20保守ゴーレム
タマ「クエストが完了しました。
これで、優斗は利用者権限上級です。
おめでとうございます。
まだ、中間点です。
次は管理者権限を目指しましょう」
俺「ありがとう」
タマ「優斗、耳寄りな情報をお知らせします。
保守ゴーレムは手先が器用なんですよ」
俺「何の話?」
タマ「そのままです。
そこの保守ゴーレムで試しましょう。
コンテンツの教材だったマジックランプの魔法陣を覚えていますか。
あれを保守ゴーレムに書かせてみましょう」
2体の保守ゴーレムに呼びかけた。
俺「あのー、そこのゴーレムさん。
お願いがあるんですが?」
2体の保守ゴーレム「御用は何でしょう?」
2体同時の返事で煩わしい。
タマ「区別が必要ですね。
2体に名前を付けちゃいましょう」
俺「勝手なことして大丈夫かな?」
タマ「何とかなるでしょう。だめなら、無しで」
俺「あの~、お二人に名前を付けたいんですけど、ゴーレムさん的に問題ありますか?」
2体の保守ゴーレム「問題ありません」
俺は少し考えて、
「俺の右側のゴーレムさんの名前は『ポム』、男名です。年齢はご自由に。
俺の左側のゴーレムさんの名前は『ポミー』、女名です。年齢はご自由に」
ポムとポミーに紙と筆記用具を用意してもらった。
俺はマジックランプの魔法陣を紙にラフ書きし、それを2人に清書してもらった。
コンパスも分度器も使わず、見事な魔法陣を書き上げた。
ポムとポミーの書いた魔法陣は発動した。
タマはしたり顔で、
タマ「優斗、私の言いたいこと、分かります?」
俺「2人に清書してもらうのか」
タマ「も~ 2人を強奪するんです」
俺「怒られるでしょ」
タマ「え! 怒られるんですか?」
俺「怒られないの?」
タマ「一緒に付いてくるようにお願いしてみましょうよ」
俺「ポムとポミー。俺に付いてきてくれる?」
ポム「優斗様、お誘いいただき、ありがとうございます。
残念ながら、私もポミーも優斗様に付いていけません。優斗様には権限がありません」
俺「権限とは?」
ポム「管理者権限です」
俺「近いうちに管理者権限初級を取る予定なんだけど、初級でも大丈夫かな」
ポム「大丈夫です」
俺「ポム、ポミー。早く取って迎えに来るからね。
待ててね」
ポム、ポミー「はい」
タマ「帰ったら管理者権限初級のチュートリアルを構築しましょう。
早くポム、ポミーを迎えに来ましょう」
俺はイステナ様にお祈りを捧げる。
俺「イステナ様、本日、利用者権限上級を取得できました」
イステナ「おめでとう、優斗。お祝いにプレゼントがありますよ」
俺「なんでしょうか」
イステナ「今は秘密です。1年後に教えますね」
俺「1年も待つんですか。でも楽しみです」
イステナ「きっと私に感謝しますよ」
俺「あと、ポム、ポミーをゲットしました。
ポム、ポミーはここのゴーレムです。
まだ、管理者権限がないいんで無理ですけど、権限取ったら迎えに来ます」
イステナ「良かったですね」
あと、今日は油断していたことなどを報告した。
イステナ「今日は疲れたでしょう。
ここは安全です。おやすみなさい」
イステナ様が手をかざすと、俺は意識をなくした。
* *
俺は夢を見ている。
イステナ様とタマが話をしている。
タマは俺にしか見えないはずだ。
イステナ様と話などできないはずなのに。
イステナ「本当に都合の良いクエストを作りましたね」
タマ「はい、我ながら傑作でした」
イステナ「あなたの主人、教育ゴーレムにも、あなたの優秀さを伝えておきます」
タマ「こちらこそ、ポムとポミーの件、保守ゴーレムに話を通していただき、助かりました。
これで優斗様も管理者権限取得に熱が入ります」
イステナ「後は保守ゴーレムたちが上手く『子だね』を移植するだけね」
* *
俺は朝起きると、ベッドに裸で寝ていた。
服は丁寧にたたまれていた。
昨日はイステナ様にお祈りをして、そのまま寝てしまった。
服を脱いだ記憶はない。
たぶん、ポムとポミーが気を利かせたのだろう。
俺はポムとポミーに見送られ、物流センター保守区画を後にした。