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続・生徒会室に呼ばれました

衝撃の副題から立ち直ろうとするが、なんか軽く頭痛がする。

この人たちは何を言っているのかしら、と思って改めて三人を見回す。


いや、三人の雰囲気がおかしい。あ、これは私をからかっている。

恐らく発案者は兄だ。今回のお叱りに当たり、最後に雰囲気を和らげるためにしたのだろう。

全く、変な気を回さないでほしいもの。……それこそが正に私の兄でもあるのだけど。


なんとなく理解する。すると兄がからかいの雰囲気をやめる。


「ま、言うほど深刻な話ではない。単に暗殺者がいる、と言う噂が流行っただけだ」


兄がそう切り出すと、経緯を話し始める。


「大体一週間くらい前か。急にこの学園内に暗殺者が忍び込んだ。

 誰か、貴族を殺そうとしているという噂が流れだしてな。

 それに対し、不安感を持った貴族も出始めたのだ」


そう言って、兄は肩を竦める。話を継いだのは王子の方だ。


「実際には、優秀な魔術師の多くが教師をやっているこの学園だ。

 暗殺者の一人や二人いても何もできはしないさ。

 そこは安心できる点だが、不安になった生徒が不登校になりでもしたら学業に支障がでる」


「だから生徒会としてはその不安を早めに取り除きたいの」


王子に続いたアリアの言葉に、私としてもようやく納得の頷きを返す。

本当はいない暗殺者。そんな噂に対して怯えるような状況をなくさないといけないか。


そして今までそんな噂に気がつかなかったことに自分でも驚く。

相当周りが見えなくなっていた、ということに改めて気付く。

多少は眠れるようになったのけど、本調子とは中々言えないようだ。


そんな思いを心の奥に隠し、まずは噂について気になる点を聞く。


「あくまで噂ってことですわよね。実際に怪我人が出たとかは?」

「三日前に怪我人が出てはいるが、自分で転んでその地面がたまたま槍のような突起になっていたそうだ。

 傍目からには誰かに刺されたように見えたが、実際は違った。ということが分かっている」

「ただそれを見た人は暗殺者に襲われたように見えた、と」

「それで後は噂が独り歩き。貴族でも信じる人が現れちゃったの」


……話としては出来すぎな気はしている。

根拠のない噂が急速に広まったこと、絶妙なタイミングでの怪我。

誰かが作為的にやらないと、こういうことは起こらない。

そう、私がアリアに対して行ったように。


目的を知る必要がある、か。

頭の中にいくつかの仮定を重ね、とりあえずの行動を提案する。


「そうね、なら生徒会が動いていることを見せるのはどうかしら」

「動くのを見せる?」

「学園内を生徒会で見回りや聞き込みをする。その姿を生徒達に見えるように行う。

 それを1週間続けてみて、何もなければ暗殺者なんていなかった。ただの噂に過ぎないって宣言する」

「……生徒会メンバーは立場的に暗殺者に狙われる可能性はある。

 学園内では個人で護衛を付けるのは禁止されている以上、

 無防備でいても襲われなければ暗殺者などいない、と言えるわけか」


王子は、そう言ってあえて自分を指で示す。

暗殺者に狙われやすい立場ナンバーワンは間違いなくセレスト王子だった。

それが無防備に動いて何もなければ、問題ないとしても良いという論理。


「ただの暴論だけどね。不安感を除去するだけならそれで十分でしょう」

「……でも王子様に実際危険が迫ったら。それだと王子様を危険にさらすことになりそうで」


アリアが若干の不安を示す。それに対し私は笑い飛ばすように言う。


「あら? アリアは噂を信じているの?」

「いえ、そうじゃないですが……」


言葉を濁すアリアに「心配症ね」と、言いながら言葉を続ける。


「よほどのことがなければ、セレスト様は自力でどうにでも出来ますわ。

 セレスト様の実力は誰もが知っていますわよ」

「妹よ、それは婚約者の自慢か」

「どう取って貰っても構いませんわよ」


茶化す兄をあしらいつつ、王子へと視線をむけなおす。

結局、このお話は王子が動かなければ意味がない。


そして王子も微笑んで私の視線を受け止める。


「そんなことで噂を打ち消せるならやってみてもいいだろうな」

「それでは決まりですわね。……では私はそろそろ失礼いたしますわ」


ここまで言い終えると私は、部屋から出ようとする。

それを兄は止めるように声を掛ける。


「おい。なぜそこまで言って帰ろうとする」

「私、生徒会メンバーではありませんもの」


私としては、これ以上みんなと仲良くしない方がよいと思っていた。

既に決意がぐらぐらと揺れている状態なのに、

これ以上仲良くなったら追放計画を投げ出しそうだった。


そして、今回の事を利用して裏で動くための準備を始めようとも思っていた。

だからこそ、これ以上いないように迅速に離れようとしたのだが


「クレア。今回の案はクレアの案だ。できれば協力願いたい。頼めるだろうか?」


王子がまっすぐこちらを見た。


これが、数々の貴族の御嬢様を落とした王子の本気ね……

うん、これは大抵の人が断れない。

そんな超絶美形な人がまっすぐ見つめて真摯に頼んできたらまず断れない。


でも、今回は残念ながら私なのだった。

私は断りの言葉を言おうと口を開き掛け、しかし右手をがしっと握られる。


不意を突かれ、視線を移すとそこには右手をしっかり握ったアリアがいた。


「バーゼス様、一緒にやりましょう。お願いします!」

「え、えっと……」

「バーゼス様……ダメですか?」

「……ええ、わかったわ」


アリアの雰囲気を押されつい答えてしまう。

その言葉にアリアは華が咲いたような笑顔になる。


「良かった! ありがとうございます!」


そして、結局私はこの生徒会メンバーと一緒にこの噂へ首を突っ込むことになるのだった。


「おい、お前アリアに負けてるぞ……」

「それを言うな。やはりもう少し積極的にならないと駄目か……」


小声で話す、兄と王子の会話は聞かなかったことにする。

これ早い所、嫌われないとまずいことになるかも。

つい居心地のいい場所に居続けていたくなってしまう、自分の心の弱さが嫌になる。


「ま、とりあえず行動は明日からにしましょうか」


その言葉で、今回の会議は解散になる。


まずは、軽く噂の確認。これについては確かに貴族達の間を中心にしてかなり広がっていた。

そこまで確認し、今日は私は自分の部屋に戻った。


思うことは今回の噂の件。なぜ、そんな噂が起きたのか、いや起こしたのか。

それもわざわざ”私がしたことと同じことをした”のはなぜなのか、ということ。


ただの勘違いかもしれないし、そもそも噂を流した人間自体いないかもしれない。

ただひとつ、可能性を思い浮かべる。


この噂の別の意図に気付く人間。

つまり”アリアを虐める噂を流した誰かを探している”可能性。


それがどの立場の人間かによって、私は行動を変えなければならない。

さて、私はどう行動したらいいのかしらね。


眠るまで、自分の行動パターンを整理することに費やし、

そしてすぐに悪夢に起こされることになるのだが、それはいつものことでもあった。


今後も基本2日に1回更新予定です。ただ申し訳ありませんが忙しい場合は遅れるかもしれません。

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