。
レオに計画を頼んだ。
レオ簡単に説明してくれ」
レオ「本作戦名は『召喚を止めよ』です。
王都にある召喚所の粉砕、
召喚士を殲滅、
戦奴調教所の調教士の殲滅を同時に決行します。
以上です」
俺「今回はララ、リリ、ルルにも参加してもらう予定だ。みんないいね」
ポム「何か準備はいりませんか」
トラ「我々と戦力(スパイゴーレム、エージェントゴーレム)がマジックバレットとストーンバレットを使えるようにできないでしょうか」
タマ「できるよ。
優斗は管理者権限中級持てるから、魔法の専用スロットを登録できる。
登録のした魔法は特定の魔法IDに解放できる」
俺「やり方わかんない」
タマ「チュートリアルを組みます。
1週間あれば、優斗なら楽勝」
タマ「トラは戦力と忍者達を鑑定し、魔法IDのリスト用意して」
俺「リリ、召喚所だけど、ピンポイントで爆破できる」
リリ「どの程度の大きさでしょうか」
俺「病院の3倍くらい」
リリ「ボムの魔法を使用します。問題ありません」
俺「ララ、トラ達から情報仕入れといてね」
ララ「了」
俺「決行日は2週間後を予定。各自準備、よろしく」
* *
『召喚を止めよ』を実行する。
王都の拠点にいる。
俺とタマ、忍者6人。
時刻は深夜3時少し前。
俺たちの目の前には大きな半透明のスクリーンが3枚浮かぶ。
ララが提供する統合戦術情報である。
真ん中のスクリーンにはリリの遠隔視が映し出される。
上から見た召喚所がリアルタイムで表示される。
召喚所の中央に十字の印が示される。
十字の印はリリの遠距離攻撃のマークだ。
左のスクリーンでは召喚士18名と弟子26名が赤の三角で、スパイゴーレムは緑の三角で、スパイゴーレムの照準が緑の十字で表示されている。
赤の三角は対象が生存していることを示す。対象が処理された場合、赤の三角は白い三角に変わる。
右のスクリーンでは左と同様のマークで、調教士50名と、スパイゴーレム、スパイゴーレムの照準が表示されている。
スクリーンには現在時、作戦決行時刻、
カウントダウンも表示され、数字が減っていく。
10秒前からララが声を出してカウントダウンする。
緑の十字、スパイゴーレムの照準は一斉に赤の三角に重なる。
0が読まれたとき、画面上の赤の三角が次々と白の三角に変わり、全て白の三角になった。
同時に中央のスクリーンの召喚所が煙に包まれる。
ララがカウントアップを始めている。
ララが5を読んだとき、緑の三角、スパイゴーレムが蜘蛛の子を散らすように四散し、離脱していく。
まったく実感のないまま、ゲームのように作戦は完了した。