22ルーシーとマリー
ポム、ポミーと一緒にダナ遺跡を歩く。
ダナ遺跡の崩れた壁の陰に、1人隠れている人を発見した。
ジッとしているので、ポム達に合図し、そいつを避ける道順を進もうとした時、そいつは矢を放った。
ポム達に隠れるように言い、そいつに向けてマジックバレットを撃つ。
バレットには麻痺とデスを込める。
仕留めたか。確認に向かうと、まだ息があった。
壁にもたれ俺を睨んでいる。
「母さん、ダメだった」と子声でつぶやいた。
その瞬間、俺の中のユートが爆発した。
助けろと叫んだ。
俺は直感した。
俺は間違いを犯した。
俺「ポム、来い。こいつを背負え。
ポミー、保守ゴーレムに連絡、デスを解術できるゴーレムを待機させろ」
ポム、ポミー「了」
俺「入り口に走れ。全速力」
俺たちは走った。一刻を争う。
こいつを死なすと、ユートは俺を許さない。
デスの解術は間一髪で間に合った。
保守ゴーレムに宿泊施設を頼み、そいつを寝かせた。
ポミーにそいつの看病を頼んだ。
* *
翌朝、ポムに起こされた。
既にポミーがそいつから状況を聞き出していた。
名はルーシー、女、13歳、両親と妹、4人家族。
ダナ遺跡は周辺の民の聖地で、両親はダナ遺跡の社守である。社守の仕事はときたま訪れる冒険者や研究者から遺跡を守ること。
4日ほど前から訪れた調査隊が遺跡を破壊するので、注意に行ったと言う。
いつまでも両親が帰らないので、ルーシーは心配になり、両親を探しに行った。
調査隊の軍人が何かを埋めてるのに遭遇する。
不審に思い、軍人が去ったあと掘り起こすと、母の亡骸だった。
隣を堀おこすと、父の亡骸。
ルーシーは絶望と恐怖で呆然となる。泣くことすらできない。
どれだけ時間がたったのだろうか、辺りは暮れかけていた。
家で待つ妹のことを思い出した。胸騒ぎがし、ルーシーは急いで家に帰ると妹のマリーはいなかった。
遺跡をくまなく探したが、いなかった。
両親の埋められている場所に石を積み墓標を作る。
父母の墓の前で復讐を誓った。
その後、優斗たちと遭遇する。
父母、マリーの仇を討つため、一矢を放った。
俺「ルーシーは落ち着いているかい」
ポム「落ち着いています」
俺「ポミーはどこまで俺たちのことを話した?」
ポム「調査隊とは無関係と」
俺「ありがとう。今からルーシーに会う」
俺は部屋に入と、座っていたポミーが立ち上がり、頭を下げた。
俺「俺の名前は優斗。君を傷つけてすまなかった。
俺は君の敵ではない。
信じてほしい」
ルーシーはポミーを見た。
ポミー「ルーシーは分かってくれました。
ルーシー、優斗に返事をしてあげて。お願いします」
ルーシー「優斗さん、母さん、父さんを殺してないの」
俺「ああ、殺してないよ」
ルーシーはそれを聞いて泣き出した。
大泣きしている。
ポミーがルーシーの背中を優しく撫でている。
俺はしばらくルーシーを泣かせたままにした。
泣き声が収まったころ、話を続けた。
俺「ルーシーと呼ぶよ。
ルーシー。妹さんの名前と年を教えて」
ルーシー「マリー、10歳」
10歳か、殺されている可能性は低い。
昨日、調査隊とすれ違った時のことを思い出してみた。兵士が小柄な奴を連れていた。
縄で腰を縛られていた。
たぶんマリーだろう。
調査隊はイステで1泊したはずだ。
少女を王都には連れ帰らないだろう。
たぶん、イステで売る。
俺「ルーシー、マリーは生きている。
俺は君を殺すところだった。
罪滅ぼしに、マリーを助けてあげる。
復讐も手伝うよ」
今は10時、出来たら夕方までにはイステに着きたい。
間道ではポムにルーシーを背負わせ、走った。
夕方にはイステに着いた。
今日の関所の門番はブライとヒンギだった。
俺「ブライさん、ヒンギさん、こんにちわ」
ブライ「おう」
ヒンギ「お前、エスペリに行くとか言ってなかったか」
俺「行きます。今日は友達とお別れ会です」
ヒンギ「元気でな」
俺「ありがとうございます。
聞きたいことがあるんですが。
昨日、調査隊、来ましたよね。
その時、背の低いのいませんでしたか。
腰に縄してた奴です。
知り合いかもしれないので、行方を調べてます」
ブライ「今日、出ていく時は、いなかったな」
ヒンギ「たしか、昨日はいたぞ」
俺「ありがとう。参考になりました」
マリーの奪還作戦を練るのと、宿泊場所を確保するため、宿を探した。宿を選ぶ時間が惜しいので東門に一番近い宿に決めた。
宿では、まずマリー奪還戦の役割を3人に説明した。
俺はマリーを奪還。
ポムには旅に必要な食料、毛布などを調達。
ポミー、ルーシーはポム、ポミー、ルーシー、マリーの旅装束の調達。
ポム、ポミーに物資調達に必要な金貨を渡した。
ルーシーからはマリーの身体的な特徴を聞き出した。
俺「じゃ、作戦開始、今、夕方4時半だから、6時までには宿に戻ること。いいね」
皆「了」
イステに奴隷商は1軒しかない。
俺は歓楽街に近い奴隷商店に向かった。
店に入り、応対した店員を誘導で、俺を貴族の息子に勘違いさせ、店主を呼び出した。
店主にも同様の誘導を施す。
店主にマリーに該当する条件を言い、奴隷を連れてこさせた。
少女が3人連れて来られた。ルーシーから聞いた容姿ですぐにマリーを特定できた。
俺「名前を教えてくれるかな」
少女は小声で「マリー」
俺「お姉さんの名前を教えてくれるかな」
少女「ルーシー」
店主にマリーを買ったと勘違いさせ、マリーの奴隷の首輪を外させた。
奴隷商は奴隷の逃亡を防ぐため、奴隷に服を着せない。マリーも服を着ていなかった。
ここは町中、裸の少女は連れて歩けない。
店員に確認すると、マリーの服と靴は処分され、もう無かった。
仕方なく、店員に奴隷のワンピースを用意させ、それをマリーに着せた。
店主、店員と奴隷少女2名にはイステナの使徒証明を見せる。これで後片付けは終わった。
マリーと共に、奴隷商を後にする。
マリーは不安なのか、歩きながら泣き出した。
どうあやしたら良い、かわからない。
仕方なく誘導で泣くのを止めた。
俺「マリー、ルーシーが待ってる。もう少しだから」
マリーはその場でうずくまり、動かなくなった。
俺「ルーシーが心配してる。
おぶってあげるから、急ごう」
マリーを背負い、ホテルに急いだ。