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魔法学園に入学しました

「御嬢様……クレア御嬢様」

「ええ、もう起きていますわ」


侍女の声に答え、寝室から置きだす。

鏡の前に座り、自分の顔を念のため確認。


悪夢のお陰が若干青白く見える。

これは、また侍女に心配を掛けそうだ。

ため息を再び吐き、侍女を呼ぶ。


すぐに身支度が始まり、私はぼんやりと考える。

滅びの予言まで後1年。それまでに私が追放されないと、この国は滅びる。

どういう状況でそうなるかはわからない。ただ、あの老婆が予言したことを頭の中で思い浮かべる。

それは鮮明に思い出せた。あの老婆が魔法を使い、忘れなくさせたのだろう。


曰く、私が16の誕生日にこの国が滅びる

曰く、私がそれまでにこの国を追放されることのみ、滅びが回避される。

曰く、私が追放前に死んだ場合でも即時国が滅びる

曰く、この予言は他人に話すことができない



緑を基調としたローブに身を包み、私は家を出た。


今日から、学園での生活が始まる。


レア・アールシー魔法学園


それが、この学園の名前。

国中から、15才になった優秀な魔術師の卵が集められる場所。

魔法を使うことができる。もしくはその才能があると認められた者が入ることができる場所。


「……ま、それは建前で、実際は魔力を持った貴族が箔を付けるための場所なのだけどね」


そう一人ごちながら、でも、と思い直す。別にそれが間違いというわけでもない。


今年は、市井から稀有な才能を持つ魔術師の卵が二人も入るというのだ。


情報は何より大事である。

16歳の誕生日迄に追放されないといけない私は、

追放計画を考えるためにも情報収集が必須となっていた。

当然、これから目立つであろう人物の情報は調査済みだ。

また、入学式の時にもさりげなく本人たちを確認した。


一人目の名前はダレウス・エンテ。赤髪を短めに切りそろえているが、

市井の者とは思えない端正な顔立ちと、溌剌とした態度は

貴族の少女たちをして初日から噂にあげている。

赤を基調としたローブと合わさり強い存在感が、彼の実力を表しているようだ。


二人目の名前はアリア・ハスター。肩まで伸びたウェーブ掛ったブロンドの髪をブローチで止めている。

若干学園に入るのに気が引けているのか、今はおどおどとした態度をしているらしい。

私が調べたところ、誰にでも優しく、学力、魔力ともにトップクラス。

今でも貴族の男性の気を引くほどの美貌を持っているが、

化粧っけもないし、あまり自分の容姿については気にしてないのかもしれない。

今から磨いたらはたしてどのレベルになってしまうのか。少なくとも私よりは上になるはず。

羽織っている純白のローブによくフィットしていて、少しすれば男の方から寄ってくるだろう。



着ているローブの色は自分が得意とする魔術の属性を表している。

私が来ている緑は風属性

ダレウスが来ている赤は炎

青が氷で茶が土、白が光で黒が闇の属性を表す。


まあ、私の得意属性は闇なのだけど、兄の得意属性が風なので、私も風ということにしている。

属性には血統の影響が強いため、兄弟姉妹で別属性だと余計な噂が立ちやすい。


と、そこまで考えていた所で一人の男性が目に入った。

青を基調としたスーツの男性もこちらに気づいたらしく視線を向ける。


美しいブロンドの髪を揺らしながら歩く姿は堂々として、

しかし、雰囲気はいつも柔らかい。中性的な顔立ちをした美形ではあるが、

その立ち振る舞いは隙を見せない。

今年学園に入る令嬢たちの憧れの的になっている。


彼の名はセレスト・レストア 

ここレストア王国の第4王子にして、一応、私の婚約者となってはいる。

私の父親がこの国の宰相の地位にいるため、親同士で勝手に決めたらしい。


ま、私は王子にあまり会ったことはない。名目上の関係というだけ。

王子も私に興味がないだろうし、私もこれから追放されなければならない以上

気にしても仕方がない。

それでも、見かけたからには挨拶はしないと問題だろう。


私はセレストに近づき、声を掛ける。


「おはようございます。セレスト様」

「ああ、おはようクレア」

「今日からは同じ生徒として、よろしくお願いしますわ」

「はっはっは。微妙に他人行儀だね。婚約者様」

「ふふ……今まで滅多に会わなかったのに、他人行儀にならないほうが問題ですわ」

「ふむ、それもそうだな。だが今後は同じ生徒だ。毎日でも一緒にいれるぞ」


……彼は普段こんな砕けた言葉使いをしていただろうか?

若干の疑問符が心の中に浮かぶ。それを言葉に出す前に気付いたのか彼は言葉をつなげた。


「この学園にいるのは貴族だけではないからな。あえて言葉づかいは変えているよ。

今は国の方針として、王族と国民との距離を近くするようだからな。

民と距離が近くなるこの学園で、距離を取られるようにはしたくない」

「考えがあってのことなのですね。それならば理解できますわ」


この国は、ここ百年戦争もなく安定している。

今王族として求められているのは強大な力ではなく調和。

王族がただ搾取するだけ存在と国民に認識されれば、思わぬ不和を招きかねず

ある程度の人気は維持しなければならない。


王子がこの学園に入学することになったのも、

国民に開かれた王族という新しい形を定着させるためだった。


そして、その政策は私の追放計画にとっても重要なことでもある。



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