私の所為で国が滅ぶと予言されました
ごとごとと車輪がきしむような音がなる。
時折馬の荒い息が聞こえ、御者がなだめるように操っている。
貴族のお茶会が終わり、帰途の馬車の中
私は、そんな色々な音を楽しみながらでちょこんと座っていた。
お茶会もそこそこ楽しくはあるけど、気疲れしてしまう。
だから、私はこの一人の空間が好きだった。
その馬車が不意に止まる。
まだ、お家に到着するまでには距離がある。
「なんだろう?」
不思議に思った私は窓のカーテンを開け外を覗いた。
目を向けると、そこには灰色のローブを着た老婆が立っていた。
腰の曲がった、無数に皺が刻まれた顔を私に向ける。
途端、私の体を動かなくなった。
怖くなった私は頭は逃げなきゃいけないと思っているのに、体は指一本動かない。
必死に動こうとする私に老婆は近づき、金色の縦に引き伸ばされた瞳を細く歪ませ凝視する。
声が聞こえた。
「おやまぁ。これはこれは」
しわがれた低い声。その声を聞いて私はさらに動けなくなる。
「面白い運命を持っているわい」
運命? 何のこと?
意味のわからないことを言う老婆に疑問が湧く。そして
「運命とはどういう意味でしょうか?」
その言葉が自然と出た。
さっきまで動かなかった体が力を取り戻し、老婆の方に向き直る。
その言葉が、老婆の表情を歪ませた。
「ほう! ! この術を破るとは面白い!」
どういうことかわからないが驚いているらしい。
目の前の老婆はさらに言葉を続ける。
「ふむ、ふむ。これなら面白いことになりそうじゃ。
見せてやろう。御嬢ちゃんの運命を」
瞬間、目の前が赤く染まった。
何が起きたか分からず周りを見回す。
少し視点が高くなった気がして不思議な感じがした。
しかし、すぐにそんなことは意識の外に追いやられた。
それどころではない光景が広がっていた。
周りには、父が、母が、兄が、友人が倒れていた。
表情は見えない。肌の色などわからない。ただ赤色がそこにあった。
むせるような気持ち悪いにおいに、私は立っていられなくなる。
膝が崩れ落ちるように地面に着くとべシャリと、音が鳴った。
視線が下へと向いた。
そう、すべて赤い水で覆われていた。
青いドレスはすぐに赤く染まっていく。
それが、父や、母や、友人や、すべての人の血であることを認識し、
「 」
声にならない叫びをあげ、私の意識が消えていく――
「……あ」
瞼を開くとそこには見慣れた天井があった。
寝間着は汗でじっとりと湿っていた。
「また、あの時の夢……」
私は浅く息を吐くと、早鐘のように鳴る心臓を落ち着かせる。
今もはっきり覚えている。
いえ、あの老婆が決して忘れさせることのできないようにした。
私の運命を思い浮かべる。
――私がこの国から追放されない限り、16の誕生日にこの国が滅びることを。