窮鼠
スパイの二人を含め、ラストボスの
部屋にいた者全てが、寝返りに合意した。
トップ12旅団の代表者が集まる。
ラストボスグループのまとめは、ジネブラ
・マキンだった。彼女は、以前の上司、
ダフネ・ウッテンに、階層ボスが突破
されたことを報告していない。
今なら首都宮殿側にほとんど戦力を割いて
おり、ダフネ・ウッテンは最低限の護衛しか
持っていないはずだ。
「反発展主義に何の恨みもないが、ここは
教皇に協力して、状況をいったん納め
ようじゃないか」
オリガ・ダンのひとことで、方向が決まった。
ただし、とオリガは釘を刺す。教皇が勝利
すると、この惑星の状況が一変するかも
しれない、と。
代表者達だけの意見だが、状況が変わろうが
変わるまいが、それは覚悟のうえだという。
このレベルまで来ている冒険者たちは、
少々状況が変わっても、生計は立てていける。
「護衛の戦力について知っているものは?」
はい、とジネブラが答える。
「二体のアンドロイド、二足型のラクシャサ、
そして、ホバー型のマウス」
ある程度、予想はしていたが、一番まずい
アンドロイド2種の名前が出た。エンジニア
達が呼ばれ、攻略可能性について検討が
始まる。
この迷宮と首都宮殿および王城遺跡間の
距離は、約10キロ。反発展主義の最後の砦、
ダフネ・ウッテンが潜む場所は、ここから
約3キロの位置。
首都宮殿の教皇軍との戦闘が行われているの
が、そのダフネが潜んでいる位置と首都宮殿
と繋ぐ通路のどこか。
いくつかの案が出た。まず、教皇軍が優勢に
なるまで待つ。ダフネ側は補給も受けられ
ない状況だ。有力な案のひとつ。
もう一つは、ダフネを無視し、教皇軍と
戦っている戦力を挟み撃ちで叩く。
ダフネの護衛がどう動くかが気になるが、
これも有力。
三つ目が、そのままダフネに挑む案だ。
二体のアンドロイドは、なるべくやり過ごし、
本人だけを狙う。大勢は、これに倒れ
そうだ。いかにも冒険者的な選択だ。
ただし、その場合は詳細な戦力調査を
やりながら戦う必要がある、とオリガが
念を押す。詳細な調査をやれば、相手にも
気づかれる。
戦闘開始後にも探査ドローンのシキガミを
使って戦力を探り、隠し戦力があれば
すぐ撤退するという手筈にした。
上階にいる3機の多脚型アンドロイド、
スタグも呼び寄せられた。スタグ3機で、
ホバー型アンドロイド、マウス1機とほぼ
同じ戦力だが、護衛のマウスは特別仕様
の可能性が高い。
マウスが特別仕様であること前提で、突入
の構成が決まる。敵マウスには、スタグ3機
と、纏魔、陰陽、甲殻、白狐、麒麟、鳳凰、
神亀、臥龍、神姫、の9旅団。
9旅団は、3旅団づつに分け、マウスと
対峙する3旅団、交替要員の3旅団、後方を
守る3旅団としてローテーションする。
ラクシャサとダフネ本人に当たるのは、狂獣、
百足、玄想、の3旅団となった。ポイントは、
ダフネ本人を確保し、かつ二体のアンド
ロイドを緊急停止させられるかどうかだ。
緊急停止が出来なかった場合、犠牲者が出る。
すでに夕刻となっていた。決行は翌日に
延ばす手もあったが、拙速を選ぶ。一行は、
迷宮の20ブロック四方の外へ向かう。
地下9階から階段を降りてきた位置から
比較的近い場所にその通路の入り口が
あった。
そこを、まず3キロほど進む。そして、隠し
扉をエンジニアのサポートを受けたジネブラ
に開けてもらう。
これも、事前の連絡が無ければ通常は開か
ない。つまり、通常でない開け方をする。
そして、それはそこに潜む者との開戦の
合図だ。
扉の向こうは、まず広い空間が広がって
いた。3ブロック四方、つまり、300
メートル四方はありそうだ。
そして、すでにそいつの姿が見えている。
底辺は平らで上部は丸い姿、高さ15
メートル、幅20メートル、長さ30
メートル、ずんぐりした、マウスだ。
中央付近で浮遊するマウス。侵入者を
見つけ、接近してくる。トップ12旅団側
は、纏魔旅団、陰陽旅団、甲殻旅団から
スタートする。
スタグ3機と3つの冒険者グループが
現れ、そのマウスと呼ばれる兵器は多少
動揺しただろうか。接近速度を落とす。
こちらの3機と3旅団は三方に展開する。
それがいかにも静かに進行したため、この
ままこの戦いは、特に撃ちあうこともなく
進むかに思われたが、その直後、一発の
閃光とともに静寂が打ち破られる。
ハリネズミのごとく砲火を発するマウス。
スタグも負けじと砲撃を返していく。
纏魔、陰陽、甲殻の3旅団が最初に出て
いるのは、あまりまともに戦う気がない
のと、敵ホバー型マウスの情報をとる
ためだ。
煙幕による熱探知阻害や視界阻害が行われる。
戦闘中に解析デバイスがフル稼働する。
既得の仕様情報と比較されながらその強さ
が把握されていく。
双方のアンドロイド、そして人間たちは、
常にシールドを展開している。人間たちは
ずっと回避行動を行っている。立ち止まる
と、対アンドロイド砲に捕まる。
それは、シールドがあればそれ自体で致命傷
になることはないが、吹き飛ばされて、その
あとの落ちどころで致命傷となる可能性
がある。
人が装備するシールドは、出しっ放しで
約3分。アンドロイドのものは約10分。
3旅団のメンバーは、時に多脚型スタグの裏
に回りこみ、その間シールドを切って防御
継続時間を稼ぐ。
その間、狂獣、百足、玄想の3旅団と
ジネブラが、奥側へ回り込む。マウスは、
ダフネのいる場所へ進む隠し扉の位置を
知ったものが敵にいる、ということを想定
できていない。
慌ててそちらに進む動きを見せるが、
多脚型スタグ一台に阻まれる。シールドを
展開しながら至近距離で撃ちあう。
また煙幕が追加され、大量のシキガミが舞う。
開始2分以内に、建物内へ侵入完了。




