プロローグ
皆さまはじめまして。jimakitaと申します。
生まれて初めて地の文入りの小説を書きました。拙いものかもしれませんが、精一杯書きますので、終話までお付き合い賜りたく、どうぞよろしくお願いいたします。
(2019/6/27 改稿)
「秀斗、お昼にしようよ。僕は弁当だよ」
「俺も弁当。食堂? 屋上?」
「天気いいから屋上でー」
「おう」
俺は一ノ瀬秀斗、高校二年の男子生徒だ。背は高めで筋肉もそこそこあるが部活は特にやっていない。成績は平均程度。容姿はあまり言いたくはないのだが、かなりキツい目をしていると思う。そのせいで要らぬ誤解を招いたり、そこからまあ、拳の挨拶に発展してしまったりと、中学の時はいろいろとやらかしてしまっていた。俺は別に争いが好きなわけではなく、どちらかと言えば超平和主義者である。なので、そういった面倒なこととおさらばするため、今は前髪を鼻の頭くらいまで伸ばして目を隠している。野暮ったいのは重々承知しているが、つまらない面倒事に巻き込まれるよりは断然こっちの方がいい。
そして俺に声を掛けてきた奴は、高校に入学してから出来た友人の加藤淳也。背は低めで体つきは華奢、中性的で整った容姿をしており、たぶん女装したら普通に女子にしか見えないだろう。俺と同じく部活はやっていない。成績はそこそこ良いようだ。
こいつとは一年生の時に同じクラスになり、あることが切っ掛けで友達付き合いが始まり、今は親友同士と言ってもいい関係だ。二年生の今も同じクラスとなって、大抵いつもつるんでいる。
昼休みはいつも一緒に食べることにしている。今日は快晴と言ってもいい天気だ。雨が降らない限り、大抵は屋上で食べているので、二人して階段を上って来た。うちの学校の規則は割とゆるいので、屋上に出ることは特に禁止されていない。俺達の他にも何人か先客がいたので適当に離れて座り込む。
「よっしゃ、食うぞー。いただきます」
「いただきます。秀斗、卵焼きトレードプリーズ」
「うーん、そうだな。たこさんウィンナーギブミー」
「オッケー、トレード成立」
お互いに弁当の時はおかずを交換して味を論評しあっている。俺も淳也も弁当を手作りしている料理男子なのだ。知り合って話をしているうちに料理の話題となり、これが切っ掛けで友達になったのだ。
二人が料理男子であることを特段周りに吹聴することはしない。男子が弁当を手作りしていることを知られたら往々にして揶揄いの対象にされることを、経験上二人ともよく知っているからだ。高校生にもなればそんなことで揶揄われることも少なくなるのかもしれないが、多少トラウマになっているのもあって言わないようにしている。
「淳也、今日のたこさんは結構スパイシーだな」
「ちょっと強めに胡椒振ったんだ。あとはいつも通りだよ? 秀斗の卵焼きは今日は甘いバージョンだね」
「おう、甘い版もしょっぱい版もどっちも上手く作れるようになりたいからな。そもそもどっちのバージョンも好きで甲乙付け難いんだよ」
この味付けじゃないと嫌だってのは自分の世界を狭める気がするので、よほどのことが無い限りいろんな味付けにトライしているのだ。
例えばラーメンなんかも醤油、味噌、塩、豚骨、なんでも偏りなく食べる。太麺、細麺、平麺、縮れ麺、どれも好きだ。
「秀斗は変わってるよね。普通はどっちかに偏るんだけどね」
「俺はいろんな味を愛する男だ」
「ただの雑食?」
「失礼な奴め。食の博愛主義者と呼びたまえ」
「へえ、博愛主義者ねぇ。友達少ないのに?」
「淳也さん? その言葉はお互いが傷付くんじゃないのかな?」
「もう刺さってる。言った瞬間にそれがブーメランだって気付いたよ」
「迂闊だったな」
「うん。……この話、やめよう?」
正直なところ、俺は淳也以外には気軽に話しのできる友達なんかいない。だからと言って、クラスメイトと普通に会話できないわけじゃないから学校生活に支障をきたすことなどはない。それは淳也も同様で、まあ、言ってしまえば俺たちは選択的な二人ぼっちである。断っておくが二人は至ってノーマルでBL的な展開はこれまでもこれからも一切断じて無い。
「話は変わるんだけど。秀斗さ、調理実習って来週だったよね」
調理実習。確か女子3人と男子3人で組んで班になって共同で料理をするというものだ。料理男子としては興味深い授業ではあるが、あまり料理ができることは知られたくないので少々憂鬱でもある。
「あー、もう来週かー。男女混合の班組みになるんだよな。男子はまあ俺と淳也が組めればいいけどさ、女子ってのがなあ」
「うん。別に誰と一緒になってもいいんだけど、やっぱり上手な子達がいいよね」
「そうなんだよなー。正直なところ、俺達やっぱりそれなりに評価は欲しいじゃん? でも女子より上手いのがバレると、女子の面子を潰すことになってその後の学校生活が闇に包まれそうで怖いんだよね」
「ひっそりと生きたいよね」
「おう。まあ、いい評価とひっそりとを天秤に掛けりゃあひっそりの方が大事だから、最悪は一切手を出さないことでお茶を濁そう」
「そうだね」
二人ぼっちであるが特に不自由だとは思っていない。淳也がいるから友人がゼロってわけでもないので寂しいこともない。逆によく知らない人と惰性で付き合うようなことは出来ない質なので、今の状況が乱されることなく静かに過ごしたいだけだ。
「ま、班決めは当日だし、なるようになるだろ。弁当も食ったし、教室戻るか」
「ごちそうさま。そうだね。あ、秀斗さ、明日はチキンライス比べしない?」
「お、いいね。白飯の代わりにチキンライスか。やろうぜ」
「グリーンピースが好きなんだよね」
「あーわかるわかる」
そんな他愛のない話をしながら教室に向かう俺達であったが、この時は調理実習が俺と淳也の運命を大きく変えることになるとは知る由もなかった。
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