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大歓声

  比較的静かな立ち上がり。

 しかし、ヴァイが静かな時、それは何かを

 狙っているときだ。

 

 キムラ塾大将のタナカが右組手、ニコロ塾の

 ヴァイ・フォウは左組手だ。170センチ

 弱のヴァイに対し、180センチを超える

 タナカは、ヴァイの左奥襟を掴みに行く。

 

 喧嘩四つの場合、相手が大きければ通常は

 襟を掴んで相手の脇下を突っ張っていく。

 距離を取って技を防ぐのだ。しかし、

 ヴァイは、左手で相手の右袖口を絞り、

 それを下へ落とす。

 

 タナカはそれを嫌がり、袖を切って離れ、

 再びヴァイの左奥襟を狙って釣り手を確保

 しようとする。

 

 妥協しないヴァイ、タナカの右手を再び

 捕まえ、袖を絞って下へ落とす、が、

 その間に、タナカがヴァイの右手袖口を

 掴んだ。

 

 引手を確保して、タナカが有利な組手と

 なる。あとは釣り手を掴むだけ。強引に

 腕を持ち上げて襟を掴みに行く。

 

 ヴァイは抵抗するが、力敵わず奥襟が

 掴まれそうになったその瞬間、ヴァイの

 体が回転し、同時に捕まれていた右袖口

 を上から掴みなおす。

 

 左の袖釣り込み腰でタナカの巨体が浮く、

 そして回転して落ちる、

 

「技あり!」

 

 惜しい、もう少しで一本の技だ。歓声が

 あがる。

 

 タナカはすぐうつ伏せで守りに入り、ヴァイ

 の寝技を警戒する。そして待てがかかり、

 立ちあがる二人。

 

 技ありを取られて少し焦り気味のタナカ。

 まだ時間がある、と声を掛けるキムラ塾陣営。

 

 今度は襟を取り、喧嘩四つの体勢を作る

 ヴァイ。引手の取り合いになるが、その間も

 押し込んでいく。一瞬引手を掴んだヴァイ、

 すぐ押して大内刈りに入る。

 

 腰で受け止めるタナカ、タナカの釣り手を

 下から跳ね上げて、引手を持ったまま左へ

 回り込み、体をずらせてタナカの右足を

 跳ね上げる。

 

 重い相手に対して正面からではなく、ずら

 して入る左内股だ。タナカが肩口から畳に

 落ちる。そこに体を被せるヴァイ。

 

「有効!」

 

 立て続けに重量級相手にポイントを重ねる

 ヴァイ。このタナカ、ここまでの戦いは、

 組んで、大技を掛けて一本勝ちを続けてきた。

 ここにきてまさかの苦戦だ。

 

 しかし、ニコロ塾はヴァイが一本勝ちしな

 ければ、内容で負けてしまう。

 

 キムラ塾からは、しっかり組んでいけ、今の

 はまぐれまぐれ、と声が飛ぶ。

 

 顧問のマサコ・キムラに声を掛けられて、

 リチャード・キムラが立ち上がり、アップを

 始める。

 

  再び組み合う二人、襟を掴んで突っ張りな

 がら前に出るヴァイ。しかし、引手を取る

 のを警戒する。襟だけから、足払いや

 大内刈りを掛けるが、タナカは揺るがない。

 

 ヴァイのさきほどの左内股を警戒して、

 タナカも簡単には引手を取りにいけない。が、

 ヴァイは少し疲れたのか、技数が減る。

 

 下から突っ張っていた釣り手を、上から持ち

 かえるヴァイ。突っ張りが無くなり、前へ

 出るタナカ。しかし、引手は妥協しない

 ヴァイ。

 

 隙を見つけて、引手を持たずに右の大内刈り

 を放つタナカ。ヴァイが、引っかかった足を

 外しつつ、体を回転させる。

 

 タナカの前に出る力がそのまま回転する力に

 変わる。右の一本背負いで、タナカの体が

 完全にヴァイの腰に乗っていた。

 

「とぅーりゃ!」

 

 の声と同時にニコロ陣営が「よいしょー!」

 と合わせる。

 

 一瞬の間を置いて、「一本!」

 

 の声で、第一試合場は、まるで決勝戦のよう

 な大歓声に包まれていた。

 

 

  ニコロ塾長が、大会の係員に、代表戦の

 選手を告げる。アナも調子が良かったが、

 ここはやはりヴァイだ。

 

 ニコロ塾が先鋒戦と大将戦で一本勝ち、

 キムラ塾が次鋒と副将戦で一本勝ち、内容で

 完全に並んだので、双方のチームの代表で

 決着を決めるルールだ。

 

 キムラ塾側は、リチャード・キムラだ。

 審判3名が並び、入場を促す。礼をして開始

 線の前に一歩進む二人。

 

「はじめ!」

 

 代表戦が始まった。開始から両チームの選手

 達が必死に声をかける。

 

 キムラは右組み、ヴァイは左組み、釣り手の

 取り合いから始まる。

 

 釣り手だけの強引な内股を二度ほど見せる

 キムラ。その後引手争いがまた始まるが、

 スッと両襟を掴むキムラ、右内股のフェイン

 トから、外掛け気味に右足を掛けて、

 

 押し込んでいく、不意を突かれ、バランスを

 取りつつも無理と判断して体を返すヴァイ。

 

「有効!」

 

 副審の一人が打ち消すが、もう一人は有効を

 示し、キムラのポイントとなる。

 

 そこからすぐに寝技に移るキムラ、うつ伏せ

 で守るヴァイ。しかし、キムラの縦三角は、

 やばい。オンドレイはよくこんなものを耐え

 ていたな。

 

 早く待てがかかれと祈るヴァイ、必死に脇を

 こじ開けられないように守る。

 

 かろうじて待てがかかる。しかし、寝技を

 恐がっていては何もできない。

 

 再開から、不十分な組手でも技を放つヴァイ、

 右一本背負い、左袖釣り込み腰、右肩車、

 左小内刈り、右抱き込み小内、

 

 次々と技を掛け、潰されて、寝技を耐える。

 

 キムラは試合運びもうまく、攻められている

 時でも、指導が来そうなタイミングで

 技を返してくる。

 

  寝技もまじえて試合時間が3分を過ぎる。

 ヴァイの攻撃の手が緩んだ時、キムラが動き

 出す。襟を取った右大内刈りから、体を

 逆に回して右釣り手のまま左払い腰だ。

 

 咄嗟に反応するヴァイだが、

 

「技あり!」

 

 しかし、さっきオンドレイの試合を見て

 いなかったら、確実に一本を取られていた。

 冷や汗を感じながら寝技を耐えるヴァイ。

 

 待てがかかり、はじめの声で再び攻め続ける

 ヴァイ。

 

「あと半分!」

 

 時間が残り30秒を切る。

 

 キムラも必死だ。巨体から、低い一本背負い

 なども繰り出してくる。巻き込まれないよう

 に必死に耐えるヴァイ。

 

 残り20秒だ。突然右組手に変えるヴァイ。

 相四つで組み合う。懐深く技を警戒する

 キムラ。若干腰が引き気味なのを見て、

 ヴァイの釣り手がスルスルと首奥へ移動する。

 

 瞬間、ヴァイの体がキムラの真下へ、

 引手方向に体を少し捻って、足裏を相手の

 足の付け根あたりそっとに添える。

 

 右の巴投げだ。キムラの体が一瞬宙に浮き、

 足を送ってなんとか耐えようとする。

 

「たぁりゃー!」

 

 全身を声にして技を放つヴァイ。体を

 捻るキムラ。皆が審判に注目する。

 

「技あり!」

 

 副審の一人が一本を宣言するが、もう一人が

 技ありを宣言し、それが確定する。会場は

 歓声と怒号が飛び交う。

 

 すかさずキムラの首を狙うヴァイ。立て立て

 と叫ぶニコロ塾長。

 

 しかし、

 無残にもブザー音が試合終了を告げる。

 

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