16冒険者登録
暫く歩くと町の入り口に差し掛かった。
入り口には関所があった。衛士もいる。
通行する馬車や人がいるが止められる者はいなっかった。
検閲はないようだ。
俺は衛士に近づき、話をした。
俺「旅で来ました。入っていいでしょうか」
衛士「かまわん」
俺「質問して良いですか」
衛士「手短にな」
俺「今日の宿探してます。どこで聞けばいいですか」
衛士「冒険者ギルドで聞け、直進300m、進行右側」
俺「ありがとうございます」
冒険者か、楽しみだ。ルーキーとして絡まれるかも、楽しみだ。
冒険者ギルドは直ぐに見つけた。せっかくだから、登録しよう。
中に入ると、閑散としていた。まあ、今はお昼の時間、朝夕は混むのだろう。
正面に受付が2か所、1か所はクローズの札が掛かる。1か所は男性が座り、下を向き、書き物をしている。受付には誰も並んでいない。俺は受付に進んだ。
俺「こんにちわ」
受付「ああ、こんにちわ。今日はどんな用件でお越しかな」
俺「仕事がしたくて、村を出てきました。ここで仕事を紹介してくれると聞きました」
受付「冒険者ギルドは短期の仕事だけだが良いかい」
俺「はい」
受付「冒険者ギルドは初めてか」
俺「はい」
受付「冒険者ギルドで仕事をするには登録がいる。お金が必要だ。登録料は銀貨4枚。持ってるかい」
俺「はい」
俺は銀貨4枚を渡した。
受付は銀貨を受け取り、質問しだした。
名前、年齢、出身地、魔物と戦った経験、万一死亡した場合の遺品の受取人。年齢は15歳と答えた。
オーガと戦ったことがあると言ったら「本当か?」と疑われてしまった。
遺品の受取人は「いない」と答えた。
答え終わると、暫く待つように言われた。
受付の左手に待合スペースがあり、机と椅子が並んでいる。
そこで掲示板を眺め、座って待った。
15分程待つと受付が俺を呼び出した。
受付「これが会員証だ。
なくしたり、他人に渡すな。悪用されるぞ」
渡された会員証は軍隊の認識票の様な金属プレートで、表に俺の名前が、裏にイステ市と刻印されていた。
受付は仕事の受け方、完了報告のやり方を教えてくれた。
掲示板に仕事の依頼が張り出されている。
依頼の内容を読んでみると、農家の手伝いが3割、工事の工夫3割、護衛業務が2割、その他1割だった。料金は銀貨2枚~8枚、護衛業務はギルドの人物保証が必要なようで、誰でも受けられるものではないと書かれていた。
俺は今夜の宿を紹介してもらおうと再度、受付にいった。
俺「衛士さんに、ギルドは宿を紹介してくれると聞いたのですが」
受付「ああ、字は読めるな。
短期は宿屋だ、長期は下宿、借家はここでは紹介しない。安い順だ」
といって2枚の張紙を指さした。
俺「はい、おすすめはありますか?」
受付「不良なのは外してある。
全部おすすめだ。
張り紙の横に町の地図がある。
場所は地図で知らべろ」
宿屋は1日、銀貨2枚から銀貨8枚。
下宿は月、金貨3枚から20枚。
今日は宿屋に止まる。
今日明日で下宿を探すことにした。
下宿を決めた。
住宅街のお屋敷の一つ、男性使用人小屋の1室を借りた。
広さは15畳程、家具付き、シーツの交換は週1回、食事なし、トイレ、風呂は使用人さんと共同、使用人小屋の台所、食堂は使用可。
おまけに、洗濯を銅貨5枚で使用人に頼める。
お屋敷の主人は中年の上品なご婦人で、町の有力者の関係者だという。
使用人にも紹介されたが、皆、癖のない善人だった。
使用人頭から「女性の連れ込みもOKです」と耳打ちされた。
当分関係ないだろう。
下宿を決めた後、町を散策した。結構な広さがあり、3日かかった。公設市場、雑貨屋、服屋、靴屋、武器屋、防具屋、道具屋、薬屋、家具屋、鍛冶屋を回った。
歓楽街もあったが、通り過ぎるだけで店には入らなかった。
ナジ村にはなかった学校や教会もあった。
俺は町を回りながら、服、下着、靴、ブーツを買い足した。武器屋で大ぶりのナイフを1本、普通のナイフを3本、上等な砥石を買った。
買うものは無かったが、道具屋に入った。
俺「マジックバッグとか置いてないですか?」
主人「マジックバッグはないが、マジックポーチならある」
俺「見せてもらえませんか?」
主人「ただじゃ見せられないな」
俺「見るのにお金いるんですか」
主人「何か買ったら見せてやる。金貨2千枚の品だぞ」
俺「見た目以上に入れられるんですよね、重さも増えないんですよね。中では時間経過しないんですよね」
主人「ああ、沢山入るぞ、重さも増えない。時間経過ってなんだ。分からん」
俺「中に熱いシチューとか入れたら、何時までたっても熱いままとか」
主人「そんなすごい機能、聞いたことないぞ」
この世界のマジックバッグは時間経過はするみたいだ。俺が機能追加すれば良いだけだ。
俺はマジックランプを買った。金貨20枚、高かった。
主人はマジックポーチを触らせ、中に大きなものを入れて持たせてくれた。本物だった。
俺はマジックポーチを鑑定した。
マジックポーチの口を開け、中を覗くと入り口に魔法陣が見える。
ポーチの口を取り巻くように数十個の魔法陣が見えた。
重要なのはこの魔法でマジックポーチが可能ということだ。
仕組みを解析すれば再現できる。
俺の手で作れる。
売ることもできる。
俺「マジックポーチは誰が作ったのですか」
主人「東の大陸のガルアリスで作られていると聞く。
古代文明人の遺品があって、それをコピーした品だそうだ。
東の大陸は10年前から戦争状態だ。輸出が途絶えて、今じゃ値段が10倍以上になった。
昔は金貨200枚もあれば買えた」
下宿に帰って、タマを呼び出した。
俺「タマ、マジックポーチがあった。
魔法陣で構成された魔道具だった。
魔法陣のコンテンツをチュートリアルに入れてくれ」
タマ「優斗の希望は既に聞いています。
利用者権限中級に魔法陣の基礎関連を入れてあります。
まだ組み立てていませんが、利用者権限上級にも魔法陣に関する研究を組み込む予定です」
俺「見たマジックポーチは時間経過を止める機能が無かった。
この機能を追加するにはどうすればいい」
タマ「時間関連は管理者権限が必要です。
頑張りましょう」
俺「来週から週5で取り組む。よろしくな、タマ」
タマ「了」