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アルパカ君は、パンが嫌い

作者: 杜来 リノ

サラリとお読み下さい。

 

 お昼ご飯の時間は、誰もが楽しみにしている時間だと思う。

 けど、私にとっては苦痛とまではいかないけど、決してくつろげない意味不明な時間なのだ。


「お待たせしましたぁ……」

「遅ーんだよノロマ。グズ。俺が腹減り過ぎて死んだらどーしてくれんだよ。あ? お前責任取れんのか?」

「ご、ごめんなさい。けど、売店が混んでて……」

「水曜日はキャベツパンの限定販売の日だから混むって知ってるよなぁ。だったらもっと早く動けよ」

「はい……」


 ──校舎裏の繁みに、ぽっかりと空いた三畳ほどの空間。そこに咥え煙草で座る男子生徒にパンの入った紙袋を差し出し、代わりに五百円を受け取った。彼はズボンのポケットから携帯灰皿を取り出し、そこに煙草を捻じ込んだ。


(こういう所、律義だなぁ)


 私は自分のお弁当を持って座った。そして二人で並んでご飯を食べる、訳ではなく、私が座ったのは彼の膝の間。何と言うか、ものすごくカレカノっぽいポジショニング。でも、私達は付き合ってはいない。だからいちゃいちゃしたり会話を楽しむ訳ではない。どう考えても普通の距離感じゃないのに、ひたすらお互い無言でお昼ご飯を食べる、という謎時間が過ぎて行くだけ。今の状況ははっきり言って意味不明過ぎて辛い。私は彼に気づかれない様に、口の中で何度も溜息を吐いた。


 最初は紳士だったのになぁ。金色のロゴが入ったダブダブの白トレーナーに黒のパンツ。ピンと立った耳にはピアスがバシバシついていて、何と言うかこう、”ワル”っぽいオーラを出しながらの丁寧な物腰に惹かれていたのに。


 単純に、見た目で判断していた私が悪い。彼を、優しい草食動物だと思い込んでいたから。


「……おい」

「はい?」

「さっきから何なんだよ。溜息ばっかつきやがって」


 あ、バレてた。


「ううん、別に何も」

「あっそ。ま、どーでも良いけど。俺の前では溜息とかつくな。気分悪ぃから」

「うん。ごめんね」


 謝る意味がわからないけど取り敢えず謝った。あぁ、今日のお弁当は大好きな”ウズラ卵の肉巻き”が入っていると言うのに全然味が分からない。


 私はお箸で卵をコロコロと転がしながら、初めて出会った時の事をぼんやりと考えていた。



 ********



 高校の入学式。そこで真っ白な男の子を見た。真っ白、とは心の問題とかじゃなくて、単純に見た目の問題。ウチの学校は『人間と亜人種の共学』が売り。その真っ白な男の子も亜人種だった。だけど、厳密には同じ教室で机を並べて一緒に勉強する訳じゃない。何故ならば、亜人種のコ達は皆『エリートクラス』だから。彼らは人間と見た目も違うけど能力も違う。何もかも、人間の上を行っているのだ。


 では彼らだけの学校を作れば良いと思われるだろうけど、それがそう上手くはいかない。能力が高い分、彼らはとっても気難しい。エリートクラスは教師陣も亜人種だけど、日常生活のフォローまではしない。だから、入学試験の成績と面接の受け答えで『適正』と選ばれた生徒が亜人種生徒の『お世話係』に任命される。


 そこで私は、一人の男子生徒の『お世話係』を仰せつかった。それがキリノ・アリアガ君。入学式の時に見た、純白の男の子。


 アリアガ君はアルパカ獣人。真っ白い毛並みの獣頭獣人で、お世話係として初めて対面した時の優しい笑顔と穏やかな物腰に、思わず見惚れてしまった。


「キリノ・アリアガです。よろしく。えっと……」

「あ、あの、私は寺野てらの 実花みかと言います。よろしくお願いします」

「……ティラノ?」

「テラノ、です」


 真黒な瞳に紅い目尻。そんな目を優しく細めてゴメン、とはにかんだ様に笑う彼はとっても可愛くて、私はこんな彼のお世話係になれて本当にラッキーだったな、と思っていた。


 ──けれど。


 アリアガ君が優しく穏やかだったのはたったの一ヶ月だった。もしかして、私が”あの現場”をうっかり見さえしなければずっと優しくて穏やかなままだったのかもしれない。


 アリアガ君は入学当初からお昼ご飯を教室で食べたがらなかった。聞くと「足を伸ばしてのんびり食べたいから」だと言う。だからいつも外で一緒に食べていた。亜人種の中でも獣人は大体、お世話係と共に外でご飯を食べたり休み時間をのんびり過ごしたり、が多かった様に思う。


 私のクラスは『お世話係』の生徒で構成されたクラスだったから、毎回アリアガ君に付き合う為に教室を出ていってもクラスで浮くなんて事もなかった。それに、アリアガ君はとっても頭が良いのでいつもご飯を食べた後で勉強を教えてくれた。ノートを見るのにちょっと接近したりもするし、私は本当に幸せな時間を過ごしていた。だから、その紳士なアリアガ君とお別れする日が来るなんて思ってもみなかった


 ◇


 その日。私はお弁当を持ったまま、いつもの場所とは反対側に向かって走っていた。同じく獣人のお世話係である友人から『ごめん! 財布机の中に置いて来ちゃった! 届けてくれると嬉しい!』とSOSメッセージが届いたからだ。山猫獣人である日比野ひびの君は、友人の膝枕でお昼寝するのがお気に入りらしく、しかも一旦寝るとなかなか起きないらしい。


「ありがと、ごめんね」

「ううん、大丈夫」


 財布を無事に届け、ついでに日比野君の愛くるしい寝顔も見られた。ほっこりと温まった胸を抱えたまま、近道をしようと校舎と校舎の隙間を通っていた。その途中で私は見てしまった。あの穏やかで優しくて紳士なアリアガ君がだらしない格好で座り、煙草を吸っている所を。


「あ、アリアガ君……?」

「ん? あ、やべ」


 やべ。だなんて台詞がアリアガ君の口から出て来るなんて。


「あの、煙草(それ)……」

「……チッ」


 わぁ、舌打ちまでされた。


「何だよティラノ。何でこんなトコいんだよ」

「寺野だってば。亜子(あこ)にお財布届けに行っただけだよ。アリアガ君こそ何でこんな所に?」

「見りゃわかんだろ? 煙草これ吸いに来たんだよ。ったく、タイミング悪ぃなお前」


 アリアガ君は不機嫌そうな顔で、煙草を地面に押し付け消していた。


「あの、アリアガ君」

「あ? 何? 説教とか勘弁してくれる? これまで”紳士なアリアガ君”を演じてやってさぁ、勉強まで教えてやったんだからいーだろ?」

「そうじゃ、ないけど……」


 ──いやそんな事あるけど。学校で煙草とか吸っちゃ駄目でしょ。それに、嘘つくなんてひどい。私は、アリアガ君を優しい人だと思ってたのに。真っ白な毛並みに相応しく、心も真っ白なんだと思ってたのに。


「……私、教室行って良い?」


 何か、ショック過ぎて一緒にお昼ご飯とか食べたくない。


「何で?」

「何でって……」


 そう言われると実際の所、何でなんだろう。アリアガ君が思った通りの人じゃなかったから? それとも騙されてた事が嫌だった? でも、良く考えたら彼、別に嘘はついてないんだよね。あれ? じゃあ私が勝手に期待して、勝手に裏切られた気分になってるだけ?


「ううん、やっぱり一緒に食べる。行こう、アリアガ君」

「……」


 アリアガ君はまたもや舌打ちをし、スタスタと先に歩いて行ってしまった。私はその後を追いかけながら、それでもやっぱり、前のアリアガ君が良かったなぁ、と勝手な事を思っていた。



 ********



「ミカ、じゃあ後よろしくね?」

「うん、了解」


 ──今日は急な委員会の入った亜子に頼まれて、日比野君とお昼ご飯を食べる事になった。日比野君はご飯を食べた後、お昼寝をしないと午後から動けないらしい。けれど、一人で敷物の上とかで寝るのは無理らしく膝枕じゃないと寝られないみたいで、それで私が代わりを引き受けたのだ。


 アリアガ君には特に何も言っていない。いつもだって、何となく中庭に集合して、アリアガ君がお昼ご飯を持って来てない時は私がパシらされたり意味不明に膝の間に座らされるだけだし。この恥ずかしいポジションでご飯を食べる様になったのは、煙草現場を目撃した後から。いきなり、「ここに座れ」と命令をされたのだ。


『な、何で?』

『嫌なら嫌って言え』


 それしか言わず、後はじっと見上げて圧をかけてくる彼に対して拒否なんて出来る訳がない。


 それでいて無言でご飯食べるか、時々訳分かんない事で怒られるか、なんだから一々言う必要は無いと思う。あ、今日はアイツいねーのか、くらいにしか思わないよきっと。


「日比野君、お昼寝係が私で良いのかなぁ」

「あ、ミカだって言ってないんだ」

「何で?」

「ほら、日比野君って山猫のクセにいつもポワンとした感じでニコニコしてるでしょ? だから代理を頼んだ、とだけ伝えたの。ちょっとでもドキドキして貰おうかと思って」


 その微妙なサプライズ必要? 最近は誘われなくなったけど、以前は日比野君と亜子と三人でパンケーキ食べに行った位に仲が良かった。むしろ、”わー、誰だろう!”って期待してたらどうすんのよ。


 そんな私の気持ちも露知らず、亜子はごめんごめん、と拝む様な仕草でバタバタと走って行った。その亜子と入れ替わる様に、細見で小柄な日比野君が教室からひょこっと顔を出した。亜人種達は体格差が著しいから私服登校が許可されている。日比野君はお洒落さんだから、今日も薄手のジャケットを羽織っていた。


「あ、日比野くーん。実はお昼寝係の代理は私なの。ごめんね? 新鮮さが無くて」

「えぇ!? 寺野さんだったの!?」

「そう。え、何? 嫌?」

「うん」

「えー!?」


 愛くるしい顔してきっぱりはっきり嫌がられ、私は盛大に傷ついた。まさか、日比野君に嫌われていたなんて全然気づかなかった。あれ、だから最近遊びに誘って貰えないの? 何で? 私、何かした?


「ひ、日比野君……! 何で!? 何でそんな事言うの……私の事嫌いになったの!? いつ!? いつから!?」


 私の胸の中に、言葉にならない気持ちが膨れ上がり気づくと大声で詰め寄っていた。


「ちょ、ちょっとぉ! 止めてよそんな言い方! 僕が誤解されるじゃん!」

「誤解って何よ! ねぇお願いだから教えて! 何で私じゃ駄目なの!?」

「やーめーてー!」


 私は日比野君の胸倉を掴み、ガクガクと揺さぶった。悲しくて悲しくて、この気持ちをどうすれば良いのか分からない。友達だって、思ってたのに……!


「ひどいよ日比野君!」


「うるせぇ!」


 ガンッ! という鈍い音と共に、怒鳴り声が響いた。私は驚き日比野君を見た。日比野君は口元に手を置き、あわあわとしている。という事は、今の怒鳴り声は日比野君ではない。


「え、何?」


 私達の争いを遠巻きに見ていた生徒達が、何かに気づいたかのように端に避けて道を開けて行く。その間からゆらりと現れたのは、いつものダブダブしたトレーナーに黒いパンツのアリアガ君だった。


「……痴話げんかなら他所でやれよ」

「違う違う違う! もう全然違う! お願い信じてアリアガ君!」


 日比野君は、何故か泣きそうになりながらアリアガ君に取り縋った。長身のアルパカ獣人に半泣きで追い縋る細くて小柄な山猫獣人。絵面的には大変美味しい。廊下を歩いていた女子の何人かは、二人に向けてスマホを構えていた。そこで私はハタと気づいた。


「ご、ごめん二人共。私、全然気づかなくて」


 きっと二人は付き合ってるんだ。だから浮気を疑われたくなくて日比野君は焦り、浮気を疑ったからアリアガ君は怒ったんだ。 


「あの、邪魔するつもりはないの。ただ、亜子に頼まれたから。ごめんねホント。じゃあ私は教室でご飯食べるから、日比野君はアリアガ君に膝枕して貰って」

「何でそうなるの!?」


 悲鳴の様な声をあげる日比野君。アリアガ君は珍しく呆然とした顔で固まっている。


 そこで私は自分の失言に気づいた。そうか、お付き合いは内緒だったんだ。ごめん、私ったら他人の分際で”匂わせ”行為をしてしまった。


「何度もごめんだけどごめん。……えっと、私はどうすれば良いのかな」

「アリアガ君と一緒に行って! 僕は一人で大丈夫だから!」

「でも、日比野君一人で寝られないでしょ? あ、じゃあ三人で食べよう? その後で膝枕してあげるから」

「だからいいって!」


 日比野君は、珍しく頭部の毛を逆立てていた。あれ、これって本気で怒ってる時のヤツだ。前に一回だけ見たなぁ、確かあの時は亜子がナンパされてたんだっけ?


「……ティラノ」

「あ、はい」


 一瞬存在を忘れていたアリアガ君が、不機嫌そうな低い声を出しながら私の頭をガシリと鷲掴みにした。

 まるで何とかキャッチャーで掴まれたぬいぐるみの様な扱い。


「……行くぞ」

「はぁ」


 私は日比野君の方を見た。彼は犬系獣人・サルキー種の女子生徒とそのお世話係の男子生徒によしよし、と慰められていた。良かった。あの様子なら多分、どっちかが膝枕をしてくれる筈だ。


「……何見てんだよ」

「日比野君だよ……って痛い痛い!」


 頭部を掴む手にギリ、と力を籠められ、私は思わず悲鳴をあげた。


 ◇


「いただきまーす……」


 いつもの場所に、いつもの定位置。アリアガ君は、今日は自分でパンを持って来ていた。そう言えば彼のお昼ご飯はいつも、自分が買って来たパンか私がパシって買って来たパンばかり。


「アリアガ君、パン好きなの?」

「嫌い」


 え? 好きじゃない物を毎日食べてるの!? 

 ……そのあまりに闇の深い発言に、私は即座にスルースキルを発動した。


「そうなんだ。いつもパンだからお弁当の方を嫌いなんだと思ってた」


 アリアガ君ちのお母さんは入学式の時に見た。とっても綺麗で優しそうな人。お父さんはアリアガ君よりも背の高い、とっても格好良いアルパカ獣人。幾ら無神経な私でも『お母さん、お弁当作ってくれないの?』とは聞きにくい。だから適当な返事を返しておいた。


「……別に弁当が嫌いな訳じゃない」

「そ、そう」


 あ、まだ続くんだ、この話。


「因みに、母親が作ってくれない訳でもない。親父は毎日弁当持って行ってるし」

「じゃあ何で持って来ないの?」


 アリアガ君の行動が謎過ぎて耐えられなくなり、思わず聞いてしまった。アリアガ君がお弁当持って来てくれれば、私パシらされなくて済むのに。まぁ、そう頻繁じゃないから別に良いけど。


「……自分が弁当持ってるのに一緒に食べてる相手が買って来たものばっか食べてたら気にならねぇ?」

「え?」


 いや、いきなり何の話?


「だ、だって好き嫌いもあるし、その、ご家庭の事情とかもあるし……」

「気になるのか、ならねぇのかって聞いてんの」

「それはまぁ、なりますけど……」


 だろ? とアリアガ君は何故か得意そうに笑った。


「そういう時、どうにかしてあげたいな、とか思うだろ普通」


 ……普通は思わないんじゃないかなぁ。繰り返しになるけど、色々事情があるかもしれないんだから。

 けど、この流れでは恐らくそんな答えは求められていない。


「あー、うん。そう、だね」

「だろ?」

「うん」


 私は一ミリもそう思っていない事がバレない様に、大きく頷いてみせた。


「で、お前はいつも何で俺の膝の間に座ってんの?」

「え!?」


 すごい。話が飛躍し過ぎてびっくりする。って言うか怖い。


「だ、だって! 最初、私が横に座ろうと思ったらアリアガ君がここに座れって……!」

「うん。でも俺、無理強いはしてないぜ? 嫌ならそう言えって言っただろ? それでも座ったのは、お前の意思だよな?」

「いや、うん……まぁそうだけど」


 自分が断れない雰囲気出したクセに。って言うか、さっきから一体何?

 困惑する私を余所に、アリアガ君は何が楽しいのかクスクスと笑っている。その笑い声に合わせるかの様に、ピアスだらけの尖った耳がピコピコと揺れ動いていた。


「俺、パン嫌いなんだよ」


 ──うん。それはさっき聞いた。


「で、弁当は好きなんだよ」


 ──それも聞いた。


「気になるんだよな? 毎日毎日、手作り弁当を持って来ずにパンばっか食ってる俺の事が」


 ──それも聞い、ん……?


「こうやって接近して、膝の間に座れるくらいに俺に気を許してる。じゃあもうアレだよな。俺、明日からパン食わなくても良いんだよな」

「ちょ、どういう……?」


 ──アリアガ君は毎日パンを食べている。けれど本当はパンが嫌い。私は彼が嫌いなパンを毎日食べてる事を気にしないと行けなくて、どうにかしてあげたいと思わなくてはいけない。何故ならば、膝の間に座れるくらい仲良しだから。仲良し……。


「あ! アリアガ君、もしかしてお弁当作って来て欲しいの!?」

「作って来て欲しいなんて一言も言ってねぇよ」

「え、じゃあいらない? 明日、アリアガ君の分も作って来ようかと思ったのに」

「いらないとは言ってねぇ」


 アリアガ君は、不貞腐れた顔で横を向いている。何だ、何かと思ったらそんな事だったんだ。


「だったらもっと早く言ってくれれば良かったのに」

「……言わなくても気付けよ。鈍いんだよティラノ」

「寺野だって。じゃあ明日、作って来るね? 嫌いな物無い?」

「無い」


 顔が純白の毛並みで覆われてるから、アリアガ君の顔色は良く分からない。けど、目尻の紅色がちょっと濃くなったように見えるから、多分喜んでくれてると思う。


「フフ、アリアガ君は結構遠慮するタイプだったんだね。意外」


 ウチは共働きだから料理は結構出来る方だけど、アリアガ君はどんなおかずを入れたら喜んでくれるだろう。男の子だからやっぱりお肉メイン?


「……俺はアルパカだってのに、何の為に猫被ってたと思ってんだよ。ったく手間かけさせやがって」

「ん? 何か言った?」

「何でもねー」


 明日。どんなお弁当作って来ようかな。栄養バランスを考えて、色取りもキレイにしなくちゃ。デザートに果物も入れちゃおうかな。


「私、頑張るね!」

「え? あ、うん」



 お友達にお弁当作ってあげるのなんて初めて。私はその生まれて初めての経験が、すっかり楽しみになっていた。



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― 新着の感想 ―
[一言] お友達にお弁当作ってあげるのなんて初めて。 こんだけ手間かけて全く伝わってねーー!!
[一言] ここにもいた!付き合っていないシリーズですね! 真っ白な毛並みに相応しく、心も真っ白と思ったという所を読んで、昔職場にいた人を思い出しました。 見るからに、意地悪バーサンのような人でしたが…
[一言] この題名、何だろう?って思いましたが、最後まで読んでやっと判りました。 アルパカ君は格好付けたい人だったのですね。 最初の一か月にしっかりと猫を被っていたのにも笑えました。 優しそうなお母さ…
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